第169話「あの日の廃炉とイカタル*ちゃん①」

文字数 2,874文字






      《古民家Cafe―ゑ來屡》

廃炉さん

ビールのおかわりください

っっ!!

も、もうッスか?!あまりにもハイペース過ぎるッス!!

え、そうですか?

気にしていませんでしたが、楽しくてお酒が進みますね〜

ちょ、ちょっと待ってるッス!
真那さん大丈夫ですか?

既に結構飲まれていますよ?

ああ、フフ――――

私にとってお酒など水のようなものですから何も問題ありませよ!

水·····っ



結局あれから4人で晩酌を共に(半強制)する事になり、イカタル*さんの美味しいお料理と共に、色んな国のビールや廃炉さんおすすめの日本酒などで意外と楽しく盛り上がっていた――――



真那さんは呑める口ですね!



と、言いながらイカタル*さんが何やら良い〜香りのする料理を作って持ってきてくれた



さあどうぞ!!

「やわらかヤリイカのアンチョビガーリックソテー」です!

ほぉう!!これは素晴らしく良い香りがするイカ料理なのです!!
イカタル*さんのお料理の腕前は未知の領域ですねー!!全てがとても美味しくて幸せです〜っ!



本気でほっぺが落ちそうな程に美味しいイカタル*さんのお料理をベタ褒めしていたその時――――


「当然ッス!イカタル*さんのお料理ッスよ!?世界一美味しいに決まってるッス!」と、自分の事のように自慢をしながらタマネギさんがお洒落な瓶ビールを抱えて戻って来た



はい!カナダのビール「パシフィック・ピルスナー」っす!苦味がすくないので、いろはさんも大丈夫だと思うッス
わわっ!私のために飲みやすいのを選んで下さるなんて優しいんですねタマネギさん!
っっ?!

い、いやっ、ワタシの優しさはイカタル*さんの為だけにしか―――――

····廃炉さん、大丈夫ですよ?

お客様に優しくするのは当然の事ですから

······ふーむ

イカタル*さんは、見た目も内面もとても美しいので廃炉さん大変ですね〜

っっっ!?
っ?!
そ、それはもう···そうなんッスよ
···えっ?!
···思い返せば「あの日」··は、イカタル*さんにはもう二度と会えないことを覚悟していた時だったのですが――――
··········
それが···カルラ様とゲンユーさんの配慮のお陰で、再びイカタル*さんの元へ行くことが出来たッス
··········

でも··本当に、ずっと会えずにいたのでイカタル*さんに愛想尽かされていたとしても仕方ないとは思っていたッス

········
····ホントですよ

もう待ちくたびれていた所でした

············
····はい、スミマセン













        ―一ヶ月前―

       《高架下前―公園》

······ハァハァ
···カルラ様――――――
ワタシは·······
···ワタシだけが·····こんな―――――――



廃炉にとって唯一無二のカルラの死···

そして鬼族の滅亡――――

この世に鬼族の血統は廃炉だけになっていた


だからこそ、カルラは廃炉に実質最期の命令を下したのだ


一人残されてしまった廃炉が悲しみに暮れて自害しないために····

大切な存在を思い出させる為の命令を――――




しかし、廃炉は自責の念に駆られたままにこの場所に来ていた



····イカタル*さん

ワタシなど···貴方に釣り合うような存在ではないのです··

············



廃炉がイカタル*ちゃんに会うことをためらっていたその時―――――




もう仕事は終わったんですよね?!

だったら今日こそはつき合ってもらいますよ?!

····ちょっ、ちょっと待って下さいっ!!!今日は予定が――――



少し離れた場所からだろうか?

男女が話している声が聞こえる――――



···しかしその内容は穏やかなものでも無さそうだ



····何だ?

痴話喧嘩――――、いや、何だか一方的な感じだな···



廃炉は自分には関係のない事だと思いながらも、少しだけ様子を見に行くことにした





そこに居たのは―――――

予定ですか?

こんな時間に誰と何の予定があるというんですか?!

そっ、そんな事アナタには関係ないでしょ!!



無駄に自身のありそうなイケメンと、イカタル*ちゃんだった―――――



っっっ!!!!!!?

(いっ、イカタル*さん?!)

関係ならありますよ!

イカタル*さんは今から俺と朝まで過ごす予定なんですから!

····は?!
――――――は?

(何だこの変態は!!!?)

そうすれば、きっと俺が一番だと分かるはずです!
な、何を言っているんですか?!

そんな事になる訳ないでしょ!

いいえ!なりますよ!

今日こそは―――――



男がイカタル*ちゃんの腕を強引に掴み、自分の方へと引き寄せようとした




その時――――――

············
·············
――――――――待て
っ?!



廃炉は男に詰め寄り、イカタル*ちゃんの腕を掴む男の腕を鷲掴みにした――――



鬼族の中では小柄な廃炉だが、実はかなりの筋肉質であり、身長は先日少し伸びたため185㌢はある


間近で見ればかなりの迫力である事は言うまでも無い


廃炉は実に冷静な態度で対応していたが、内心は最大にブチギレていた



っっ!!!!!

(は、廃炉···さん···?!)

何をしている?

その手を離せ

·····何だよアンタ
廃炉さんっっ!!
···········
···········
へぇ〜···

予定があるのって本当だったのかよ

···分かったらその手を離せ

気安く触るな

っっ!!!

ドキッ

···はっ!

嫌だね!!

ピクッ
は、離してくださいっ!!
イカタル*さん···、俺は諦めませんよ?!
イラァ
···········
――――だったら
·············
――――貴様のようなクズは生きたままバラバラに引き裂いて喰うしかない
っっっ!!!!!?
っっ!!!!!!
·····お、鬼――――っ?!



····本来ならば聞き分けのないこのクソ野郎を殺してやろうかと思う所だが、イカタル*ちゃんの手前そこまでする事は出来ない―――――


仕方がないので、この男の小汚い腕を握り潰す事で気持ちを抑える事にした



ぐ――――っ

うああぁぁぁっ!!!!!う、腕があぁぁぁ!!!

はっ、離せ!!!!

痛―――っい!!!潰れる!!

――――何だ、根性なしなのか?ワタシ如きの握力でここまで叫ぶとは···
※鬼族、廃炉の握力=右150 左200
わ、分かったよ!!!

分かったから許してくれ――――っ



そう言うと男は悲鳴を上げながら走って逃げていった



········
··········
···あ、えっと

い、イカタル*さ―――――



廃炉がイカタル*ちゃんに何から話したら良いのか悩んでいた時―――








っ!!!!!!!

(ぬぉぉぉ!!!マスク!!!)

廃炉は照れ屋なので直にマスクの紐を結び直した!

(って、そこじゃなくて!!!)
廃炉さん――――廃炉さん――――



イカタル*ちゃんは廃炉に抱きついたまま廃炉の名をずっと呼び続けている


···このまま暫く離れそうにないイカタル*ちゃんが可愛過ぎてヤバい!

抱きつかれている現実が信じられない!

死ぬほど嬉しい本心を一切隠すことが出来ない!

鼻の下が伸びるのは男だし仕方がない!


と盛大に心の声が漏れそうな廃炉だった······




イカタル*さん―――――
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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