第185話「桐生家の能力」
文字数 3,790文字
···いろはが不老不死じゃ無くなった場合に、他の誰かが鬼化の「復元」をしなければならない
···でも、「復元」はカルラ様の能力だから···私しか―――――
それに····、普通の人が「復元」を使ったら···寿命が短くなってしまうわ
·····まぁ、確かにそうだが
恐らくいろはの能力は、使い方次第で寿命はいくらでも延ばすことが出来るだろう
····問題なのは、そっちよりも「復元」を継承する方法だ
だがこれは····
いろはが拒めば全てが閉ざされるような内容だ···
····俺は
やっぱり自己中でゲスいクソ野郎だと···自分でも思うよ
····もし、嫌だったら―――
ハッキリそう言って欲しい···
俺の遺伝子といろはの遺伝子を組み合わせて『鬼狩りの鬼』を作る事だ
ちょ···っ
ちょっと···?!
何を唐突な事を言ってんのよカイト?!
そ、それってつまり――――――
····それも――――
沢山作らないと鬼の数に手が回らないのだが···
照れくさそうで、でもホッとした表情のカイトがとても可愛く見えてしまう···
いろはにはまだ話していなかったが、桐生家の能力は「復元」した人の業を取り除く事が出来る
···俺が生まれて、鬼狩りを始めた頃には既に復元された人達が結構いて驚いたよ
復元をさせている人物については、いつまで経っても謎のままだったが··
それから記憶を取り戻した時には、いろはの痕跡だと理解し、ずっと追いかけてた
···だから
やっといろはを見つけた時、危なくそのまま抱きしめる所だったよ
だからか···
あの時、肩を抱いてくれた手にはとても力が入っていて実は少し痛いくらいだった――――――
業は人の罪に対する対価だ。それが無くなってしまっては罪を償う事を人は忘れてしまうだろう
····だからこそ、この役目に桐生家が選ばれた――――
····桐生家の陀羅尼神呪(ダラニシンジュ)は呪いで悪を支配する事が出来るんだが···
業を取り除く代わりに呪いをかけ、再び悪事に手を染めようとした場合に呪いが発動するようになっている
····呪いは悪事の大小でも変わってくるが、簡単に説明すると「悪夢」に苛まれるようになる
··ただの悪夢など、人の罪による業と等価交換には遠く及ばないと思われがちだが―――――
桐生家の呪いはそんなに優しいもんでもなくてな····
悪夢を見始めても尚、悪事に手を染めた場合、夢の中の鬼に精神を喰われ二度と目を覚ます事はない
呪いで悪を支配すると言うのは、何も人だけじゃないからな····
····夢の中に出るのは「縊鬼(イキ)」、又の名をくびれ鬼と言う――――
この鬼は···人の歪んだ心から生まれ、実体化する程の力を持ってしまった悪鬼だ
まぁ、現代社会に於いて···鬼の生まれ方や形態も様々になってきていると俺は思ってるよ
そうだ···
だが、鬼を生み落としているのが全て「人間」である事には変わりない
····この「縊鬼(イキ)」は人に取り付き、首を括らせる
だから俺達は「縊鬼(イキ)」を封印し呪いをかけ支配することにした
桐生家は――――――
いつから続く家柄なの····?
正直驚いた····
私は知識が少ないからだけど、術師として知っている有名な家柄は真言を操る櫻井家だけだったから―――――
以前にホシ猫さんから桐生の話を聞くまでは、一切その名を聞く事などなかったのだ
····だけど、カイトの話を聞く限り、その「陀羅尼神呪」の力は異常だ··
そんなに強力な能力を持っていて、なぜ今まで表に出てこなかったのだろう
·····桐生の家は櫻井家と近い歴史を持っているが――――――
····平安時代、朝廷の目を盗み、密かに不老不死の研究に没頭していた桐生家の当主は····
罪無き多くの人々の命と、数万の百鬼の魂を研究に費やしていた····
····そして、そんなもんはいつまでも続けられる筈が無い···
とある人物の密告により、朝廷は桐生家の秘密を探るべく調査を行っていた
そして、密告内容が真実だと発覚した後、朝廷が桐生家を滅ぼすまでに有した時間はほんの一瞬だったそうだ
そういう事か····
不老不死の研究ってどんなモノかと思っていたけれど····まさか人の命も百鬼の命も犠牲にしていたなんて―――――
···百鬼とて、ホシ猫さんや黒鉄さん、イカタル*さんや廃炉さんのように優しい方々も沢山いる····
そんな事絶対に許されないわ―――――――
っっ!!!!
(やっぱり···、きっと見過ごすわけには行かなかったんだ···)
····遠い昔、櫻井家と桐生家は同じ術師として競い合いながらも良い関係を築いて来ていたのだがな―――――
とは言え····、桐生家は完全に神に見放された訳ではなかった
····滅ぼされたその日、桐生一族の中にたまたま旅に出ていた者がいたんだ――――
その男は山の上から自分の屋敷が燃えているのを見て直ぐに理解した
ようやく旅から戻って来たと思ったら、とんでもない事態になっていて焦った事だろう
···自らも見つかって殺されてしまう前に再び旅に出るしかなかった
····その男は何日も何日も飲まず食わずで歩き、とある本山まで辿り着いた
元々、その本山には桐生家の知り合いが居たらしくてな、匿ってもらう事にしたんだ
ああ····
それが現在で言う所の、「曹洞宗」の大本山だ
···桐生家って元々お寺なのかと思っていたけど····
いや···、まぁ確かに普通の家とは違って術師ばかりが産まれていたが、家は普通の屋敷だったらしい
····あれ、確か夜叉丸って「文永」の時代に産まれたんだったよね?
そ、そりゃまぁ···夜叉丸の事は何一つ忘れたりしないから
て言うか、どうでも良くないし!
私にとっては大切なことだし!
····もしかしたらさ、年代的にその桐生家の生き残りの人が、輪廻転生した夜叉丸だったりして?
······うーん
それはどうかな?その辺は全然覚えてないからな···
でも、もしそうだとしたら夜叉丸もカイトも桐生家として転生しているんだよね····
····俺が桐生家として輪廻転生していなければ、いろはの不老不死について此処まで調べることも出来なかった
·····て言うか、現職は神に仕える立場でしょっ!
····ック
夜叉丸もカイトもイケメンが過ぎる···
顔面の破壊力が凄まじくて眩しい!
まだ朝日が昇っていないのにキラキラして見えるのは危ない···!
····って、そうじゃなくて――――
話を脱線させてしまっていた事に今更気づいた····
···あ、えっと···
話を脱線させてしまってごめんね
···本当に優しい――――
私のことを心配してくれているのね
此れからは二人で一つの布団に寝ることになりますが·····
·····だって
さっき、いろはは私の遺伝子を受け入れると言いましたから···
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