第197話「スパダリ」
文字数 3,167文字
―AM6時10分―
《桐生家》
···とは言え
やっぱりカイトは私が起きるよりも早く起きているようで、寝顔を見ようと思ってもそれは叶わない···
寝る時もそう―――――
カイトは必ず私が寝てから寝るものだから、その美しい寝顔と言う名の御尊顔を拝むことが出来ないのである
そんなカイトの性格は、夜叉丸とは打って変わってかなり慎重で計算高い···
私の不老不死にしてもそうだが、長い時間をかけて試行錯誤した後に万全の状態で準備をしてくれていた――――――
その上、術師としての能力も高く、自他ともに認めざるを得ないほどの霊力も持ち合わせているらしい····
(これは玄宥様と慧慈様が話しているのをたまたま聞いてしまった)
鬼化した人の復元後、桐生家が業を取り除き呪いをかける行為····
これは、相手に気付かれる事無く行う必要があるようだ――――
本来ならば、業を取り除くにあたって相当な霊力の消費と時間を要するため、相手に声を掛けてから「悪霊が憑いているのでお祓いをさせて欲しい」などと伝えて改めて行うことが可能になるとの事だった―――――
····相手の後方へと周り、肩をポンっと叩くだけだ――――
そして、肩を叩かれた相手がカイトの方へと振り向くと、カイトはニコリと笑って「肩に良くないものが憑いていましたよ」と一言添えて軽く会釈をするだけなのである
····まぁ
そんな完璧男子なカイトだから···昨日の凪さんとの会話には耳を疑ってしまった····
まさかカイトがあんな事を思っていたなんて――――
ち、近いっ!
こんなに近くに居たのに全然気付かなかったわ···!
·····て、言うか
耳元で囁かないで欲しいのだけれど
毎朝一人で起きてますけど?!
ヘッドスパ的なやつかな?
カイトって計算高い割には案外正直に顔に出るのね····
ウン 可愛い
あの夜叉丸が·····
炊事皆無君とルカさんに呼ばれていた夜叉丸が、まさかの家事全般をこなしてしまうなんて本当に驚いた――――
でも···、カイトのお母様は早くに亡くなられているようだから、必要にかられていた事なのだろう···
苦労してきたのは目に見えている
····ただ
瞳が夜叉丸なだけにその面影がありすぎて少しだけ混乱するなぁ
―AM7時30分―
《桐生家―茶の間》