第188話「縊鬼(イキ)」
文字数 3,570文字
―AM3時15分―
《街頭》
でも····
前もそうだった―――――
私を奪い返す為に夜叉丸はカルラ様に殺されかけたんだ···
私は―――――不老不死だから死ぬことは無い····、傷付くのは死ぬほど痛いし辛いだけだから、そんな事には未だに全然慣れないけど··
それでもカイトが死ぬようなリスクを背負うくらいなら私が傷を負う方が断然マシだ
少し切なそうに返事をしてくれたカイトは、私の頭を軽く撫でながら優しく微笑んだ―――――
と、その時だった――――――
くくく········っっ
カイトは私の腕を掴み、建物の隙間に身を隠した―――――
あれっ?!
なんで隠れるの?!
鬼狩りをする為に此処にいるのに···
あの人は····
私が鬼から人へと復元させた内の一人だ―――――
しかもあれは···忘れもしない···!
私の腕を引き千切り、痛みに苦しんでいる私の目の前で引き千切った腕をガツガツと美味そうに喰らっていた最低な鬼···!
その後、ホシ猫さんが能力を発動して下さったおかげで何とか大人しくさせることが出来たけど····かなり厄介な奴だった――――――
だいぶ酒を飲んでいるであろう男は気分良さそうに千鳥足で歩いている··
誰もいないのを見計らっているのか、自身の行いをベラベラと喋っているようだ
男はフラフラしながら道端に座り込んだ―――――
まるで何かに手招きされているかの如く、睡魔に襲われているようだった
そして·····
男はあっという間に夢の彼方へと落ちて行った
そして、男の様子を伺っていた私はギョッとした―――――
月の光に照らされた男の影が揺らめいた時、その影の中から黒い女···?のようなモノが這い出ようとしていたのだ
最初は女の様な形をした黒っぽい影だったそれは、男の影から抜け出る頃にはハッキリと恐ろしい姿に変わっていた
すっかりと形を成した「縊鬼」は熟睡しているであろう男をジッと凝視した後、今度はズルズルと男の体の中に入って行ったのである―――――
男の中に「縊鬼」が入り、暫く経った頃だった
気持ちよさそうに熟睡していた筈の男の表情が徐々に変わっていく―――――
そう言ったカイトは私に向けて優しく微笑むと、また軽く頭を撫でた―――――――
もう···
カイトは絶対に天然タラシだ―――――
こうやって世の女性達をメロメロにして来たに違いない····
完全にメロメロになってる奴がここにいるのがその証拠だ···
でも···、カイトの本心はどうなんだろう···?
夜叉丸の思いがカイトの気持ちに影響させているだけなら···私のような170年も生きている実質オババになんて興味ないのが本来なのではないだろうか····?
私はオババなのに、若干20代後半?くらいの若者にドキドキさせられて···、実はこれって結構情けないのでは――――?!
そ、それが現職の僧侶が言う言葉か――――――