第133話「最悪な観光客」

文字数 1,962文字






           《鬼の世》




ここは鬼の世――――――


普段はとても静かで、桜のざわめきが心地よく響き渡る幻想的な場所だ―――




廃炉様!!!



そんな静かなこの場所で、本来は有り得ない事態が起きていた―――



ぬ?

どうした?

少し前から人間とかその他諸々の匂いが漂っています!
···人間とか···って何だ··。

春の闇からではないのか?

春の闇だとしても、人間の匂いだけではないのです···!
···········

何だと···?

廃炉様
···何だ?
観光客がいらしておりますよ···
観光客···だと?








          《春の闇》

ほぉ〜···

これは中々····絶景かな

玄宥様!

ここに看板がありますよ!!

···「春の闇」

って、もう少しカッコイイ看板なかったのかよ···

ここは桜がとても美しく咲いているけれど、血なまぐさくて鼻が曲がりそうだよ···
なるほど···

(ここは餌場か――――)

桜しかねぇじゃねえか

もう飽きたぜ

········
取り敢えず、記念写真でも――――
···だ、誰が何処で記念写真を撮ろうとしてるッスか·······!!!
お?
ワナワナワナ
あ···っ
これはこれは廃炉じゃないか···

久しいな。元気にしてたか?

な、な、な、何で此処にあんたらがいるッスか?!
てゆーか!!!

ゲンユー!!何で生きて――――

···········
ハッ
········
お、お前は····アユム···!!?
中々忠実な案内役だったぜ?
あ〜···、でも彼を責めないでやってくれよ廃炉?操ったのは俺だから
·······
っ!!!!
····アンタら·····!!

此処が鬼の世だと分かってて来たって事ッスよね?!

当然だぜ!

今回の目的はてめぇらの殲滅―――――

いろはを返して貰おうか!!!
うおっ!

急にデケェ声だすなっ!!

いろは···だと?
拐ったことは分かっているんだ!
···ふ

あの方はナズナ様だ

ああ?!

ナズナって誰だよ!!!さっさと女を差し出しやがれ!!

夜叉丸、その言い回しはあまり良くないな?どちらかと言うと悪役だ
········
まさか、こんな所にまで乗り込んでくるとはサスガに思っていなかったッス··――――
ふん!

遅かれ早かれてめぇらは絶滅危惧種なんだよ!

···鬼狩りィ····っ!!
····いろはちゃんを返して下さい
っ?!
少年漫画的展開も悪くはねぇが、俺はサッサと仕事を終わらせて早く帰りたいんだよ
まぁ、拐われた女のコにも実は興味津々なんだけど
···········
····オーマ、あーゆーのをナンパ野郎って言うんだろ?
···え、っと〜

それは間違ってはいないかな··

···········

と、トニカク、お姫さん出す気ねぇなら出すまで暴れるまでよ

貴様らは···っ、ゲンユーと同じ一族の者か···!!
陰陽師···、ですね?
っっ?!



鬼女はオーマのすぐ後ろから突然現れ、ニタニタしながらオーマの顔に己の顔を寄せつつ凝視しながら話している――――




い···っ、いつの間に?!
ヒヒヒヒ――――

(イイ男じゃぁ···ジュルッ)

(···ってかこの鬼、近くでみるとかなりビジュアルがヤバいんだけど)
········
オーマ、そいつから離れろ
っ!!!

(そんなにヤバい奴なのか?!)

マナが怒ってるから俺も若干イライラしてきて面倒なんだよ


※玄宥は現在真那の体を借りている

···あ、スミマセン··
相変わらずモテるなぁ逢馬は
···え?!
男の嫉妬は見苦しいよ?レイ
嫉妬じゃねぇし!!

俺はもっとモテるし!!

·········
···き―――――っ
貴様ら―――――

いい加減にするッス!!!

此処が何処か分かっててそんなに余裕かましているなら、即座に後悔させてやるッスよ!!




廃炉がそう言い放ったと同時に、何処に隠れていたのか凄まじい数の鬼達が一斉に襲いかかって来た――――




っ!!!!!!
ふんっ!!

やる気満々じゃねぇか!!!臨むところだぜ――――··



夜叉丸が鬼化しようとしたその瞬間―――――、既に体勢を整えていたのはレイだった



まさに疾風の如く、神速で白刃(はくじん)を振りかざした後には襲い掛かって来た大量の鬼達を軽く吹き飛ばす程の烈風を巻き起こしていた




っ!!!!

なっっ、何イィィィィッ!!!

っ!!!!

ほぅ、珍しい陰陽師だ。レイは刀を使うんだな

っ!!!

さ、サスガはレイさん!



空中を無防備に舞う鬼達へ慈悲の一つも感じられないレイの表情は常に冷静そのものだ


烈風を巻き起こしたその状態のまま、即座に次の一手へと移る――――



「馬頭印」
唵 阿密哩 都納繙 縛吽撥吒

(オン アミツリ トナウバン バウンバッタ)

「四魔消散大結界呪法」



その時、宙を舞う鬼達が次々と断末魔をあげ始めた―――――


よく見ると鬼達の体には蒼白い光の梵字が無数に刻まれ、その呪法に依って鬼達の肉体は無惨にも崩れ始めていたのだった




···やるじゃねぇかレイ!
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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