第187話「カイトとモガさん」

文字数 3,623文字







         ―PM7時50分―


        《Caffe―ゑ來屡》

イカタル*さん、廃炉さん、大変お世話になりました
····もう行ってしまわれるのですね
イカタル*さん、また遊びに来ます!必ず立寄らせて頂きますので··!
ワタシ達はずっと此処にいますので、いつでも遊びに来れば良いッス!
··········
····いつの間にかホシ猫さんも行ってしまわれて私は寂しいです···
っっっ!!!!
いっイカタル*さんっ!!!
っ!?
は、はい····
···普段からワタシが頼りないばかりに寂しい思いをさせてしまっていたッスね····、申し訳無かったッス
っっ!!!!
そんな事はありませんっ!!

廃炉さんがいてくれなければ私は一人でなんて生きられませんよ!!

っ!!
···········
イカタル*さん·····
···廃炉さんのせいとか、そんな事ではなくて···、久し振りに皆さんに会えて本当に嬉しかったと言うか―――――
····だから―――――

ほんの少し寂しかったんです····

··········
イカタル*さん、有難うございます!

私もまたお二人にお会いできて本当に嬉しかったです!

·····はい
···········
···一度、私の実家へ向かおうと思っています
え····っ
っっ!!!!
っ!!
先ずは···、いろはの不老不死を何とかしない事には共に死ぬことは叶いませんが―――――
その為には一度実家へ帰り、とある術を施さなければなりません 
·········
·········
もし、その術が上手く行くようならば、再び二人で旅をしながら鬼狩りをしたいと思っています
········
なので、その時はまた···必ず此処へ戻ってきます――――
っ!!!!
··········
その時も、お二人の仲睦まじい姿を拝見出来ることを期待しています
カイト·····
············
····フフ

勿論です!私と廃炉さんの愛が廃れることは一切ありませんから!

イカタル*さん····っ!!
········
····イカタル*さん、本当に有難うございました
········



イカタル*さんは黙ったまま首を横に振った―――――――



私はお二人に何もしてあげられていませんよ···。でも、いつもお二人の旅の無事を祈って待っています
····もし、何処かでホシ猫さんに会うときがありましたら、またお店に来て欲しいと伝えて下さい―――――
分かりました·····

必ず伝えますね――――――



そうして私とカイトは、「Caffe―ゑ來屡」を後にした―――――












               ―PM8時45分―


            《住宅街》

あ、あの····

カイト―――――

·····ん?
こんな時間から移動するって事はやっぱり鬼狩りをするんだよね?
····まぁ、そうだけど
·····一番の理由はそれじゃないんだよな〜
············
本当は分かってんじゃねぇの?
····え、えっと···



実は·····

お店を出てからカイトは、何故か街灯の少ない通りを選んで歩いているようだった··


鬼狩りが目的なのだから、勿論その方が鬼と出くわす確率は上がるため、最初は特に何とも思ってはいなかったのだが―――――


30分くらい歩いた頃、カイトは何故か然りげ無く私の手を握ったのである



···俺は修行僧だから女性と手を繋ぐ機会なんて中々得られないだろ?
······えっ



そ、それって逆に·····

女なら誰でもいいから手を繋ぐ機会を得たいと――――――

そう言う事?!



···あれ?

なんかちょっと蔑んだ目で俺を見てないか?

いや····別に····
夜は誰かに姿を見られることも殆どないし、暗いからナニをしていても良く見えないからな
·····まぁ、そうね
せっかく、こんなに可愛い女性と歩いてるのに手を繋がない理由はない
····なんか複雑だわ
·····なんて
····嘘だよ
っ?!
··········
もし···、離れて歩いていた所為で···いろはをまた誰かに連れ去られたりでもしたら―――――
····今度こそ俺は完全に鬼になり兼ねないからな
っっ!!!
でも立場上そんな行為を昼間からは出来ないから···歩くなら夜にしようと決めてたんだよ
·····うん
··········
···これから鬼狩りをするけど明け方になったら宿を取るから····
それまで我慢出来るか?
え···っ(我慢ってお風呂の事とかかな?)
夜型なのはいつもの事だから全然大丈夫だよ!
··よし

