第158話「玄宥の心 廃炉知らず」
文字数 2,752文字
《春の闇》
カルラの激しい攻撃を辛うじて受け止めた夜叉丸だったが、体勢を崩したが故にその勢いを抑えきれず、地面に叩き付けられていた―――――
と、その時だった――――――
ホシ猫の聴覚にかすかに聞こえた音···
それは聞き覚えのある音だった
その時、ホシ猫の耳に聴こえて来たモノ―――――
それは急速に範囲を拡大し始め、春の闇を覆い尽くしてしまうのではないかと思うくらいに巨大且つ最大の円陣···
まさにレイが放った真言結界だった
事の重大さに気付いたオーマは左腕にヒヅキを、右腕に夜叉丸を抱きかかえてレイの結界から抜けるために走り出した
《春の闇》
―廃炉VS玄宥―
現在、玄宥は廃炉の「眼帝降(メテオ)」から身を守るため、呼び出した十二天将「騰蛇(トウダ)」の蜷局(トグロ)の中に身を隠していた―――――
ほんの一瞬、廃炉が玄宥から意識を反らしたその時、玄宥は呼び出していた十二天将の「騰蛇(トウダ)」を解除し、廃炉の目の前から姿を消していた――――
玄宥のその声は、廃炉の頭上から聞こえていた
玄宥は廃炉の上空で体を旋回させ、勢いを付けたまま頭上から激しい蹴りを食らわせようとしていた―――
玄宥の激しい蹴りは、廃炉の首元(うなじ)に入ったかのように思えた
だが、身体能力の高い鬼である廃炉はギリギリで反応し、玄宥の蹴りを両腕で防御したのだった
そう叫んだ廃炉は、距離を取っていた玄宥に向かって片手を伸ばすと、何かを握り潰すように手を握り、そのまま地面に叩き付けるような素振りをした―――――――その瞬間だった―――
玄宥の体は廃炉の動きに合わせるかの様に急激に下へ引っ張られたのである
それはまさに地面に叩き付けられる程の強い力だった
さすがの玄宥も、これには地面に両腕と両膝をつく形となる
マナの言う六合(リクゴウ)とは――――
陰陽師に仕える十二天将の内の一であり、平和と調和を司る象徴である
マナは以前にオーマが六合を呼出しているのを目撃していた事があるのだ
廃炉が言いかけた時―――――
それは唐突に起きた
何故か後頭部に激しい衝撃と激痛が廃炉を襲ったのである
ドサ――――ッ