第156話「真実の姿」
文字数 2,101文字
カルラ―――――
てめぇ····、この刀を何処で手に入れやがった
夜叉丸は氷月から取り上げた刀、「鬼丸」をカルラに突き付けながら言った
だが、あの日―――――
俺はその場に居る全ての命を斬り捨て、···この刀も破壊した
夜叉丸にそう言い放ったカルラは、今度は自身の刀を抜いた―――――
その刀は抜かれた刹那、晦冥(かいめい)の如く真っ黒な炎に覆い尽くされ、その炎は次の瞬間に死に苦しむ人々の怨念へと姿を変えたのだった
夜叉丸がホシ猫を助けてくれた時に抜いた··あの時の夜叉丸の刀――――
数多の人間の肉が斬り裂かれ、多量の血を吸い込んでいる
何よりも、それらの怨念と憎悪が未だにこの刀へ未練を残して蠢いているのだからな
···あり得ない―――
あの刀は700年以上も前の代物なんだ
妖しく光り輝いていた切っ先が、そのままに再現されている
その刀は夜叉丸にとって己の罪そのものだ···
戦だけが最も続く世で、刀を振るい、人を斬る事だけが唯一自分の生きる場所として許されていたあの頃···
数え切れない程の人を切り捨てた
戦だけではない―――――
殺しの依頼があれば恨みなど無くとも躊躇なく殺す
それが当たり前だったのだ
俺の過去を暴きたいのか何なのか知らねえがな――――
つっても、俺は曰く付きのソイツも破壊したつもりだったんだがな――――
この刀は····、ずっと貴様を取り込みたくて仕方が無いと嘆いている
さあ――――
では、そろそろこの刀の願いを叶えてやろうか
真の姿を晒したカルラに一瞬驚いた夜叉丸は、次の瞬間ゾッとした――――
今まで確実な間合いを空けていた筈だったのだ
しかし、音もなく風もなくカルラは何故か今、夜叉丸の目の前にいた
夜叉丸っ!!!!
後ろに飛び退いて林に紛れ込むんだ!!!
わ、分かってんだよ····っ!!!
そんな事は―――――
(···にしたって速すぎるぜ!!音どころか気配すら感じさせねぇ··!!!)
いくら頑丈な夜叉丸だって、あの刀に斬られたら一瞬で魂を取り込まれてしまう――――
地獄行きよりも悲惨な運命を辿ることになるよ····!!そんな事···させられない!!!
だけど··、カルラの力が未だ未知の領域な上に···あんな曰く付きの刀を手に入れられたら――――
フン···
下らんな。そんな林に紛れ込んだ所で私から逃れられると思っているのか?
(だが勝機を見出すには時間が必要だぜ····!!)
レイと冰鬼の激しい戦いは、レイの勝利で終わっていた――――
瞬間消滅された暁鬼と冰鬼はカルラに助けを求める隙も与えられなかったのだ
黒鉄の天眼通を手に入れたレイはある意味チートだった
···冰鬼も暁鬼も、中々手強かった
(チートでも···だ)
······だが
何故鬼は人を喰らってしか生きられねぇのかなーって··さ
人が業を背負えば鬼となる····
人と鬼の因果関係って何なんだろうな
ふぬ···
人が業を背負った場合に成る鬼ってのはな、鬼族とはまるで違う生態なのだ
同じところがあるとすれば、人を喰らう部分だけだろうな···
そうだな····
鬼には理性があるが、人が鬼化した場合には完全に理性が失われる
鬼も····、人なんか喰わなきゃこんな事にはならねぇのに―――――
···チートになって余裕が出来ると人とはこんなにも考え方が変わるものなのか?
そうか···
ならば――――、天眼通返してもらお······
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