第172話「あの日の廃炉とイカタル*ちゃん④ーイカタル*ちゃんの秘密ー」

文字数 3,289文字







        《高架下前―公園》

····い、いや····っ

ちょっと待ってほしいッス――――

············
···ツッコミたい所が沢山あり過ぎて··、何から聞いたらいいのか頭の中を整理しないと――――
廃炉さん·····

申し訳ありませんでした

えっ?!いやっ!!!

何がッスか?!

·····わ、私は――――

廃炉さんの事を知っていて、あの日競馬場で声をかけたんです···

っ!!!!
それって、つ、つまり―――――
逆ナンッッッですよね?!
っっ!!!!!!
そ、それに····

私はまるでストーカーの様に15年もの間、廃炉さんに執着して来ました

·····気持ち悪い···ですね···
····イカタル*さん
······はぃ
先ずは、一番先に言っておきたい事があるッス――――
っ!!
先程のイカタル*さんのお話を聞いて、一つ思い出したことがあります
······っ!
····15年前のあの日――――、確かにワタシはこの世のモノとは思えない程の美しい人魚姫と出逢いました
え·····

(人魚姫··?)

その時は本当に人魚だと思っていたので、それ以上の事は何も考えようとはしませんでしたが···
あぁ···、そうか――――

···あの日――――

競馬場で貴方に出逢った時のトキメキはあの時と同じだったのか

········え?
····ワタシは既に、あの美しい海の中から上がってきた貴方の虜になっていたのかもしれません
っっっ!!!?
それに····
こんなに美しい貴方に15年間も想い続けて頂けていたなんて···信じられないくらい光栄です
····ほ、本当ですか···?
···勿論です
よ、良かった―――――
······っ
私···、廃炉さんに嫌われたらどうしようかと―――――
っっっ!!!!

いっイカタル*さん――――っ

···ご、ごめんなさい

こんな―――――

そんな思いをしてまでも本当の事を打ち明けてくださったのですか――――
···もう、これ以上黙っておく事は出来ませんでした
それに····、私も―――――
廃炉さんと同じように···人間ではないのです··
··········
···貴方は、15年前のあの日からまるで変わっていませんね――――、とても美しいままです····
っ!!
·····そうか

あの時、占いの館で言われた事は··こういう事だったのか――――

····占い、ですか···?
っっ!!!

いっ、いえっ!!なんでもありません!!

それより···

もう泣かないで下さい···



廃炉は、切なそうに涙を流すイカタル*ちゃんの頬にそっと触れ、優しく涙を拭った―――――



っっ!!!
·········

(お、お肌がめちゃくちゃスベスベッス·····!!)

す、すみません····

もう少しすれば落ち着くと――――

イカタル*さん―――――
····え
また···

貴方に触れても良いですか?

っ?!



そう言うと、廃炉はイカタル*ちゃんの返事を待つことなく、今度は切なく噛み締めるようにイカタル*ちゃんをきつく抱きしめたのだった―――――



っっ!!!!
は、廃炉さん――――――
(···もう、本っ当に大好き···!)
···イカタル*さん
···もう一つ聞いても良いですか?
っっ!!
は···はい··



廃炉はイカタル*ちゃんを抱き締めたまま、イカタル*ちゃんについて気になっている事を聞いてみることにした―――――



実は···今まで会ったことは無いのですが、深海に住む「クラーケン」の一族の話を聞いたことがあります
ギクッ
····そして、その一族の長はとてつもなく巨大であり、尚且つ最強と言われています
あるいは、海の守り神だと言う者達もいます···
··········
····イカタル*さんは、もしかして「クラーケン」一族の方ですか?
··········
わ、私は···ハーフです···
········ハーフ?
確かに父はクラーケン一族の長ですが、母は····人間です··
·····ええっ?!
なので···私のこの姿は、人型に化けているとかでは無いのですが―――
勿論、クラーケンに姿を変えることも出来ます·····
なんと·····っ!!!

(ちょっと見てみたい···!!)

因みに···私の毛先や瞳の碧色は、激怒すると真赤になる習性があります
っっ!!!!

(い、一度でいいから見てみたい!)

で、でもそこまで激怒する事は今までもありませんでしたから···無いとおもいますが―――
なるほど―――――
···やはり··そうでしたか―――
では···、イカタル*さんのお母様は陸で暮らしておいでですか?
っ!!!
廃炉さん···
····はい
以前、私···

廃炉さんに年齢を聞かれて、適当に23歳ですとか言いましたが···

··········
ほ、本当は···176歳なんです···
っ!!!
····そうでしたか

そうなると···イカタル*さんのお母様は―――――

·········
人の寿命は本当に短いものです···
····それでも母は死に際···

父に見守られながら幸せそうに旅立たれました

っっ!!
父と母は共に暮らすことは出来ませんでしたが、生前はいつまでも美しい母を、父は本当に大好きで··いつも会いに行っていたんですよ
····そのお気持ちはよく分かります
っ!!
·····母は歳を取りますが、父はそんな事は気にしていませんでした
····なるほど、それが本物の愛··と言う事なのですね
····はぃ
父の本来の姿はクラーケンなので、陸に上がる時は人の姿に成ります
父が···人型になる時は、母の年齢に合わせていました···
っっ!!!

なんと···素敵な方ですね

···まぁ、最初に惚れたのは父の方だったので母に対してそれくらいの気遣いはして当然かと思います
···········
······そう言う生き方もあったのか
············
····廃炉さん
は、はい
私にはクラーケンの血が色濃く通っています····
しかし、ハーフには変わりないので私の寿命が何年なのかは分からないんです······
っ!!!!
今のところ、ある一定の年齢で止まっていますが、もしかしたら少しづつ老いて行くかもしれません
··········
···それでも私と一緒にいて下さいますか?
····勿論です
···今のワタシの気持ちは、どの様な状況になったとしても必ず切り拓き、貴方と共に生きていきたい――――
そう···思っています――――
っっ!!!!
あ···有難う御座います――――
っ!!!

あぁっ また――――



廃炉の固く決意した言葉に、またしても涙が出てしまったイカタル*ちゃんは、再び廃炉の腰に抱き付くとそのまま静かに泣き続けた―――――



イカタル*さん·····










       《高架下前―公園》

·····イカタルさん、大丈夫ですか?
は、はい····

何度もごめんなさい···

それは全然構いませんが····

もう、時間も時間です···遅くなってしまうのではと―――――

·········

あ、あの····

····はい、どうしました?

···えっと

も、もし良かったら···

···わ、私のお部屋へ来ませんか?
············
···ッッエッッ?!
い、イヤっっっしかしっ、女性の一人暮らしのお部屋へっ、あっ、上がっり込むのはっっ
↑煩悩を抑える自信がない
っっ!!?
···や、やだ廃炉さん

そう言う意味ではなくて·····

····え゛?!
···だって廃炉さん、もう帰る所が無くなってしまったのでしょう?
っっっ!!!
私の住むアパートには、お部屋が2つあるんです

な、なるほど··

それは···とても助かります
·············
そ、それに····

私は···別に、いいですし―――ね

···········
え゛っっっ?!

(何が?!)

·········
···········



···顔を真赤にした二人の沈黙が暫く続いたのち····

恥ずかしそうにイカタル*ちゃんが廃炉の手を取り、二人で一緒にアパートへ帰って行くのであった――――







※イカタル*ちゃん、176歳

※廃炉、1100歳(相当サバ読んでいる)

の、年の差カップルここに誕生。


いつまで経っても純粋な性格は変わらないようだ―――――






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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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