第182話「謎の修行僧」
文字数 3,369文字
《夜明け通り》
赤鬼の前に立ちはだかった彼は、今まで聞いたこともない呪文?を唱えた――――――その時、私達の周囲からは謎の煙が立ち込めて来たのである
不意に··彼がボソっと呟いた言葉を私は聞き逃さなかった
そして·····
次の瞬間だった
周囲に立ち込めていた煙は、まるで竜巻の如く渦を巻き始めると、全ての煙を巻込みながら一本の渦となり、あっという間に赤鬼を飲み込んでしまった
そして煙の渦は天と繋がり、徐々に細くなりながら雲散したのだった――――
この煙はまるで玄宥様の使う真言のようだと感じた···
真言は結界が現れて聖なる光の様なもので百鬼を消滅させてしまうものだから全く別物のようだけど、見た目的な問題じゃなくて······
効果がって言うか――――
以前にホシ猫さんが言っていた、「真言と陀羅尼は殆ど似たようなモノ」という言葉がストンと落ちたような感覚だった
そうしてあれ程に立ち込めていた煙の一切は跡形もなく消失し、当然の如く赤鬼の姿も何処にも無かったのである
な、何か気不味い····
····消滅―――――
でも、確かに「復元」でも人には戻らなかった···、きっと神にも運命にも見放されてしまったのかもしれない····
そう言うと彼は、深く被っていた網代笠(あじろがさ)を外してこちらを向いた―――――――
私は一瞬、凄くドキッとした···
いや、別にまさかの説教修行僧が超絶イケメンだったからとかでは無くてね···
初対面で名前呼びとか·····
何故か、とても心配そうに私を見つめる彼は――――不意に私の頬に手を添えて、優しい手付きで軽く撫でた····
な、何だろ
すっごい見てくるな····
それにこの人····
めっちゃ距離が近いんだけど!
いやいやいや――――!
ドキッ っじゃないのよ私!!
って言うか、最初の印象と何か全然違くない?!
···落ち着いていてクールなカッコ良さが売りだったのに!←(?!)
こんなにナンパな修行僧がいていいの?!
《Caffe―ゑ來屡》
《夜明け通り》
な、なんでそんなに切なそうな表情を?!
対応に困るんですよ!!
わ、私には····夜叉丸が····
と、思っていたその時だった――――――
ちょ、ちょっと···何だろうコレ
····予想していた再会と全然違うんだけれど――――――
この人が本当に夜叉丸だと言うの?!
でも··、ホシ猫さんが間違えるとは到底思えないわ!
その時――――――
···夜叉丸が居なくなったあの日からずっと堪えていた気持ちがまるで堰を切ったかのように溢れ出てしまい、止めることなどもはや不可能だった···
ご、ごめん···?
今···夜叉丸が言ったの?
昔では考えられないくらいの優しい言葉に、驚きと嬉しさと愛しくて堪らない感情がごっちゃになって更に涙が止まらなくなってしまった····
や、夜叉丸······
いや···海弦さん···?
······何か恥ずかしいっ!!!!