第124話「夜叉丸の猜疑心」
文字数 1,792文字
《黒崎家》
···········
夜叉丸、いろはが行方知れずになってからもう3日は経っているよ
···だから何だ
ナゼ捜そうともしないのかな？
··········
あいつが自ら望んでヤツんとこに行ったんじゃねぇか。俺には関係ねぇ
夜叉丸、それは違うだろ
あ？
何でテメェがここにいる
ホシ猫が呼んだんだ
君があまりにもいろは捜しに協力的じゃないのでね
···いや、むしろ此処は俺の第二の家のようなもんなんだけど··
コイツが何の役に立つんだよ
···相変わらず失礼なヤツだな
何もしない君より余程頼りになるよ
ふん！
鬼狩りさん、いろはさんが自分の意志で此処を去ったと本当に思うのです？
········
俺は、あいつが行くのを止めたぞ
····うーん、確かに今回の事はいろはにも否があるけども、いろはは単純にバイトに行っただけだと思うんだ
夜叉丸は、いろはの事が心配じゃないのかい？
は？なんだその心配っつーのは！俺はあいつが鬼にならなけりゃそれでいいだけだ！！
···しかし、いろはさんの身に何が起きるか分かりませんよ？不老不死が鬼になってしまうかもしれません
········
ルカさん··だっけ？あの時、あまりじっくりと拝見してはいないが彼が纏う空気は異質な感じがしたな
·······
···あいつは、恐らく鬼族の頂点に立つモノだ
···カルラだね
··んだよ、分かってんじゃねぇか
カルラ···？
ああ、鬼の気配は消しているが···あの独特な空気は一般人のそれじゃねえ
カルラはかなり厄介だ。側近の黒鬼だってそうだが――――
······
だが、いろはが自分の意志で奴らの元へ行ったのなら状況は最悪だ
鬼を皆殺しにしなきゃならねぇ俺からすれば、いろはなんて邪魔でしかねぇからな
いろはは鬼の味方になんかならない。きっと助けを待っているはずだよ？
どうだかな···
真相は分かりませんが、私もいろはさんが望んであちらへ行ったとはどうしても思えません
取り敢えず3日も経ってるし、状況は悪くなる一方だろ。相手が鬼だと分かっているなら行くしかないんじゃないか？
確かにそうなんだけどもね、鬼の世なんて行き方が全く分からないのさ
今まで一度も行った事ないし
ならば、鬼に案内させるしかなかろう？
··········
何だこの黒いヤツは
あれ？夜叉丸は覚えていないのかい？
··まぁ最近はずっと人型で過ごしているから無理もないか
ふん、覚えてなどおらんでも別に構わん
黒鉄！
黒鉄だと？
珍しいですね、猫型だなんて
百鬼共に探りを入れるなら脅威を露わにしておく方が話が早いのだ
むしろ可愛くて仕方ないですが
········
それで、その脅威は役に立ったのかい？
まぁな····
っ！！！
わざわざ俺達を鬼の世に案内するアホな鬼なんかいるのかよ
百鬼共の話では、いろはにゾッコンのストーカー鬼がいるらしくてな···
·········
···あ〜、あいつか··
そいつをどうするんだい？
どうにも最近、その鬼はいろはを別の異形に奪われたらしいとの噂で持ち切りだった
異形って、もしかしてカルラかな？
恐らくそうだろうな
鬼からすれば一族の頂点に抗った所で敵うはずもないだろう
だがしかし、そいつにウマイ話を持ち掛け、鬼の世に案内させる事が出来ればいろはを救い出せるやもしれん
それって鬼を騙すって事だよな？
また酷いことを考えるぜ黒鉄···
(同情すら感じる··)
いろははきっと、ホシ猫たちの元に戻る事を望んでいるはずだよ
·········
まぁいい。鬼の世に行けば、ついでに殲滅させる手間も省けるってもんだ
···あ、そうですよね
鬼の世に行けば、鬼達との戦闘は避けられない··
て言うか、この少人数で無数にいる鬼達を殲滅なんて無理だと思うけど
ふん、カルラさえ殺っちまえば残党狩りなんざ楽なもんだろ
昔の事を忘れたのかい夜叉丸？数多の陰陽頭達が黒鬼と目一鬼に一切敵わなかったんだ
ましてやカルラになんて―――――
···なに？
多くの陰陽頭が歯が立たなかった事があるのか？
うん。ただ一人···
ゲンユーだけを除いてね
っ！！！！！
ゲンユーは確かに優秀だったかもしれねぇが、あん時は殆ど俺の活躍だろ！
···ゲンユーって、もしかして「釈 玄宥」様の事か？
っ！！！！
そうだよ。オーマ知っているのかい？
勿論だよ。
俺のご先祖様だからな
っ！！
なんと！
·····その割にはパッとしねえな
パッとしねえはあんまりなのです
悪かったな！
