第142話「動揺」

文字数 1,581文字






          《春の闇》

····ところで

この刀に見覚えは無いか?

·····刀だと?



その時、カルラはおもむろに刀を取り出し夜叉丸に見せた―――




まさか忘れた訳ではあるまいな?

貴様が自身の大切な者達を斬り刻んだこの血塗られた刀を――――――

··········

っっっっ!!!!!!!??

··········
?!
っ!!!!!??
···な···何で―――――
何で!!!

ソイツが今此処にあんだよ――――――――!!!!!!!

や、夜叉丸っ

落ち着い―――――

―――そ、その刀は····っ

あの日――――――

そう――――――

その刀は···お前があの日、家族を皆殺しにした後で破壊して捨て去った、父上の名刀「鬼丸」

っっ!!!!!
もう―――、ずっと忘れていたのだろう?夜叉丸····
···ひ、氷月
家族の事も、父上の事も、鬼丸の存在も――――
ふん、証拠隠滅か?

それとも罪の重さに耐えられなかったのか?鬼狩り―――

カルラ――――――!!!!

てめえ···氷月を巻き込みやがったな!!!!

··········っ!
ドクン―――――ッ
···え?

(今のは···何?)

···巻き込む···?

どの口が言っているの夜叉丸··

っっ!!!
全ての元凶はお前だろう··?

私から全てを奪ったお前が·····!

········!!

(ヤバイな···、夜叉丸が動揺している···)

(これは何となくマズイ方向へ向かっている気がする―――――)
(このままではオーマとレイも危ないぞ···!黒鉄に援護させるしか···)
そ、それは····

確かに、全ては俺の弱さが招いた結果だ――――

俺は地獄に墜ちても、氷月···お前だけは必ず人に戻してやる···!お前の業は俺が請け負うから――――――
笑わせないで

誰がお前の言う事などに耳を傾けるものか!解脱など絶無だ!!!

そんな事はねぇ!!!

俺は絶対に諦めな―――――

···もう、黙って

今すぐにでも地獄に送ってやる



そう言うと氷月(ひづき)は、手に持っていた刀を振り上げ、夜叉丸目掛けて振り下ろした――――



っ!!
夜叉丸っ!!!!
唵(オン)!!!!




動揺からか氷月の攻撃を避けられない夜叉丸を援護すべく玄宥は素早く真言を唱え始めた



阿謨伽 尾盧左曩っ!!

(アボキャ ベイロシャノウ)

摩訶母捺囉 麽抳 鉢納麽 !!

(マカボダラ マニ ハンドマ)

入嚩攞 鉢囉韈哆野 吽!

(ジンバラ ハラバリタヤ ウン)

不空羂索毘盧遮那仏大灌頂光真言!!!!



玄宥は素早い詠唱で夜叉丸の周りに結界を創り出し、氷月の攻撃を防ごうとしたその時だった――――――



申し訳ないッスが····、そうはさせないっス



玄宥の邪魔に入ったのは廃炉だった



廃炉―――――っ!!!

さようなら···夜叉丸――――

·······っ!!!!



と、その瞬間だった――――


夜叉丸の足元には完成された真言結界が紅く発光しながら浮き上がり、夜叉丸を守るかのように強烈な光を放ち始めた



ッッックッ!!!!



氷月はその強烈な光に堪らず身を翻す



····こ、これは――――
夜叉丸っ!!!!
オ、オーマか····っ!
っ!!!?
オーマ!!


今ここにオーマが居ると言う事は···もしかして黒鉄が·····っ!
あぁ····、鬼女の相手は黒鉄とレイさんがしてくれている···が、レイさんの様子が少しおかしいんだ···
でも今は夜叉丸を援護しに戻れと黒鉄に言われて、こっちに来て正解だったよ···!
········っ!
····クソッ

俺が足を引っ張ってどうする――――

····夜叉丸、氷月さんは俺が捕獲しよう。恐らく今のままではカルラに隙を突かれてお前は負ける
っ!!!!!
···そんな時間をワタシがあんたらに与えると思ってるッスか?
っ!!
玄宥様···、その役は俺が引き受けます!廃炉の相手なんて玄宥様しか出来ないでしょうから···
!!!
後ろは任せて下さい!
分かった。

頼んだよオーマ!

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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