第109話「好機」
文字数 1,311文字
《鬼の世》
鬼梗(ききょう)、ナズナの様子はどうだ？一時たりと目を離すなよ？
カルラ様♡
ナズナ様は大丈夫でございます。ご心配なきよう···
·········
それにしてもカルラ様、ナズナ様が何故お部屋から出てこられないのかご存知なのでしょう？
··············
だったら何だ？
ナズナ様はもうお若くないのですよ？人は直ぐに老けてしまいます
···何が言いたい··鬼梗？
あんな人間の女の何処が良くていつまでも手元に置いておくのか私には理解できないのです
···········
···私なら一生カルラ様のお側におられますし、いつまでも若いままです
··········
今からでも遅くは御座いません··。ナズナ様のことはもう諦めなさって私をカルラ様の正室に·····
黙れ鬼梗。
貴様は何か勘違いをしているようだな？
っ！！！
確かに貴様は私の側室と言う立場に居るが、それはあくまで前族長が決めたことだ
··········
私は鬼女に興味など一切ない
カルラ様····わたしは··
それでもカルラ様の事が···っ
············
···ナズナから目を離すな
そう言うと、カルラは部屋から出ていった···
ｷﾞﾘｷﾞﾘｷﾞﾘ――――
く、屈辱だわ···っ！あんな人間の女などタダの喰いモノでしかないじゃない····！！！
――――絶対に許さない
《江戸―城下町》
何日もかけてようやく江戸に着いたと言うのに、早速鬼と対峙しろって酷くないですか玄宥様〜
ああ、俺はもう疲れたし眠い
こんな状態で戦うのは無理だよなぁ
それじゃあ、今日は鬼は出てこなかったって事にして宿に戻りましょ〜？
そうしたいのは山々なんだけどな、少し臭って来てるぞ···
え····
あ〜···、だが今回のヤツはちょっと違うな··
と、その時だった――――
ザ――――ッ
あ？
うわっ！！！
おっ、鬼！！！！
············
なんだテメェら？
何でこんな時間にウロウロしてんだよ
··········
····オイコラ
テメェ無視ぶっこんてんじゃねえぞ
夜叉丸、ケンカ売るクセなんとかしたらどうかな？
えっ？！猫が喋ってる！！！
···君達は何者だ？
···んだよ、口きけんじゃねえか
ホシ猫達は鬼の仲間じゃないよ？
でっ、でもそいつは鬼じゃないか！！
あぁっ？！
この小僧！！誰に向かって口聞いてんだクソガキがっ！！
···夜兎(やと)、少し黙っていろ
っ！！！
驚かせて悪かったね··
彼は確かに鬼だけど、逆なんだ
逆····、とはどう言う事だ？
俺は鬼狩りの鬼だ
っ！！！
お、鬼狩りの鬼····？
彼の名前は夜叉丸だよ。君達と会うのは初めてだね。因みにホシ猫の名前は、ホシ猫って言うんだ
··なるほど、君達がそうか
げっ、玄宥様！知っているのですか？！
あぁ、勿論知っている。
あくまでも噂程度だったがな···
まさか本当に存在していたとは―――
ハッハッハ！
俺様は伝説になっているらしいぞホシ猫！！
調子に乗らない方が身のためだよ夜叉丸。何年生きても中身が成長しないのは相変わらずだね
うるせえな！絞り殺すぞニャンコが！
くっ、口の悪さが半端ない領域だ！
···········
これは好機かもしれないな
····えっ？
あ？
