第105話「ナズナの想い」
文字数 1,388文字
ー約200年前ー
《鬼の世》
サワサワサワ――――···
ナズナは走って戻って行った
《鬼の世ー春の闇》
どうして鬼の世はいつも春なのだろう··
フワッと暖かくて、いつも優しい風が吹いている··
桜はずっと咲いていて満開だ
風に揺れて、こんなにも散って行くのに尽きずに咲き続けるのは···まるで鬼の寿命と同じ様だ··
それに、実はカルラ様には側室がいるそうだ···(タマネギさん談)
私は正室だけど、人間如きがフザケンナと言われているみたい···(タマネギさん談)
因みに鬼には女性も多い。しかも美形揃いで恐縮したものだ
何度か喰われそうにもなっている···
人が鬼の世で暮らすなんて色んな意味で難しいのだけれど···
それでも私はカルラ様のお側に居たい··
···実はこの場所は――――
カルラ様が側室とお散歩をなさる時に来る場所だと聞いていた
(タマネギさん談)
···のだけれど、春の闇はとても美しい場所だ
私とはいつもの場所にしか行って下さらなくて、ちょっとだけ悔しかったりして···
でも怒られちゃった···(クスン
もう、とても悲しい気持ちにばかりなってしまって涙まで出そうだった私は、それを悟られない様にカルラ様に背を向けて立ち去ろうとした
その時―――――
カルラ様は私の腕を掴んだ
カルラ様はそう言うと、私の体を引き寄せ――――
もう····、本当に素敵···
心からお慕いしています··カルラ様··
···こんな事、面と向かっては言えない
いつもの事だけど私は本当に単純でバカだ··
完全にカルラ様にハマってしまっている
あんなに男性不審だっただけに自分でも信じられなかった