第198話「桐生蒼羽の過去①」

文字数 3,273文字






        ―AM8時10分―


         《桐生家―茶の間》

凪さん――――――

ジッ

は、はいっ

ドキッ

····すみません

大変お待たせ致しました

いっ、いえいえっ!
········

(···カイト様が見つめて話してくるのはきっと無自覚なのでしょうねぇ)

(自らの客人だと言う認識の上なのだろうけれど、それはそれでいろは様も苦労されそうね···)
あ····
····カイト

慧慈様を呼ばなくても良いの?

··············
いや別に必要ないだろう?仕事中だろうしな
そ、そう····かな··
····この話は凪さんが必要としている事で、住職は関係ない
············



そんな言い方しなくても―――――

玄宥様と二人で一緒に真相を探ってくれていたでしょうに··



ッハ
····あ、えっと····

ゴメンいろは···、キツイ言い方をした―――――

····大丈夫

気にしないで

·····いろはを傷付けるつもりは一切ないから
··········
······

(ど、どうしようっ)



凪さんが空気を読んでオロオロしているその時だった―――――



ガラ―――――――
海弦、言い方に気をつけなさい
っ!!!
慧慈様·····っ
大体、いろは様に対して敬語を使わないとはどういうつもりなのだ
······ピクッ
えっ、慧慈さま!!

それは私がカイトにお願いした事なんです!!

だから···

悪いのは私で、カイトのせいではありません

············

···そうですか
··········
····どうでも良い事ですが――――――――
っ!
····どちらにしても私達二人の事には口を出さないで下さい
···········
っ!!!
そうか

分かった―――――

···········
いろは様も凪さんも、どうぞユックリして行って下さいね
はっ、はい!

有難うございます!



そう言うと慧慈様は部屋から出て行ってしまった



····では、桐生蒼羽の話を始めましょうか···凪さん
···お願いします―――――
···········

(私もここに居ていいのかしら···?)

····最初に、何故私が桐生蒼羽の事情を知っているのか、お話させて頂きたいと思います
はい····
私が桐生蒼羽と出会ったのは――――――――
ドキドキ
昨日なんですけどね
················
えぇっ?!
······え?

(昨日?!)

その時、いろはも一緒に居ただろ?
·······え

ま、まさか――――――

いろはが見惚れていた麗しき親子―――――
彼だな
ええっ?!
お、親子·····?
因みに······
彼の腕に抱かれて幸せそうに眠っていた男の子は······
伊吹逢馬(いぶきおうま)の父、伊吹遊馬の生まれ変わりだよ
なっっ、なんですって?!!!
取り敢えず、伊吹家ではないけれど櫻井家の家系図をまた張り出しておく↓
······なんと
まさに運命のイタズラですね···

再びあの二人が親子となるとは私も驚きました

··········

(驚いた素振りなんて一切してなかったじゃない···!)

そして、桐生蒼羽には前世の記憶が伴っており···、伊吹遊馬を抱きながら今世は幸せにしたいと言っていました
······なんてことでしょうか
····まぁ、遊馬さんの遠慮がちで人様に迷惑を掛けないように生きるスタイルは変わってなさそうでしたが···
っ?!

(まだ子供なのに?!)

ですので―――――
····結果から話すと、現在の桐生蒼羽は前世の事をとても後悔しており、前世での桐生蒼羽も同じ様に後悔の中で死に至ったと言うことです
そうですか····
····では、なぜ本来は優しい彼があの様な罪を犯したのか····
これには沢山の運命の歯車が絡んでいますが、一番の問題だったのは彼の性格そのものでしょう
それは···

どう言う意味でしょうか?

当時の桐生蒼羽は桐生家の長男だった事もあり、跡継ぎとしての責任を追わなければなりませんでした
····勿論その素質は十分にあり、霊力も類稀な程に持ち合わせていたのですが―――――
残念なことに、その十分な素質を開花させる事が出来無かったのです
っ!!!!
····彼は一人でずっと悩んでいました
家からの期待の声が大きくなればなる程に焦燥に駆られてしまうのですから
········!
当時、彼はまだ17歳と言う若さで家督の重荷を背負い、悩み続ける日々に苦悩していた――――――
そんなある日の出来事でした
家に帰りたくない彼は、少しだけ遠回りをしてから帰る事にした···
街を一望できる坂の上にある大きな木の麓にたまたま着いた時、衝撃的なモノを目の当たりにしたのです
一切ひと気の無い坂の上···、聞こえてくるのは遠くの空で鳴いているトンビの美しい声だけ····なのに―――
この大きな木の枝は不自然に揺れ続け、初夏の青々とした葉が何故か必要以上に落ちてくるのです
「何なんだろうか···」と思って上を覗いたその瞬間――――――
枝が激しく折れる音と共に、何故か「人」らしきモノが上から降ってきた――――――
えっ!
桐生蒼羽は驚くと共に、降ってきた相手を受け止めるべく構えたが、結果的には己がクッションとなりそのまま気絶する事になりました――――
····まぁ、そうなるわよね
····どのくらいの時間、気を失っていたのか――――、気付いた時には日が落ちそうになっている事に気づき、焦って身を起こした時····




ここから先は再現(仮)VTRで再開します↓



「あっ、急に起き上がってはダメですっ!」



っ!!

ズキッ

だ、大丈夫ですか?
······え?
··········

ごめんなさい···わたしの所為で

·············
······き、君は

誰――――――

···あ、えっと

わ、私は――――――

··········

(カ、カワイイ···、うちの学校ではなさそうだけど···)

木の····上から落ちて···貴方を押し潰した···者、です――――
!!!!!!!!
(お、俺は···こんな華奢な女の子すら受け止め切れなかったって事か··)
·····ック

(情けない·····)

あ、あのっ

えっと·····

····あ、君は大丈夫?

怪我してないかな?

っ!!!!
は、はいっ!

お陰様で私は元気です!

····ホッ
····それで、なんで木の上なんかにいたの?危ないでしょ
···す、すみません

実は···木の上に子猫がいて――――

····?!
ずっと鳴いていたので····

降ろしてあげなきゃって――――

····そうか
君は優しいんだね
····えっ?!
でも今後は登らないようにね。次もまた俺が通り掛かるとも限らないから
····ドキッ

は、はい―――――

···········
····俺の名前は桐生蒼羽(きりゅうあおは)17歳だよ
····君は?
わっ、わわ私はっっ!!
····伊吹···神楽(いぶきかぐら)

です――――

·····神楽···さんか
···········
·····あ、あのさ
·····はい
····もし良かったら、またここで話をさせてくれないかな
っっ?!
····あっ!嫌なら無理しなくても―――――
いっ、嫌じゃないですっ!
っっ!!!!
·····良かった

じゃあ、また来週の今日···この時間に来るから――――

は、はい····
············
·····それじゃあ―――――――
あっ、は、はい···っ

また――――――

行こうか
············
―――――えっ

どっ、どこに?!

もう暗いから····

家まで送るよ

えぇっっ!!!?

キュン






と、まぁ····

こんな感じで二人は出会い、恋に落ちたわけです―――――

キュ―――――――ン!!
な、何と言うアオハルな····!
常日頃から色々なモノに押し潰されそうだった桐生蒼羽の心は、彼女と出会った事で相当救われる事になります
····恋とは無敵なのですね!
(凪さんは恋人いないのかな?)
·····しかし、それは彼の心の奥にある核と呼ばれる部分に触れた事で、相当な執着となる事もまた避けられない運命でした――――
っ!!!!
··········

(そこだけ考えると俺も同じ穴の狢だな···)






続く

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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