第143話「黒鉄の能力」
文字数 1,518文字
《春の闇》
―黒鉄＆レイVS冰鬼＆暁鬼―
····ﾊｧﾊｧ
くそっ！！視界が掠れる····っ
レイっ！！！
しっかりしろ！！
猫又ぁぁ〜っ！！！
よくもアヤツを逃したなぁ！！！
ぬっ？
····貴様はそんなナリでも女なのだろう？女らしくせぬからオーマ如きに逃げられるのだ
イラッ
貴様が逃したではないか！！！
お主らはキリがないのだ
そんな消耗戦にいつまでもオーマを戦わせておくわけには行かん
ほう、ならば貴様であればこの消耗戦に勝機があるとでも言うのか？
ふん、見くびるなよ鬼風情が。
勝機なんぞゴロゴロ転がっとるわ
ちょっとぉ！！冰鬼！！
遊んでないでさっさとその猫片付けなさいよ！！
なんだと···暁鬼！！
貴様、誰に向かって口を聞いている！
冰鬼(ひょうき)と暁鬼(ぎょうき)はお世辞にも仲の良い2鬼とは言えなかった
人の世も鬼の世も、女同士には複雑な嫉妬心や小競り合いが存在するのである
ﾊｧﾊｧ··、黒鉄···っ！
ぬ？
レイ、お主···目をやられたな
ああ、完全に油断した···
あの鬼女の持つ扇には五感を麻痺させる媚薬が含まれている
ったく！！世話がやける奴だな！！
付喪神の貴様が頼りないからだろ
ああっ？！！
テメッ！！猫又のくせに！！
それで、目以外は大丈夫なのか？
ああ··
少しクラクラするが問題ねぇ
ぅおいっ！！
こらっ！猫又っ！！！
ならば少しの間、わしの天眼通を貸してやる
っ！！！
天眼通だと？！
天眼通=六神通の内の一つ
お前らこの俺様を無視すんじゃねぇぞっ！！！
···エビ、1分間黙ってろ
何だか良く分からんが、あの2鬼がイガミ合ってる隙にわしの眼をお前に移す
っ！！！！
覚悟を決めて受け入れろ
くれぐれも酔うなよ？
あ、あぁ···！
そう言うと黒鉄はレイの膝の上に乗り、右手······肉球をレイの額にピトっと押し付けた
カッ！！！
「殖(ｼｮｸ)」！！！
こ、これは·····っ
···成る程
黒鉄最強説はこう言うことかよ
そんなに珍しいもんでもなかろう
何だ？！
どう見えてんだよレイ！
····見えるって言うか――――
黒鉄の視覚から直接脳に、近い未来の実態が流れ込んでくる
··········
全く意味が分かんねえぜ！！
その目は六神通の内の一つでな、今からまさに起きようとしている実態を見透す事が出来る心眼なのだ
わしがお主らの心を読めるのは、そこから来ている
···俺の少ない知識上、その六神通とは仏や明王が持つ特殊な超人的能力のはずだ――――
その力が何故、猫又の黒鉄に宿っているのか実に興味深いぜ
さぁな、それは神のみぞ知る所だ
っ！！
まぁ、取り敢えず使ってみろ。大量の情報が頭に入ってくるからいらん情報はシャットアウトするようにの
えぇっ？！
いや、無理だろ····
その時、いがみ合いに拍車がかかりイライラがMAXになった暁鬼が叫んだ
もういいわ！！！
アンタになんか任せていられない！！私が片付けてやる！！
フンッ！！！
貴様如き簡単に潰されて終いだ！
そこで大人しく見ていれば良い！！！
レイ！そろそろヒステリーの矛先が此方に向くぞ！
····分かってるよ
面倒くせぇ··
レイとエビが嫌な予感を感じていたその時、暁鬼はレイの方へと振り向いた
ふふ···っ、さあ――――
イケメンくんはもう五感が麻痺してい·····
···········
········
何っで普通なのっ？！
さっきまで倒れそうになっていたじゃないっ！！
···もう治った
っはぁ！！！！！？？
し、信じられないわ···！
鬼族ですら5日は感覚麻痺で起き上がれない程の毒薬なのに！！
···そんなもんバカ正直に吸い込む程俺は浅はかじゃねぇ
っ！！！
(こ、こいつ···本当に素敵！♡)
ｿﾞｯ
(心が読めてしまう事に良いことなんてねぇな···)
