第57話 不死鳥

文字数 1,424文字

 我輩は鳥である。

 古の盟約の獣の1柱、《不死鳥》ラフレシア。

 ここは、アゾット炎獄。

 燃え盛る炎に包まれし、我輩の縄張りの地である。

 我輩が、この地に降り立ち、守護すること千数百年。

 誰も訪れない、いや訪れることが出来ない火の世界。

 我輩の使命は、“この地の炎を絶やさぬ事”である。

『なんだと! この地に来客(浸入者)だと!』

 我輩の僕であるポチ(ケロベロス)が言うには、この地に浸入者が現れたとのことである。

『ふふふ、では手筈通りに歓迎してやろう! サラ(レッドドラゴン)達を向かわせろ!』

 我輩は、初めての来客に心踊っていた。

『な、なんだと! サラ(レッドドラゴン)達が全滅だと?』

 ほほう、我輩の僕を屠るとは。

 善きかな、善きかな。

 為らば、こそだ。

 やっと言えるぞ、千数百年間暖めた言葉(セリフ)を!

 我輩が、相手をする資格ありである。

『我輩は、古の盟約の獣の1柱、不死鳥(フシチョウ)ラフレシアである。汝らに問う。汝らの求めるものは何であるか?』

 くー、やっと言えたぞ! 感無量である!

「こんにちは、初めまして、僕ビクトリアスと言います。今日は突然お邪魔して、ごめんなさい。どうしても欲しい物があって来ました」

 小さき者が、ペコリと頭を下げる。

 う~ん、何か想像していた相手と状況が、かなり違う。

 このアゾット炎獄を平気で、我輩の元まで辿り着いた者達が、この小さき者が率いる集団。

 え、何か懐かしい雰囲気を持つ者達がいるのである!

『久しぶりだな、ラフ!』

「久しぶりです、ラフ」

「おいら、びっくりしたぞ。ラフ、こんな所に住んでるのか?」

「久しぶり~! 元気~! ラフちゃん」

「久しぶりじゃあ、ラフよ!」

 え、えええええ~! 何故、お主達がここにいるのであるか~?

 我輩と同じく、古の盟約の獣達が5柱もいる!

 闇の獣、《黒獣》エクリプス。

 氷の獣、《氷狼》エンプレス。

 雷の獣、《麒麟》パラグラム。

 水の獣、《海竜》リヴァイアサン。

 風の獣、《千手蜘蛛》アンチノミー。

『お主達、どうやって縄張りを離れて、ここまで来れたのであるか? 盟約は? 使命は? どうしたのであるか?』

 我輩は、食い気味に古の盟約の獣達に問い掛けたのである。

 え、裏技があるのであるか? ドキン。

 ほう、そこの小さき者がであるか? ドキン、ドキン。

 我輩の縄張りは、アゾット炎獄である。

 そして、我輩はアゾット炎獄の外へは出れないのである。

 見えない透明の檻に入れられている、まあ鳥籠である。

 我輩も、古の盟約の獣達と同じように、この鳥籠(アゾット炎獄)から出れるのであるか? 

 え、大丈夫だって? マジであるか!? ドキン、ドキン、ドキン。

 そんな事が出来る、その小さき者とは一体何者であるか? 我輩は問うたのである。

 すると、その小さき者は、何故か恥ずかしそうにビシッとポーズを決めてこう言ったのである。

『僕が“何者”だって? 僕はラフレシア! お前の願いを叶える者だ!』

 そうして、我輩は、エルフの少年に不死火花を山程渡し、仲間となったのである。


 我輩の願いは、大空を自由に飛び回る事である。

 何故なら、『我輩は鳥である』からである。

 

 
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