第209話「二ツ神」
文字数 2,967文字
ごめん···
私がいつまでもベッドから起き上がれなかったから···
···謝る必要はないよ
夜通し復元していたら疲れるのは当然だろう?
····じゃあ、少し体力回復を早める為に三屍蠱に寿命調整をしてもらうか
··········
(そんな三屍蠱さんを支配するカイトは本当に凄い術者なんだろうな···)
ここから数キロ先に····
怪しさ満点オーラだだ漏れの場所があるようだぞ
このペデストリアンデッキは少し高い位置にあるから街が一望出来るだろ?
··········
でも、黒崎さんのお宅は··お店と一緒に移転しちゃったみたいなんだよね
·······そうか
例の場所の影響を受けたんだろうな
駅周辺で、立地条件も良くて客入りも良かったのに残念だ····
····意外にも、カイトは少しだけ懐かしそうに目を細めて街を見下ろしていた
いや、それもそのはず―――――
ここの二ツ神は、私が夜叉丸とホシ猫さんと出会った時に、ホシ猫さんの旧友である黒鉄さんの飼い主の「黒崎さん」が住んでいた場所であり、私達が散々お世話になっていた思い出の場所なのだから―――――
夜叉丸の記憶をそのまま引き継いでいるカイトからすれば懐かしい思いにかられるのも当然だろう
····ここに黒鉄さんがいないのなら、まだまだホシ猫さんとは会えないのね
····そう焦る必要もないさ
移転先は旅をしながら探すことも出来るし、先ずはここを何とか解決する必要がある―――――
我に瘴気など微塵も感じられない故な、お前の不調に気付くのが遅くなってしもうた――――
その時、三屍蠱さんは細くて可愛らしい手で自分のモフモフな身体をポンポンとくまなく叩きだした····
何をしているんだろうか?
そう思ったのも束の間、三屍蠱さんのモフモフがまるで布団叩きの時に出るホコリの様に私の周辺に散りばめ始めると、今度は急速に私の体に引き寄せられるかのようにモフモフが引っ付いて来たのである····
ひっつき虫(オナモミ草)のようね···
我の体は瘴気を通さぬ
いろはにも少しだけお裾分けした事で障壁になるのじゃ
····ここでの事はまだ序の口だ
これからこの先に入らなければならないからな―――――
····それにしても、この場所は何故こんなにも瘴気にまみれてしまったのだろうか?
昔の事を考えると信じられない気持ちが溢れ出るばかりだ
···立ち入り禁止区域の中は沢山の建物が建っていたらしい名残がある
今は誰も近寄れない為に廃墟と化しているが、この辺は確か商店街や貸アパートなどがあったと思う――――
····取り敢えず、この先に行くためには柵を破らなければならないが誰かが入ってしまっては大変だ
···そんな事もあろうかと、俺達に調査依頼してきたカルラ様から柵の鍵を預かっている
·····じゃあ、最初のくだりは要らなかったじゃないの
あ、て言う事は―――――
ここって、カルラ様とナズナ様が働いている機関で管理しているのかな?
····管理はしているかもしれないが、瘴気で調査が出来ないと言っていたと言う事は――――――
ここを封鎖したのは恐らく陰陽師である櫻井家か·····
····で、でも櫻井家だったら封鎖じゃなくて封印すると思うのだけれど
もしかして····
櫻井家の手にも負えなかったのか?
それはまさに陰陽師どもの能力じゃ
···恐らく、外に異形を出さん為じゃろうて
ああ····
結界を張り、外に出さない様にする事しか出来なかった····と言うことか
さ···、櫻井家でも手に負えない案件を私達が何とかするだなんて···
···結界すらもそろそろ限界が来ている――――――
瘴気が漏れ出し、人が引き寄せられ、鬼化が無駄に進んでいる――――
····その通りだ
だからこそ陰陽師らは定期的に結界を張り直しているが――――――
ふむ····、なるほどな
コレが今世の夜叉丸か――――
ホシ猫が文句を言いたくなる気持ちも分からなくは無い
ホシ猫さん····、やっぱり黒鉄さんの所に居るんだ――――
·····なんとまぁ
付喪神に猫又とは····いろはもカイトも中々に恵まれておるのぅ
····夜叉丸に騙されたのだろう?
気苦労が耐えんだろうがいろはを宜しく頼むのだ
ホシ猫さんは――――――?
そう···言いそうになって、言葉を飲んだ
···さっきの黒鉄さんの口調から、きっとホシ猫さんは幸せに過ごしているに違い無い
またこんな危険な状況に敢えて巻き込む必要もないのだ
····カイトに言われた通り、焦って会わなくても大丈夫····
そう思わないといけない気がしていた
いろは、三屍蠱がいると言うことは···お前は現在寿命を喰われておるのだな
···カイトのお陰でようやく人として死ぬことが出来そうなんです
何か····、言いたそうだと思ったのは気の所為かな?
·····それで、黒鉄は何をしに此処へ来られたのですか?
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