第32話「哀れな鬼」
文字数 1,508文字
-AM4時15分-
北条さんが完全体の鬼に変わってしまった··
··だとしても彼は俺にとって客であり依頼者なのだ
····そんな約定書なんて
彼が殺人鬼であり、本物の化け物に成り変わってしまったのなら無効だろうと誰もが思うかもしれない··
不思議とそれは
自分の中でもよく分からない感情だった
次の瞬間、北条さんは俺目掛けて凄いスピードで向かってきた
両手に黒く光る長い爪を立て、俺を切り裂く気満々で···っ
俺は即座に印を組んだ
···が、北条さんはもう既に俺の目と鼻の先まで来ている
北条さんの黒く長い爪が俺に容赦なく襲い掛かって来た··!
と、その時·····
今度は赤鬼かよ
今にも切り裂かれそうな俺の目の前に現れた男は、いとも簡単に北条さんの両腕を押さえつけたまま軽い口調で話した···
と、その時―――
見たことの無い女の子が、まるで俺を保護するかのように声をかけてきた
鬼は皆殺しか··、俺は陰陽師だが百鬼全てを消滅させたりはしない
救われない哀れなモノ達だっているからだ
あぁ··、そうか···
···北条さん
俺の目には貴方も哀れに見えて仕方がなかったんだ··
そう言うと北条さんは、一度鬼狩りから距離を取り、再び凄い勢いで襲い掛かって行った
そう言うと北条さんは、そのまま黒い塵となり···雲散霧消してしまった