第80話「開かずの踏切 真相3」
文字数 1,396文字
ホノカがタケルを踏切内へ押し込んだその場面を見ていた人達は、当然ですが皆さん一瞬にして凍りつきました。
勿論、線路上で尻もちをついているタケル自身も驚きと青ざめた表情でホノカを見ていた
そしてその時にはもう既に特急列車はタケルの目の前にいたのです····
その後の事はもう、皆さんお察しが付いていると思いますが····、ちゃんと説明いたします
タケルは微動だにする間もなく、特急列車にいとも簡単に轢き殺された···
その状況は、轢かれたタケル自身よりも周りでそれを見ていた人達のトラウマになる程に壮絶なものだったのである。
言わばタケル本人は即死だった為、幸か不幸か痛みを感じる間もなく亡くなっているが、迫りくる特急列車の恐怖はただならぬものだっただろう。
タケルの体はその衝撃により殆どが潰れてしまい、四肢や胴体は千切れて血飛沫と共に肉片となり飛び散っていた。
首は数メートル先の藪の中から見つかるが、顔面は歪み、見ただけではタケル本人と言うことは全く分からない状態だった。
それを1番近くで見ていたホノカは自身のやってしまった事の重大さをその後に自覚することになります。
飛び散ったタケルの右手首は皮肉にもホノカの元へ飛んで来ました。その右手の薬指には見たこともないリングがはめられていたのです。
その時ホノカは、ハッとして遮断器の向こう側に視線を向けました。
特急列車は踏切からかなり過ぎた辺りで緊急停車していたため遮断器の向こう側で呆然と立ち尽くしているタケルの彼女が見えていました。
言葉にならないような青ざめた表情でホノカを見る彼女の視線にもはや耐えられなくなっていたホノカは···
現代で殺人は犯罪なんだろ?
ホノカが逃げ出した時点で逃亡者じゃねぇのか?
ええ、まさにその通りなのですが···結論から申し上げますとホノカはその後、自ら命を絶つことになります。
逃げ出したホノカの脳裏にあったのは、罪の大きさとタケルの壮絶な死と···そして、タケルの指にはめられていた指輪の存在だった。
ホノカは、走りながらそれらの思いが頭の中を幾度となく巡っていた。
しかしながらホノカはもう既に正常な判断を出来るような状態ではなく、最終的には罪の重さに耐えきれず自害することになる。
だが、そんな中でも最も深く深くこの世に残されたホノカの唯一の想いはタケルへの独占欲と言う名の愛だけだった。
深く強い想いを残したまま亡くなったホノカは、結局成仏することはありませんでした。
あの日を最後に時間は止まったまま、この踏切に囚われてしまい地縛霊となってしまったのですが····
···多分、その日から時間がかなり経ってしまったんだろうな
はい···、ホノカの強く深い想いがタケルをこの踏切から先へ行かせたくないと言う理由で遮断器は上がらないのでしょうが···
···なるほどな、当の本人は時が経ち過ぎて忘れちまってんのかよ
ああ、だが想いだけはそのまま強く残されたままだからな···、遮断器は下がったままだ
霊の思考と想いは、人とは違って別物になります。想いだけが取り残されるなんて事はよくある事です。
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