第106話「カルラの思い」
文字数 1,447文字
ー約200年前ー
《鬼の世ー春の闇》
カルラ様は私の体を片腕で抱いたまま、至近距離で私の顔を凝視していた···
···良い匂いがする
カルラ様はいつも麝香(ジャコウ)の様な優しい匂いがするのだ
··個人的には最高に幸せな時間であることは言うまでもないのだけれど、そのちょっと先までは中々行かないのがカルラ様だったり····
――――もしかして、心配して下さっていたの?
(私はカルラ様に抱き寄せられたことに浮かれて、さっきまでの悲しい気持ちをすっかり忘れていた)
やはりどうしようもないバカである··
こんな···、嫉妬深い女だなんて本当は思われたく無かった···
··それでも、言わずにはいられない
私はいつからこんなにも貪欲になってしまったのだろう
き、嫌われた····かも···
やっぱり本当だった··
私は··、ずっと抱えていた不安な気持ちと、カルラ様の優しいお言葉とで我慢していた細い糸がいとも簡単に切れ、涙が溢れ出てしまった
そう言って下さったカルラ様は、私を優しく抱きしめ、泣き止むまでずっとそうしてくれていた