第70話「対峙」
文字数 1,113文字
ーPM11時30分ー
《鷺山渓谷麓》
····次はあっちのクズか
タマネギからの連絡はまだか？
強欲な男との金の受渡しは、男の死によって果たされる事は無かった
そもそもカルラに金の受渡しなどと言う思考は端から無い
ナズナを傷付けるモノ、又は傷付けて来たモノたち全てを消滅させると言う1つの思考しかないのだ
ナズナにとって優しいカルラは、それ以外のモノにはやはり無慈悲で残酷な鬼でしかなかった。
と、その時···
····おい、何してんだテメェ
っ！
·········
酷い臭鬼がすると思ったよ
まさかこの場所って『隠形鬼』（おんぎょうき）の隠れ家？
········
···そこに死んだばかりの人間が無惨にも喰い散らかされてんじゃねぇか
カルラは少し驚いた様に口を開いた
···無惨にも、だと？
ｸｸ··、どの口が言っているのだ？夜叉丸
···っ！
···貴様とは初対面だがな
私は貴様のことをよく知っているぞ？
········
今まで貴様が行ってきた事を棚にあげてよく言えたものだ
人間共の方が殺し合いが大好きなのだろう？よくもあんなに殺し合うものだと関心すら覚えるぞ
（それは同感だ）
俺の過去の行為を今更どうこう言った所で変わるもんでもねぇ。今はそんな話をしてんじゃねぇんだよ
·····だったらどうだと言うのだ
鬼が人を喰らうのは、貴様らが家畜を食らうのと何も変わりはしない
それが単純に許される行為なら、俺は今こんな事にはなってねぇだろうが
ふん、貴様など我が身可愛さで神仏共の言いなりに成り下がっているだけだろう
何者よりも下衆で愚劣の極みだ
はっ、何とでも言えよ！
俺が俺の為にしか生きねえのは当然だ！クソ鬼のままで終わってたまるか！
·······人が鬼となったその存在は、そもそも我々とは全く別の個体だ
········
何の力も能力も持たず、すぐさま理性だけが完全に消え失せ、ただ人を喰らうだけの百鬼となる
·········
まぁ、神仏共からすれば全て抹消対象の同じ度合いなクソ鬼なのだろうがな
···その通りだ
結局上の奴らからしたら、お前らも同等なんだよ
···ふん、ならばどうする？
貴様ごときが私とやり合おうというのか？
っ当然だ！！
俺の目的は全ての鬼の殲滅だからな！テメェが何であろうと鬼である以上やり合わない理由がねぇ！！
·········
ふ····っ、身の程知らずとは言ったものだ
あぁっ？
貴様は今まで私が姿を現すまでもなく追い払われていた事にすら、気付いてはおらぬと言うのに
···なんだと？
····我ら鬼族にはそれぞれ特有の能力がある
っ！！
だからとて、鬼を殲滅しようとしている貴様に安々と告げる筈もないがな
ｲｯﾗｧ〜ｯｯ
そりゃまぁそうだろうね
