第74話 ごめんなさい

文字数 1,466文字

 私はサラ・ガトー。

 暗殺組織『闇の牙』の下部組織、闇の瞳の

諜報員です。

 私は現在ベニアス王国の王都ヘテナで、小さい食堂を旦那と切り盛りしています。

 食堂は旦那の料理の腕と私の真贋の眼、そして

諜報員の能力で大繁盛しています。

 旦那は料理を作る天才でした。

 私は真贋の眼を使いお客様の情報を入手し、それを記憶し活用します。

 そのお客様が何を求めているのか、私には解るのです。

 
 そして、ある日『闇の牙』の手の者が現れましたが、旦那はその申し出を一蹴しました。

「俺達に構うな。もし構うなら俺がお前達をこの世から消してやる」

 私の旦那は、料理人(マギュレプステ)と呼ばれる超一流の

暗殺者(ヒットマン)です。

「サラ、俺と結婚してくれ。俺がお前を守る」

 『闇の牙』の手の者を追い返した時に旦那から求婚されました。

 私は嬉しかった。

 そして、私と旦那は本当の夫婦になりました。


 その一週間後に私は『闇の牙』に捕まりました...。

 何故、旦那が私に求婚したのか?

 何故、私は『闇の牙』に簡単に捕まったのか?

 それは、私が子供を身に宿していたからでした。

 旦那は必ず私を助けに来るでしょう...。

 ごめんなさい...あなた。


「サラ、俺と結婚してくれ。俺がお前を守る」

 その言葉を胸に私は旦那を待ちます。


 私はクローズ公爵領ダマスクローズの街の一画に拘束されています。

 『闇の牙』は私の身を押さえていれば、旦那が言うことを聞くと思っています。

 旦那は料理人(マギュレプステ)です。

 それも創作料理の天才なのです。

 旦那は思いもしない手段で私を助けようとするでしょう。

 身重の私には、旦那の無事を祈り待つことしか出来ません。

 ああ、創造神カリダト様。

 どうか、どうか、あの人をお守り下さい!


「ふっひひひひ! 良い女じゃないか。それに今回の仕事が終われば料理人(マギュレプステ)と共に死ぬ女だ」

 下卑た笑い声が部屋に響きました。

 くっ、こんな馬鹿が看守とは『闇の牙』の凋落も著しいですね。

 私に傷を付けると言うことの意味を理解していない。

 ああ、あなた。

 私も

諜報員です。

 男女の営みなど仕事の1つと割り切っています。

 でも、私はあなたの妻です。

 私のお腹には、あなたの子がいるのです。

「おい! 静かに言うことを聞け!」

 抵抗する私の頬を叩きながら、その看守の男は激高します。

 い、嫌! あなた助けて!

 私は心の中で旦那に助けを求めました!

 ドッゴーン! バキッ! ブチャ...。

 凄い轟音と共に壁が壊され、看守の男は壁と共にお亡くなりになっていました。


「こんにちは、初めまして僕ビクトリアスと言います。遅くなってごめんなさい。あなたを助けに来ました」

 そこには化け物と私が呼んだエルフの少年がペコリと頭を下げた後、申し訳なさそうに立っていました。

「あ、あなたは一体何者なのですか?」

 何故ここにいるのか? 何故私を助けるのか? 一体貴方の正体とは何なのか?

 私は彼、エルブリタニア帝国第3皇子ビクトリアス・エルブリタニア殿下の正体を問いました。

 すると殿下は何故か恥ずかしそうにビシッとポーズを決めて、こう言いました。


「僕が“何者”だって? 僕はサラ・ガトー、お前の願いを叶える者だ!」
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