第122話 陰謀

文字数 1,199文字

 我はシル・ミケラン。

 シルフィの演劇の役者だ。

 自由を愛するシルフィが国に縛られるなど、以ての外だ!

 王とてシルフィである、父親を責務の呪縛から解き放て!

 と、二言三言囁いたのは我だ。

 まさか本当に反乱を起こすとは、...如何(どう)しよう。

 何故か、我は稀代の軍師のような扱いを受けている。

 正直、素面では遣ってられない。

 我は酔えば酔うほど、策が湧き出る酔いどれ軍師を演じていた。

 
 イルガリア王国に始まり、ノリス王国、タックロ王国、グトネス公国、ダブリン王国、ゲオア伯国、ピクル王国と次々に反乱が起こる計画になっている。

 我は演劇の役者だ。

 只、演劇の練習で“革命家”を演じただけだ。

 そして、練習相手が偶々、北西諸国の第1王子達の集団だった。

 同じシルフィ族故に、意気投合して、我は酔った勢いで次回の“革命家”の役を試してみた。

 すると、練習相手の貴族の若者達もノリノリで、“シルフィ族の自由統一共和国”計画が進んでいった。

 そう、進んで行ってしまった。

 我は酔っていたが、記憶はある。

 我は貴族の若者達が、王子役を演じてくれていると勘違いしていた。

 そして、本物だと気付いた時には遅かった。

 だが、あんな行き当たりばったりな計画など、誰が

で実行すると思う?

 ()してや、練習相手が本物の北西諸国の王子達とは思いもしない。

 ああ、困った。

 非常に困った状況に、我はいる。


「ミケラン殿、現在計画は第四段階に移行しております。流石はミケラン殿ですな。その知謀と軍略には脱帽します。我らでは考えつかない策でした!」

 そりゃそうだ、我は軍事など全く知らない素人だ。

 この計画の成功は、只のマグレだ。

 必ず何処かで(つまづ)くだろう。

 何せ、我が酔っ払った時に、適当に思った計画なんだ。

 上手く行く訳がない。

 そう、...上手く、...行かないで欲しい。


「申し上げます! グトネス公国、ダブリン王国、ゲオア伯国、ピクル王国でも作戦が発動しました!」

 げっ、...マジか。

 うっううううう、如何(どう)しよう?

 まあ、アルガママヲ、アルガママニウケイレヨウ...。

 我は酔いどれの軍師を演じよう。

 どうせ、何処かでボロが出る。

 その時は、その時だ。

 
 我はシル・ミケラン。

 演劇の役者。

 現在の演目は、“シルフィは自由を勝ち取る”だ。

 果たして、カーテンコールまで我の命があるかな、ふっははははは!


「ミケラン殿、...凄い。酔えば酔うほど冴え渡る知謀、...これほどの方が何故、無名の役者などしていたのか? 能ある鷹は爪を隠す、我らシルフィの自由の蜂起を成す為に、神が使わしたお方なのかも知れない!」
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