第10話 学園入学

文字数 1,974文字

 魔法学園と騎士学園。

 どっちがいいか。

 ナインテール先生に相談したら、僕の行きたい方が正解だって言われた。

 魔法学園と騎士学園。

 どっちがいいか。

 ビクターに相談したら、僕が決めた方が正しい選択だって言われた。

 魔法学園と騎士学園。

 どっちがいいか。

 シスに相談したら、『どっちも駄目よ』って断言された。

 え。本気? シス?

『良い? 私の知識量はビズより半端ないの(プレイヤー数千万人分の経験)よ。ビズの目標は解ってる。なら後はやるだけよ?』

 ナインテール先生に覚悟を聞かれた、あの日。

 そう僕は、

覚悟を決めたんだ。

 そして、シスと目標()達成の計画を立てた。

 結論。僕は家出します。

 書き置きも完璧。

 脱出経路の道順と手順は、ナインテール先生が以前教えてくれたしね。

 明日決行。

 早く寝よう。

 お休み。シス。

『お休み。ビズ』

 どうして。

 僕は、ビクターに捕まった? 

 あ。書き置き。

 しまった。

 書き置きを出したまま寝てしまった......。

「殿下。ご説明下さい」

 ああ。ビクターの機嫌が悪い。

 どうしよう。助けて。シス。

『.........』

 ああ。シスの機嫌も悪い。

 最悪(ピンチ)だ。

「ビクター、僕。強くなると決めたんだ。みのがしてください」

 僕は熱く語る。

 ビクターの目を見つめる。

 シスと話し合って確信したんだ。

 僕には、時間がないって!

『若い時流さなかった汗は、年を取ってから涙として流れるんだから、若い時頑張らないと』

 うん。

 僕、頑張るよ。

 年を取ってから泣きたくないよ。

 え。

 ビクターが泣いてる? 嘘、ビクター......

 若い時、汗流さなかったの? 

 やっぱり。

 若い時、頑張らないと。

 僕には、時間がないんだ!

 ビクターは目頭を押さえながら涙声で、

ですね? 

なんですね?」

 

ってなんだろ?シス、僕解らないよ。

『流石、執事長ね。ビズの

を知ってるのよ。でも立場上

って言ってるのよ。

わね』

 うんうんと。

 姿が見えないシスが頷く。

 本当? シス。

 僕、違う気がするよ? 

 深いって何が? 

 シス、僕。解らないよ。

『何故解らないの? うううん。何故解ろうとしないの?』

 え。僕が悪いの? う~ん。う~ん。

 ビクターは僕の夢を知っている。

 夢の為には学園に通ってる暇はない。

 夢の為には必要なスキルと経験値を獲得して、スキルレベルと個体レベルを上げないといけない。

 は。

 ビクターは、僕の夢を後押ししてくれてる。

 でも立場上それはできない。

 だから、僕の夢を

って言ったのか。

 深い。

 確かに深いよ。シス。

 でもなんだろ。

 なにか大きな間違いをしてるような。

 凄く不安なんだ。シス。

『ビズ! 私はあなた(プレイヤー)相棒(システムメッセージ)なの! もし、あなた(プレイヤー)の選択が間違っていても相棒(システムメッセージ)の私は何があってもあなた(プレイヤー)と一緒よ! それが相棒(システムメッセージ)なのよ!』

 ど~ん。

 姿が見えないシスが両手の拳を握り締めて、得意(ドヤ)顔で僕に告げる。

 でも。

 それって、間違ってる可能性もあるって。

 認めてるよね? シス? 

 すすすすっと。

 姿が見えないシスが、視線を逸らす。

『決めるのは(システムメッセージ)じゃない、ビズ(プレイヤー)なのよ?』

 うん。

 そうだね。

 決めるのは、僕だ。

 ごめんよ、シス。

 でも、何故小声なの?

「ビクター......。ビクターの言う通り。

だよ。ごめん」

 僕は。

 僕の夢を後押ししてくれるビクターに背を向けて、夢に向かって走り出した。















 どうして。

 どうして僕はビクターに捕まった? 

 訳が解らないよ? ビクターがなにかぶつぶつ言いながら、僕の部屋を出ていった。

 ビクター、縄を(ほど)いてよ。

 縄でぐるぐる巻きにされた僕。

 .........トイレ。

 僕、トイレに行きたいよ。

 声を揚げる僕。

 誰も来ない。

 大声を揚げる僕。

 誰も来ない。

 うわああああああああ。















 あ。漏らした。

 ......グスっ。グスっ。

 この日、僕の尊厳は......崩壊した。
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