第78話 殿下の帰還

文字数 1,323文字

 私は、ビクター・シュトロゲン。

 エルブリタニア帝国第3皇子、ビクトリアス・エルブリタニア殿下の執事です。

 殿下が家出をされてから数ヶ月が経ちました。

 私は諜謀機関『隠者の手』の臨時統括者として、殿下の追跡調査及び帝国に徒なす者達の排除など精力的に動いていました。

 な、クロース公爵領内のダマスクローズ近辺で第1皇女ローゼティアス様が襲撃されただと!?

 隠者の手には全くそのような情報は入っていなかった。

 これは再度、諜報網の見直しが必要ですね。

 そして、この情報を送ってきたのが諜報員『オピニオン(知恵の使者)』だった。

 その内容に依ると襲撃者はギエロア大王国の暗部機関『猿』であり、その手先となった暗殺機関『闇の牙』共々、上位者を捕縛しているとあった。

 そして、殿下の今回の目的が第1皇女の救援だったとある。

 なんと、そうだったのか! 妹君を助ける為に家出をされたのか!

 しかし、どうやって妹君の危機を事前に知ることが出来たのか?

 え、エリクサーで襲撃で亡くなった騎士とメイドを生き返らせた?

 エリクサーとは古の秘薬。

 それ1つで小国が買えると言われるほどのものを、従者達の蘇生使うとは...。

 え、十の災厄(アンタッチャブル)と共に離宮に戻ってくる?

 ま、マジか!

 それは、こうしてはおられません。


「弟子1号! 統括者の職責をお前に戻そう! 後は頼んだぞ!」

「え、師匠! 待って下さい! ギエロア大王国の策謀を陛下にお伝えして対策を練らねばなりません!」

 私を引き留めようとする弟子1号を振り切り、私は離宮に戻って来ました。

 メアリーが退職したので、

を教育中なのです。

 報告では、ダマスクローズで第1皇女と過ごされた後にお戻りになるとのことでした。

 ああ、殿下。

 さぞや、大きく成長されていることでしょう。

 また、十の災厄(アンタッチャブル)達と一緒に戻って来ると報告にありましたが、まあなんとかなるでしょう。


 十の災厄(アンタッチャブル)

 決して触れてはいけない存在。

 《黒獣》エクリプス、《氷狼》エンプレス、《麒麟》パラグラム、《海竜》リヴァイアサン、《千手蜘蛛》アンチノミー、《不死鳥》ラフレシア、《超獣》アプリオリ。

 十の災厄(アンタッチャブル)、10体のうち7体が、帝国に集結する。

 それに加え、フューダー大王国の元とは言え大将軍レイ・ホウセン。

 そして、古の錬金術師、アルグリア九賢者の1人であるレジッド・カバデルア。

 さ、流石です! 殿下! 殿下のご威光に皆、平伏したのでしょう! 臣は感動の余り頭が禿げそうです!


「ビクター様、あの大丈夫ですか? 失礼します、(ズラ)()れています」

 メアリーの代わりの新しいメイドが、淡々と私の(ズラ)を直しています。


 ああ、殿下がお帰りになる。

 ...我が最愛の君。

 私は、ビクター・シュトロゲン。

 ビクトリアス・エルブリタニア殿下の執事であり、守役であり、自称

です。
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