第1話「あの日の鬼女」
文字数 1,966文字
―PM5時55分―
《鬼塚屋敷―厨房》
そう、あれは突然の命令だった――――――
鬼の世にて、いつものように拐かした人間を喰らっていた時、普段我らに興味すら持つことも無い鬼族の長、「カルラ様」が話しかけてきたのである
····その内容はこうだ―――――
《鬼の世―春の闇》
····同族にすら興味を持たないカルラが何故食事中の鬼女に突然仕事の依頼などして来たのか―――――?
聞いても答えてなど貰えはしないが、気になって仕方がなかった
コレまでに一度もカルラから声を掛けてもらえた事など無かったのだから尚更である
―2020年7月18日―
《都内―経田区並川-海岸》
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あれから、ありとあらゆる手段を駆使し、「人魚」についての情報を手に入れた―――――
「人魚」は遥か昔に絶滅しており、奇跡でも起きない限りは手に入れるのは不可能とされているようだ
人魚が絶滅した理由―――――
それは、人間が人魚の肉を喰うと「不老不死」になる可能性があるとされており、人間の手によって人魚狩りが行われた歴史があったのだと言う――――
···とは言え、何百年と生きている鬼族ですら不老不死の人間に会った事など一度もない····
しかし、「人魚」を見つけた時点でカルラは既に奇跡を1つ起こしたと言う事になる
そこはサスガは鬼族の長だ
····人魚は海流の激しい海底の洞窟に身を潜めており、もし存在していたとしてもそれは既にミイラと化しているモノでしかないらしい····
そうして、鬼女はこのあと来る「いろは」に人魚の肉を差し出し、計画は成功したが、たまたま通りかかった「鬼狩りの鬼」の餌食となる事をまだ知る由もない···
そして、カルラは都合の良い様に解釈した鬼女と、櫻井家の人間を喰らった事で喧嘩を売ってしまった鬼族の一部の尻拭いのために翻弄させられ、「いろはと夜叉丸」の出会いを阻止する事が出来なかったのは言うまでも無い――――
全ては後の祭りであった――――――
―END―