第155話「番外編:廃炉の恋 終幕」
文字数 2,910文字
あ、あの····
申し訳ないのですが、お店はもう閉店でして·····
いや··、実は私も飲食店を経営しているのですが、先程店を閉めてきた所だったのでこんな時間になってしまいました
そうなんですね···
折角お越し下さったのに申し訳御座いません··
とても美しい貴方を一目でも拝見したかった、と言うのもこの場所へ来た理由の1つです
え、えっと·······
(なら··ここへ来た本当の理由は··)
っ!!!!
(ちょっ!イカタル*さんが困ってるッス!勘弁して欲しいッス!)
···で、俺が今ここに居るもう一つの理由だけど···
···は、廃炉さんは私の大切な常連様なんです···!
今廃炉と離れたら、もう二度と会えないような気がしていたイカタル*ちゃんは咄嗟にカルラの言葉を遮っていた
···ですから···
い、今は新しいお料理の試食をしてもらっていた所で····っ!
なので···、今連れて行かれると···その、困るっていうか···
イカタル*さん····
(ワタシの事を常連客だと思ってくれてるッスか!とても嬉しいッスが····)
···他にはいないのですか?試食する相手は――――
廃炉の舌なんて然程アテにならないと思うのですが····
そんな事はありません!!
私は廃炉さんに試食をしてもらいたいんです····!
····君は、こいつが何者なのか分かっていないからそんな事――――
すみません···、もう少しだけ···
もう少しだけで良いんです
お前がやる事全部やってたらこんな事にはなっていないだろうが!全ては自己責任だぞ廃炉!!
(····イカタル*さん···ヤヴァイッス!マジで好きッス····!!)
·····クッ
(やっぱりさっさと告っておけば良かった·······!!!!!)
(まさか告白の邪魔になるのがカルラ様だったとは·····!!)
カルラが人の世に滞在している今、鬼の世を束ねなければならないのは廃炉であったため、厳しい事を言わざるを得ないカルラなのであった···
イカタル*さん···、またすぐお邪魔させて頂くッス!
そうして、廃炉は鬼の世へ戻らなければならず、その後は中々人の世に行けないままに夜叉丸御一行が鬼の世へ殴り込みに来たのである
最後にイカタル*ちゃんと会ってから、現在に至るまで既に半年の月日が流れていた――――――
廃炉···、最近あまり会いに行っていないだろ?彼女は君が何処に住んでいるのかも知らないのだから···
彼女が君に会いたいと思ってもそれは絶対に叶わないんだ、そんなに期間をあけて大丈夫か?
(な、何てことだ····っ!恐れていた事が事実になって来ているッス!!)
·····グヌヌヌヌッッ
(イカタル*さん····!!!!本当は今直ぐにでも飛んで行きたいッス!!)
(し、しかし···、仲間たちを見捨ててワタシだけが抜ける事など出来る筈もない――――)
(これは···夜叉丸の意識が廃炉に向く前に廃炉をこの戦いから離脱させる必要があるぞ····)
(しかし、廃炉にその意思があるとは思えん·····)
何か····色んな意味で嫌な予感しかしない··ッス
廃炉の為を思う玄宥はとにかくタコ殴りがしたくて仕方がなかった
(気絶させてイカタル*ちゃんの元へ送り届けるため)
※しつこいようだが、素でタコ殴り=穏便だと思っているのである
夜叉丸と廃炉を対峙させた場合、玄宥が廃炉を庇う事が出来無いのも理由の一つであった
いらっしゃいませー!!
イカ焼き以外にも沢山のお料理を用意してありますよ〜っ!
あ···、い、いらっしゃいませ!!
いつも有難う御座います!
·········
(このお客さん···、苦手だな··)
今日は一段と美しいですね···イカタル*さん···
···今日こそは俺のお誘いに乗って頂きたいのですが――――
今度の週末、俺の愛車(35スカイラインGTR)で一緒に海へ行きませんか?
う、海は飽きるくらい行っておりますので···大丈夫···です··
でしたら、映画なんてどうですか?最近公開された映画で『僕のヒーローマカデミアナッツ』がめっちゃ面白そうなんですよー!あ!イカタル*さんヒーロー物とか見ますか?!もし見たことが無かっj@Dwm¢£%$
(もう···、このクソ忙しい時に聞いてられないわ·····!)
···今忙しいので、早く帰って下さいと言いました!
そうしてイカタル*ちゃんの危機はこれから先も暫く続きそうな状況なのであった――――――
···鬼の世なんて何処にあるんだろ
会いに行ったら迷惑だよね···
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