第51話「禍」
文字数 1,127文字
-PM11時55分-
その時私は···、夜叉丸が掴んだまま離さずに引き摺っていた
「それ」に気づいた
それは····
全身をギタギタに切り裂かれ、体は上半身しか無く、下半身は部屋の隅に転がっていた――――
顔面は人相も分からない程に傷つけられ、本来ならば誰なのか認識出来る度合いではなかった
夜叉丸はその人の髪の毛を鷲掴みにし、上半身だけを引き摺って歩いていたのだ
····それでも私にはその人が父上だとハッキリわかった
何故ならその人は、私が父上だけに贈った手作りの御守りをきつく握り締めていたのだから
そして、夜叉丸の右手に握られていたのは父上の銘刀『鬼丸』だった···
夜叉丸は、声にならない声で泣き叫ぶ私を見下ろしながら、以前にもあったように自らも急に苦しみ出し、左手で鷲掴みしていた父上を手放したのだった··
そして··、夜叉丸は――――
父上の無惨な遺体にすがり付く私を置き去りにして、館から姿を消した
-AM1時20分-
俺は朦朧とする意識の中で、全てを思い出した
あの時の俺は···、目に写る全てのモノが殺害対象だった
だが、それは勿論俺の意思とは関係のない所にあるものだった
俺はその感覚に支配され、抑制することが出来なかったのだ
やはりダメだったんだね··
そう···、10年前に俺と氷月の前に現れたイタチを連れた男だった··