第173話「真那の思うところ」
文字数 2,739文字
しかしそれは神話のようなものでしたから、まさかそんな神聖な方とお会い出来るなんて信じられません!
しっ、神話だなんて!!
そんな大層なモンじゃないんですよ?
あのタマネギさんがこんなにベタ惚れするなんて、イカタル*さんって本当に素敵な方なんだなって心底思った···
タマネギさんって、普段はヘラヘラしているようだけど本来はとても真面目で、カルラ様一筋だったし、仲間思いで他の鬼達からも慕われていただけに――――
もう気にしなくて良いんです。
これは、私が選んだ道なので!
それにタマネギさんは何も悪くないじゃないですか!謝られる筋合いはないですよ!
その通りなのです!過ぎた事はもう忘れて、それよりももっと気になることがあるんですが!
それは、廃炉さんと一緒に暮らすようになってからも暫くは私がいつものように一人で屋台で働いていたんですが····
フフッ
私はそれでも良かったんですが、廃炉さんがどうしても働きたいと仰るもので―――――
そっ、そりゃそうッス!!!
むしろワタシがイカタル*さんを養って行きたいにキマってるッス!!
でも、屋台の厨房は狭くて二人だと····その····
み、密着しちゃうので··毎日それだとサスガに心臓に悪いなって··思って
廃炉さんあなた、少しイカタル*さんから離れて他の企業に面接に行ったら良かったのでは?
ワタシにはイカタル*さんをお守りする義務があるッス!!!
···確かにイカタル*さんはとても神聖で女神のような方ですから、ありとあらゆる男共に狙われる事でしょう
しかしっ!!!
イカタル*さんにも一人で自由になる時間は必要なのです!!
そんっなに毎日ベタベタしているとイカタル*さんに嫌がられてしまいますよ?!それでも良いのです?!
····い、イカタル*さん
もしかして鬱陶しかったッスか··?
真那さんも、あまりタマネギさんをいじめないであげて下さいね!
私は、いつも廃炉さんと一緒にいられて嬉しいですよ!
···だって、やっと――――
私の長かった思いが叶ったんですから··
···それに、お二人のお陰でカルラ様のお店も守れていますしね
···なるほど、そうでしたか
このCafeはあの方の―――――
あれ···、でも看板はCLOSEになっている筈ッスが――――
ガラ――――――ッッ
その時、勢い良く唐戸が開けられ――
入ってきた人物は···
···何故か伊吹さんは息を切らして焦ったように真那さんの元へ来たようだった···
い、伊吹くん·····
どうしてここに··?櫻井家に行ったはずでは――――
真那がいろはちゃんと鬼狩りに行くかもしれないって···、黒鉄から連絡が来たんだよ―――――
な、なぜ黒鉄さんがそんな事を知っているですか···?
覗き見をするとは····、後で文句を言わなければなりませんね
····もとより、伊吹くんに許しを請うつもりはありません
これは玄宥様の意思であり、私の意思でもあります――――
っ!
····玄宥様はお前に鬼狩りをしろと言いたかったわけじゃないぞ!
確かに私は伊吹家にも櫻井家にも全く関係のない人間です
····真那――――
そう言う意味で言っている訳じゃない
·····家族でもない私のことなど放っておいて欲しいです
いろはさん、もう帰りましょう。
イカタル*さんと廃炉さんにもご迷惑をおかけしてしまいますから····
···えっ?!
真那さん···そんなの――――ダ··
イカタル*さん、廃炉さん、今日はとても楽しかったです。お会計はレジの所に置いておきましたがお釣りは必要ありませんので――――
そう言うと、真那さんは一人でお店から出て行ってしまった····
真那さんと伊吹さんの間には何か事情があるのかもしれない···、いつも優しい真那さんがあんな態度を取るなんて正直信じられなかったから――――
でも、結果的に私の事が原因でお二人が仲違いしてしまった事には申し訳無さしか残らなかった··
わっ、私も帰りますっ!!!
また改めて来ますので〜っ!!
···あ、えっと····
お騒がせしてスミマセンでした
····いえ、コチラこそ―――
今日はとても楽しい時間を有難う御座いましたと··お伝え下さいね
何も知らない私がこのような事を言うのは野暮かもしれませんが····
マナさん···、どこか寂しげでした。お二人は恋人どうしなのでしょう?····もう少し彼女の事を真剣に考えてあげても良いのではないでしょうか
っ!!!!
(イカタル*さんはやはり女神のような方だ――――!)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)