それじゃあ、もう少し移動してから始めるか――――――












            ―AM2時50分―


                  《街頭》

····ねぇカイト
···ん
今日はあまり鬼の気配がしないね
·····そうだな
鬼の数から考えるとこんな日は珍しいが····
··········
あ···、そう言えばカイトも旅をしながら鬼狩りをしていたの?
···あぁ、いや···

俺は復元された人間の方の担当だ

···えっ?
まぁ、先日いろはを襲ったクソ鬼のような輩は消滅させてやっているがな
そ、そう言う容赦無い部分は夜叉丸のままなのね···
···当然だ

いろはをつけ狙う奴は何であろうと許さねえ

っ!!!
あっ、でっでも私なら大丈夫だよ!?不老不死だし!モガさんだってついてるんだから!
············
モガさん····?
·····え



カイト····、何か怒ってる?

私なにかマズイこと言った?!



···モガさんとは何だ?
モッッ、モガさんはっ!!

コレっっ!!コレだよコレ!!!



なんか知らんけどめちゃくちゃ焦りながら私はモガさんをカイトの目の前に差し出した



←コレ
············
·····何だこのツルギは――――

見た目がダサいぞ

ムカッ
····どちらかと言うと、ファンタジー寄りのツルギだな
俺は刀のほうが好きなのだが
イッラァ〜ッ!!
ちょっ、ちょっとカイト!!

もうその辺でやめ―――――――



と、その時――――――


モガさんは急に動き出し、自分を握らせろとばかりにカイトの顔に剣(自分)を押し付けている



わわっ!
···何なんだいろは
その剣を俺の顔に押し付けるな
い、いや···っ、これはその〜···



仕方なさそうにカイトがモガさんを握った――――――


その時···




『おい貴様っっ!!!私を誰だと思っている?!このコワッパが!!!私の恐ろしさを教えてやろうか?!』
···········
············
↑柄を握っている者にしかモガさんの声は聞こえないが、何となくカイトが何を言われているのか想像がついている
···このツルギ――――

見た目の絵面もウルサイが頭の中に響く声もウルサイな····

『ぐぬぬぬっ!!!貴様ぁぁっ!!私を侮辱するつもりか!!』
····だったらなんだ
『人間如きがっっ、ぶっ殺してくれる!!!』
···········
···ったく、見た目のままに物騒な奴だ――――
か、カイト――――



私が言いかけた時――――――

モガさんは勢い良く、切っ先をカイトの喉仏へ向けた



ちょっ!!!

モガさんっ?!

···········



その風景は、はたから見たらまるで···剣を喉に当てて自害しようとしているようにしか見えない状況だ



ま、待って――――――
···いろは、大丈夫

問題ないから

っ?!



モガさんはその後、カイトの喉を本気で突こうとしているのが分かるくらいグイグイと押し込もうとしているのだが····


モガさんを握るカイトの腕は全く微動だにしていなかった


モガさんの動きの速さと強さに、私は振り回されるくらいだと言うのに···カイトって意外と腕力あるのかな?!



『ッック!!!こ、こいつ···!!』
···いや、失礼致しました。貴方を侮辱するつもりは無かったのです···付喪神のモガさん
『き、貴様にモガさん呼ばわりされる言われはないぞ!!愛称で読んで良いのはいろはだけだ!!』
···なるほど、承知致しました
では···申し訳無いのですが―――

今は少しだけお休みください

『は―――――』
唵(エン) 

薩皤囉罰曳(サーハラハーエイ)

············っ!
っ?!



カイトが呪文を唱えた瞬間――――

モガさんは急に力を無くしたかのように、切っ先をガクンっと地面に落としたのだった



おっと!



力を無くしたモガさんは、危うく切っ先を足元のコンクリートにぶつける所だった


寸前にカイトが優しく受け止めていなければ刃こぼれしていた事だろう


カイトはモガさんに傷が付いていないか確認をしたのち、私に返してくれた···



モガさん····

一体何が··

いろは···ごめん····

モガさんを少しだけ封印した

ええっ?!

(あのモガさんを?!)

話し合いが出来そうにも無かったからなぁ···
あのままだと何れ殺されてたし···
もう、カイトが言いたい放題言うからでしょ!
モガさんは誇り高き付喪神なんだからっ!!
最初から付喪神だと分かっていたら言わなかったよ···
っ!!!!
···········
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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