第172話「あの日の廃炉とイカタル*ちゃん④ーイカタル*ちゃんの秘密ー」
文字数 3,289文字
····い、いや····っ
ちょっと待ってほしいッス――――
···ツッコミたい所が沢山あり過ぎて··、何から聞いたらいいのか頭の中を整理しないと――――
·····わ、私は――――
廃炉さんの事を知っていて、あの日競馬場で声をかけたんです···
そ、それに····
私はまるでストーカーの様に15年もの間、廃炉さんに執着して来ました
先ずは、一番先に言っておきたい事があるッス――――
先程のイカタル*さんのお話を聞いて、一つ思い出したことがあります
····15年前のあの日――――、確かにワタシはこの世のモノとは思えない程の美しい人魚姫と出逢いました
その時は本当に人魚だと思っていたので、それ以上の事は何も考えようとはしませんでしたが···
···あの日――――
競馬場で貴方に出逢った時のトキメキはあの時と同じだったのか
····ワタシは既に、あの美しい海の中から上がってきた貴方の虜になっていたのかもしれません
こんなに美しい貴方に15年間も想い続けて頂けていたなんて···信じられないくらい光栄です
私···、廃炉さんに嫌われたらどうしようかと―――――
そんな思いをしてまでも本当の事を打ち明けてくださったのですか――――
···もう、これ以上黙っておく事は出来ませんでした
···貴方は、15年前のあの日からまるで変わっていませんね――――、とても美しいままです····
·····そうか
あの時、占いの館で言われた事は··こういう事だったのか――――
廃炉は、切なそうに涙を流すイカタル*ちゃんの頬にそっと触れ、優しく涙を拭った―――――
·········
(お、お肌がめちゃくちゃスベスベッス·····!!)
す、すみません····
もう少しすれば落ち着くと――――
そう言うと、廃炉はイカタル*ちゃんの返事を待つことなく、今度は切なく噛み締めるようにイカタル*ちゃんをきつく抱きしめたのだった―――――
廃炉はイカタル*ちゃんを抱き締めたまま、イカタル*ちゃんについて気になっている事を聞いてみることにした―――――
実は···今まで会ったことは無いのですが、深海に住む「クラーケン」の一族の話を聞いたことがあります
····そして、その一族の長はとてつもなく巨大であり、尚且つ最強と言われています
····イカタル*さんは、もしかして「クラーケン」一族の方ですか?
確かに父はクラーケン一族の長ですが、母は····人間です··
なので···私のこの姿は、人型に化けているとかでは無いのですが―――
勿論、クラーケンに姿を変えることも出来ます·····
なんと·····っ!!!
(ちょっと見てみたい···!!)
因みに···私の毛先や瞳の碧色は、激怒すると真赤になる習性があります
で、でもそこまで激怒する事は今までもありませんでしたから···無いとおもいますが―――
では···、イカタル*さんのお母様は陸で暮らしておいでですか?
以前、私···
廃炉さんに年齢を聞かれて、適当に23歳ですとか言いましたが···
そうなると···イカタル*さんのお母様は―――――
····それでも母は死に際···
父に見守られながら幸せそうに旅立たれました
父と母は共に暮らすことは出来ませんでしたが、生前はいつまでも美しい母を、父は本当に大好きで··いつも会いに行っていたんですよ
·····母は歳を取りますが、父はそんな事は気にしていませんでした
····なるほど、それが本物の愛··と言う事なのですね
父の本来の姿はクラーケンなので、陸に上がる時は人の姿に成ります
父が···人型になる時は、母の年齢に合わせていました···
···まぁ、最初に惚れたのは父の方だったので母に対してそれくらいの気遣いはして当然かと思います
しかし、ハーフには変わりないので私の寿命が何年なのかは分からないんです······
今のところ、ある一定の年齢で止まっていますが、もしかしたら少しづつ老いて行くかもしれません
···今のワタシの気持ちは、どの様な状況になったとしても必ず切り拓き、貴方と共に生きていきたい――――
廃炉の固く決意した言葉に、またしても涙が出てしまったイカタル*ちゃんは、再び廃炉の腰に抱き付くとそのまま静かに泣き続けた―――――
それは全然構いませんが····
もう、時間も時間です···遅くなってしまうのではと―――――
い、イヤっっっしかしっ、女性の一人暮らしのお部屋へっ、あっ、上がっり込むのはっっ
···や、やだ廃炉さん
そう言う意味ではなくて·····
···だって廃炉さん、もう帰る所が無くなってしまったのでしょう?
そ、それに····
私は···別に、いいですし―――ね
···顔を真赤にした二人の沈黙が暫く続いたのち····
恥ずかしそうにイカタル*ちゃんが廃炉の手を取り、二人で一緒にアパートへ帰って行くのであった――――
※イカタル*ちゃん、176歳
※廃炉、1100歳(相当サバ読んでいる)
の、年の差カップルここに誕生。
いつまで経っても純粋な性格は変わらないようだ―――――
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