第192話「玄宥の目的」
文字数 3,398文字
よし、··それじゃあ、施術のために壺の封印を解呪する――――――
カイトが私の為にこしらえていた「三屍蠱(さんしこ)」という蠱毒····
一体どのような百鬼なのだろう?
神霊となって寿命を喰らうみたいだけど···
おぞましくてグロい蟲が出てきたら本気で嫌だなぁ〜·····
共存だからって、食べなくても良いのは良かったけれど···どっちにして体内に取り込まなくてはならないのよね··
·····よし
覚悟を決めよう――――――
安爾(あに)、 曼爾(まに)、 摩禰(まねい)、 摩摩禰(ままねい)、 旨隷(しれい)、 遮梨第(しゃりてい)、羶(せん)
カイトが陀羅尼神呪を唱えたその時···
壺にしっかりと貼られていた封印の御札が壺の内側からバリッと破かれた――――――
···だからどうした?
お前が力を欲していたから手を貸してやったまでだろう?
············
確かに、我は力が欲しかった
だからと言って共喰いをさせられるとは聞いておらぬぞ
····ふん
そのお陰で、お前は神霊となり上級蠱毒となったのだ
ちょっ、ちょっと大丈夫なのこんな不穏な空気で····?!
この三屍蠱····、共喰いさせられてめっちゃキレてるようなんだけど··?!
····カイト、キサマがただの小童であればその命吸い尽くしてやっている所だが――――――
····そう
三屍蠱、お前はこれから俺の支配下でいろはの寿命を喰い続けるんだ
············
キサマの支配下と言うのは気に入らんがまぁ良いだろう
·····お前は己以外の不老不死と出会うた事はあるのか?
····不老不死の寿命を喰い続けるとは···何とも贅沢な事だ――――
····俺といろはが共に年を取り、命尽きるその時までの契約だ
···その後は自由に生きればいい
お前の階級はずっとお前の物だからな
···この先、一度でも良からぬ思いが過ぎったその瞬間···、俺はお前を即刻消滅させる
···いろはの体に何かしらの影響が出る前にだ。····ずっと監視されていることを努々(ゆめゆめ)忘れるな
············
構わんよ、娘っ子は可愛いからのぅ···カイトには勿体なさすぎるわぃ
···俺的にはお前がいろはの胸の中に入ることすら不快過ぎるがな!
····何を言うておる
キサマが望んで施そうと言うものに不快もクソもあるか
すこし焦ったようにそう言ったカイトは、三屍蠱さんを私の両手に乗せた
んまぁ〜、我の体は殆が幻影で出来ておるからのぅ本体は小さな青虫程度だ
あっ、青虫?!
それなのに共喰いで生き残ったんですか?!
うむ
驚いたか娘っ子よ?体は小さくとも口はデカいのだ
····な、なるほど
(イマイチ想像しづらいわね··)
その時、胸に抱いていた三屍蠱さんごと私の手を覆い包むかのように、カイトは優しい手付きで両手を重ねた―――――――
········
(カイトの手···大きいな···)
帝(てい)、 目帝(もくてい)、 目多履(もくたび)、 娑履(しゃび)、 阿徠娑履(あいしゃび)、 桑履(そうび) ――――
叉裔(しゃえい)、 阿叉裔(あきしゃえい)、 阿耆膩(あぎに)、 羶帝(せんてい)、 陀羅尼(だらに)、 阿盧伽婆娑(あろきゃばさ)
世尊よ、この陀羅尼神呪をもって三屍蠱といろはを融合させ、人として歩む道を示されん
カイトが陀羅尼神呪を唱え終えた時、三屍蠱さんと私の手を覆うカイトの手の内側から白く眩い光が優しく放ち始めた―――――
その光は、私が復元する時に放つ光とはまるで種類の違うモノであり、「呪い」とはかけ離れている程に優しくて美しい光だったのである
··········
(なんてキレイな光なんだろう···)
それって―――――
私が死んだ後は···三屍蠱さんは出てこられるの?
····大丈夫だよ
一応、三屍蠱とは契約を結んであるから、いろはの死後は開放される
三屍蠱さんとは仲良くなれそうだったんだよね!何となーくホシ猫さんぽくて!
···まぁ、いろはが願えば三屍蠱と会話が出来るようになるかもしれないな
(···後は暫く様子を見ながら三屍蠱を監視する必要があるな)
今日からは人と同じ様に年を取る事が出来るはずだ――――――
····だから――――
記念日として、少しでいいから祝わせて欲しい··
·····桐生家の史書ですよね
―――確か、この蔵に保管していた筈なんですが··
いやはや、最近はあまり人の出入りが無いもので埃っぽいのですが····
···俺の可愛い子孫がなぁ、ある思いを遺して亡くなったものでな―――
····櫻井家が桐生とどのような関係があるのでしょうか?
····申し上げ難いのですが、桐生と櫻井は平安時代の派閥によって―――――――
お前達の代から五代くらい前の話なんだがなぁ····
···確か、跡継ぎに選ばれたのは「桐生 蒼羽(きりゅうあおは)」、彼が長男だった筈ですが――――
長男でありながら跡継ぎを拒否し、あろうことが超級百鬼に自ら契約を持ち掛けた桐生家にあるまじき男です
·····ですので、その後は破門にされていたと思います
何で彼は超級百鬼に契約を持ち掛けたんだ?破門になる事は分かりきっていただろうになぁ〜
···本当に桐生蒼羽の事を知りたいのですね――――
当然だろ?
それが目的で俺は凪の身体まで借りて今ここにいるのだからな―――――
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