第1話「あの日の鬼女」

文字数 1,966文字







             ―PM5時55分―


        《鬼塚屋敷―厨房》

こ、これが――――――
人魚·····?
····人魚なぞ初めてお目に掛かる故、なんだかキナ臭い姿じゃのぅ〜
···········

折角捌いた事じゃし、ちと味見をば―――――

········いや、捌く場所を間違えたかのう?腹を捌いても内蔵しか出てこんな
一体ドコを喰えば不老不死になんぞなるのか?



そう、あれは突然の命令だった――――――


鬼の世にて、いつものように拐かした人間を喰らっていた時、普段我らに興味すら持つことも無い鬼族の長、「カルラ様」が話しかけてきたのである




····その内容はこうだ―――――






       《鬼の世―春の闇》

鬼女、貴様には重要な仕事を任せたい
·······へ?
わ、私で御座いますか?!
(何故?!)
············
そう、貴様だ
····なぜ、私なのかお聞きしても宜しいでしょうか?
············
·····そんなモノ

貴様が知る必要のない事だ

↑春の闇を通りかかった時に、たまたま目に入っただけ
ヒッ
貴様は言われたことだけを実行すればよい
は、はい·····っ



····同族にすら興味を持たないカルラが何故食事中の鬼女に突然仕事の依頼などして来たのか―――――?

聞いても答えてなど貰えはしないが、気になって仕方がなかった


コレまでに一度もカルラから声を掛けてもらえた事など無かったのだから尚更である



貴様がすべき事はただ1つだ

――――タマネギ、説明してやれ

はい――――――
·······オロオロ
なに、内容など極々簡単なモノだぞ









            ―2020年7月18日―


        《都内―経田区並川-海岸》

·····と、言うことで

この人魚を、とある人間の女性に喰わせるだけでいい

に、人魚?!これが人魚だと仰るのですか廃炉様?!
まぁ、確かに人魚など超絶レアすぎてワタシも拝見した事が無い故な、カルラ様のお言葉を信じるしかないのだが――――――
しかし、これは大切な任務なのだぞ鬼女よ
は、はい―――――

しかし、こんなモノを人間の娘に喰わせて一体何をなさるおもりなのか

····カルラ様の―――――

長年の恋煩いを一瞬で治す魔法のお魚さんなのかもしれぬな

·············
·····は?
いっ、いやっっ

何でもなゲフンゲフン

····と、とにかく

頼んだぞ!

····はぁ






そして現在へ戻る↓

·····とは言え、我とて無知のまま命令に従う筈もない―――――フヒヒ



あれから、ありとあらゆる手段を駆使し、「人魚」についての情報を手に入れた―――――

「人魚」は遥か昔に絶滅しており、奇跡でも起きない限りは手に入れるのは不可能とされているようだ


人魚が絶滅した理由―――――

それは、人間が人魚の肉を喰うと「不老不死」になる可能性があるとされており、人間の手によって人魚狩りが行われた歴史があったのだと言う――――


···とは言え、何百年と生きている鬼族ですら不老不死の人間に会った事など一度もない····


しかし、「人魚」を見つけた時点でカルラは既に奇跡を1つ起こしたと言う事になる

そこはサスガは鬼族の長だ


····人魚は海流の激しい海底の洞窟に身を潜めており、もし存在していたとしてもそれは既にミイラと化しているモノでしかないらしい····



····カルラ様はどうやって、このようなプリプリで活きの良い人魚を見つけて来られたのか―――――
謎は深まるばかりだが、1つ確実な事があるぞ――――――
これで、我がその娘に人魚の肉を喰わせ、計画が成されたのならば、その娘は永遠に我れらの食糧とする事が出来る!!
グフゥヒヒヒヒ
····カルラ様とて、我らがそれを渇望している事をご存知なはずだ!!
そうだ、そうとしか考えられない!!カルラ様は我々の為に不老不死を造ろうとしているのだ!!
ならば、「不老不死」が完成された暁には、この任務を成功させた我が先に御馳走に預かっても良いと言う事であろう!
ぁあ····、あの時たまたま春の闇で食事をしていて良かった···!我の喰いっぷりがカルラ様のお心をグッと掴んだのだろうな!



そうして、鬼女はこのあと来る「いろは」に人魚の肉を差し出し、計画は成功したが、たまたま通りかかった「鬼狩りの鬼」の餌食となる事をまだ知る由もない···


そして、カルラは都合の良い様に解釈した鬼女と、櫻井家の人間を喰らった事で喧嘩を売ってしまった鬼族の一部の尻拭いのために翻弄させられ、「いろはと夜叉丸」の出会いを阻止する事が出来なかったのは言うまでも無い――――



····やはり重要任務に、其の辺の鬼女を任命した事が間違いだったッス!!
カルラ様の自業自得でもあるッスね!もう少し同胞に興味を持ってもらいたいッス!


全ては後の祭りであった――――――







―END―

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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