第194話「見目麗しい親子」
文字数 3,543文字
―PM12時10分―
《区塀良―ショッピング街》
どうやら、カイトはカイトなりに私に気を遣ってくれているみたい···
···それじゃあ行こうかと、カイトが私の手を取り歩き出そうとしたその時―――――
何故かまたピタッと立ち止まってしまった
一切微動だにしないカイトの視線は反対側の歩道に向けられている····
反対側の歩道にいるのは···
····親子?
どうやらカイトは、その親子を見ているようだった
····父と子供―――――
幼い子供は男の子で4歳くらいだろうか?
二人で買い物に来ていたのか、父親の腕にはメジャーな子供用品店の袋がぶら下がっている
そして、幼い男の子は父親に手を引かれて歩いていたが、眠たそうに目をゴシゴシと擦っていた――――
それに気付いた父親が足を止め、しゃがみこんで男の子に話しかけている····、そんな風景をカイトはジーっと見つめているのだ····
私がそう言い掛けた時、カイトは急に歩き出したかと思えば横断歩道を渡り、反対側の歩道へ向かい始めた―――
勿論、私の手も握ったままなので自ずと連れて行かれている状態だ···
そして、カイトは何故かさっきの親子の前までスタスタと歩いて行き、何を思ったのかおもむろに声を掛けたのだった―――――
なんて····
見目麗しい親子なのだろうかと、一瞬で目が釘付けになってしまった···
男の子の髪の色と父親の髪の色が全く同じなのがまた私の心をくすぐってくる―――――
急にカイトに声を掛けられた父親は、眠たそうに目を擦っていた息子を抱き上げていた所だったらしく、少し戸惑った様子でコチラを向いた
そうして、父親は何かを噛み締めているかのように幼い子供を見つめながら優しく撫でた後、私達に軽く会釈をしてこの場から去っていった―――――――
いや、そんな事は別にどうでも良いんだけど――――――
そこじゃなくてね···
カイトは、これまでもこうして沢山の人々の憂いを取り除きながら旅をしていたのだろうか?
前世があの夜叉丸だっただけに、この変わりようには本当に驚かされる一方だ
····カイトと出会った日から今まで一緒にいて、夜叉丸とは全く違う雰囲気に何となく寂しく感じたりするのかなって思っていたけれど·····
不思議な事にそんなものはただの杞憂でしかなかった―――――
何故なのだろう····
あんなに優しいのにやっぱりカイトと夜叉丸は同一人物なんだなって実感するのは――――――