第119話「戦術」

文字数 1,415文字






         《城下町》

···っあ、あんまりッス···!本当に鬼畜なのはアンタの方だ―――っ
···あぁ?!何言ってんだコラ

テメェら今まで何体の人間を喰ってきたか覚えてんのか?

ふん!人に価値などない!

私はカルラ様の側近故に人など喰わぬが、家畜程度と同じだろう!

そもそもその考え方が神仏共の怒りを買ってんだろうが!いい加減気付けよ!人を喰わずに済むなら喰うな!
···お前ら、目の前に最高級の食材があってそれを我慢できるのか?!
なんて事を言ってんだ廃炉···
現にテメェは我慢できてんじゃねぇか!
私とカルラ様は例外だ!!
まぁ···

気持ちは分からなくもないけども

ホシ猫···っ
世の百鬼なんてそんなものさ
自らの欲に忠実で理性なんて元々持ち合わせてもいないのが普通なんだから
···その通りッス
····ギリッ
だからお前達鬼どもは神からも見放され、殲滅させられる運命を辿るしかないんだ!!
ふん、小僧っ子に何を言われても別に腹も立たないッスね
イラ···ッッ
ヤトにとって唯一の家族だった妹は無惨にも鬼の餌食になっているんだ
廃炉は鬼族故に、遺された人々の気持ちなど考えた事もないだろうがな
そりゃそうッス。私は人ではない、鬼なのだ。人の気持ちなど考える百鬼が何処にいるのか逆に聞きたいくらいだ
···ハァ
埒が明かねぇんだよ!

どちらにしろ俺は鬼の全てを駆逐しなきゃならねえからな

ぶった斬る以外の選択肢はねえぜ
っっ!!!



その時、夜叉丸は無防備状態の廃炉へと瞬時に間合いを詰めた



···はっ、早い····っ!!!
大量の武器がテメェを囲んでなきゃどうってこたぁねぇんだよっ!
····ック
チョロいぜっっっ



次の瞬間、夜叉丸は血の刀を廃炉目掛けて振り降ろした



あっという間に間合いを詰められ逃げる余裕もない廃炉は、夜叉丸の血の刀に真っ二つにされたのだった



·······っ!
····やった!
············
·····ふん!



その場に居た誰もが廃炉は完全に消滅するものだと思っていた



っ!!!!



だがホシ猫は、最初から違和感を感じていた



なぜ廃炉は能力を変更しなかったのか、それがどうしても納得いかなかったのだ




はは、ナルホドね

そう言う事か

廃炉·····!

やはりアイツは食えない奴だ···!

···っ!!!

確かに手応えはあったはずだ!!

···えっ  えっ!?



真っ二つにされた筈の廃炉は――――



真っ二つになったままの状態でその場に立ち尽くしていた


いや―――、それどころかポリポリと頭を掻きながら困ったような表情をしている···


夜叉丸の血の刀で斬られても肉体は朽ちず、散亡することが無かったのだ



テメェ······っ!!
···さて、仲間も殺されてしまった私は仕方なくカルラ様にご報告に行かねばならなくなったッス
ふっざけんな!!!

このまま逃がすかよ!!

夜叉丸、もう無理だと思うよ

彼は既にこの場には居ないだろう

なんだとっ?!
······廃炉!
それでは、失礼するッス
クッソが!!



廃炉は、「クソが、とか口悪すぎるッス!」とブツブツ言いながら真っ二つになった自らの肉体を粉々に破壊して、その場から立ち去って行った



····チッ

どうなってやがる··

俺達が廃炉と口論する以前から、既に能力の変更は行われていたって事か
やはり幹部だったね

一筋縄では行かないようだ

あの肉体は何なんでしょうか?!
詳しくは分からんが、廃炉とは別の··死んだ人間の肉体には違い無いだろうな
·········
やってくれるぜ···!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色