第173話「真那の思うところ」

文字数 2,739文字






      《古民家Cafe―ゑ來屡》

ふぁぁ~っ!!

何て素敵な馴れ初め!!

····す、スミマセン、こんな話··
成る程なるほど、フムフム
クラーケン一族のお話は伺った事があるです
っ!!!
っ!!!
しかしそれは神話のようなものでしたから、まさかそんな神聖な方とお会い出来るなんて信じられません!
しっ、神話だなんて!!

そんな大層なモンじゃないんですよ?

確かにイカタル*さんは神聖すぎて眩しいッス···
·········



あのタマネギさんがこんなにベタ惚れするなんて、イカタル*さんって本当に素敵な方なんだなって心底思った···


タマネギさんって、普段はヘラヘラしているようだけど本来はとても真面目で、カルラ様一筋だったし、仲間思いで他の鬼達からも慕われていただけに――――



····本当に良かった――――
っ!!!
·····い、いろはさん、ワタシは―――
··········
貴方に謝らなければ·····
タマネギさん
っ!!
もう気にしなくて良いんです。

これは、私が選んだ道なので!

っ!!!
それにタマネギさんは何も悪くないじゃないですか!謝られる筋合いはないですよ!
···········
その通りなのです!過ぎた事はもう忘れて、それよりももっと気になることがあるんですが!
な、なんッスか?!
お二人がこのお店で働く事になった経緯ですよ!
そ、それは―――――っ
それは、廃炉さんと一緒に暮らすようになってからも暫くは私がいつものように一人で屋台で働いていたんですが····
··········
え、それってつまり····
ヒモ····ですね?!
ガーーーーーン!!!
フフッ

私はそれでも良かったんですが、廃炉さんがどうしても働きたいと仰るもので―――――

そっ、そりゃそうッス!!!

むしろワタシがイカタル*さんを養って行きたいにキマってるッス!!

やっぱり根は真面目なんですよね
っ!!!?
でも、屋台の厨房は狭くて二人だと····その····
っ?!
み、密着しちゃうので··毎日それだとサスガに心臓に悪いなって··思って
っっっ!!!!!
廃炉さんあなた、少しイカタル*さんから離れて他の企業に面接に行ったら良かったのでは?

っ?!

(真那さん辛辣です〜っ!)
っっ!!?

そっ、そんな事は出来ないッス!!!

ワタシにはイカタル*さんをお守りする義務があるッス!!!
···確かにイカタル*さんはとても神聖で女神のような方ですから、ありとあらゆる男共に狙われる事でしょう
しかしっ!!!

イカタル*さんにも一人で自由になる時間は必要なのです!!

そんっなに毎日ベタベタしているとイカタル*さんに嫌がられてしまいますよ?!それでも良いのです?!
えっ?!
ガーーーーーン!!!!!!
···········
·····シュン
·····廃炉さん
····い、イカタル*さん

もしかして鬱陶しかったッスか··?

···············
いいえ···
っっっ!!!!!

(い、今の間は何だっっ?!)

まぁまぁ、皆さん落ち着いて下さい
真那さんも、あまりタマネギさんをいじめないであげて下さいね!
ふふ、そうですねぇ
私は、いつも廃炉さんと一緒にいられて嬉しいですよ!
いっ、イカタル*さん〜っ!
···だって、やっと――――

私の長かった思いが叶ったんですから··

···········
···それに、お二人のお陰でカルラ様のお店も守れていますしね
っ!!!
···なるほど、そうでしたか

このCafeはあの方の―――――



真那が納得したように言葉を発したその時―――――



カランカランッッ
あら···

お客様でしょうか···?

あれ···、でも看板はCLOSEになっている筈ッスが――――



ガラ――――――ッッ






その時、勢い良く唐戸が開けられ――

入ってきた人物は···








真那っっ!!!!
·····え
っ!!!!

(い、伊吹さん?!)

はぁはぁ····ッ



···何故か伊吹さんは息を切らして焦ったように真那さんの元へ来たようだった···



い、伊吹くん·····

どうしてここに··?櫻井家に行ったはずでは――――

···········
·····速攻で帰ってきた
何故···です?

真那がいろはちゃんと鬼狩りに行くかもしれないって···、黒鉄から連絡が来たんだよ―――――

え゛っ
な、なぜ黒鉄さんがそんな事を知っているですか···?
····あいつの眼を侮るな
············
覗き見をするとは····、後で文句を言わなければなりませんね
·····真那、俺は許さないよ?
········
··········
····もとより、伊吹くんに許しを請うつもりはありません
····!
これは玄宥様の意思であり、私の意思でもあります――――
それに――――――
っ!

····玄宥様はお前に鬼狩りをしろと言いたかったわけじゃないぞ!

·········

何ですかそれ··

確かに私は伊吹家にも櫻井家にも全く関係のない人間です
っっ!!!
····真那――――

そう言う意味で言っている訳じゃない

·········
·····家族でもない私のことなど放っておいて欲しいです
っ!!!!
いろはさん、もう帰りましょう。

イカタル*さんと廃炉さんにもご迷惑をおかけしてしまいますから····

···えっ?!

真那さん···そんなの――――ダ··

イカタル*さん、廃炉さん、今日はとても楽しかったです。お会計はレジの所に置いておきましたがお釣りは必要ありませんので――――
っ!!!

マナさん――――っ

オロオロ



そう言うと、真那さんは一人でお店から出て行ってしまった····


真那さんと伊吹さんの間には何か事情があるのかもしれない···、いつも優しい真那さんがあんな態度を取るなんて正直信じられなかったから――――


でも、結果的に私の事が原因でお二人が仲違いしてしまった事には申し訳無さしか残らなかった··



っ!!!

真那っ!!

わっ、私も帰りますっ!!!

また改めて来ますので〜っ!!

いつでもお待ちしているッス!!
··········
············
···あ、えっと····

お騒がせしてスミマセンでした

真那がお世話になっています
····いえ、コチラこそ―――

今日はとても楽しい時間を有難う御座いましたと··お伝え下さいね

··········はい
····アンタは確か、陰陽師の――――
ええ···
廃炉さん、お元気そうで良かったです
····あの
は、はい····
何も知らない私がこのような事を言うのは野暮かもしれませんが····
マナさん···、どこか寂しげでした。お二人は恋人どうしなのでしょう?····もう少し彼女の事を真剣に考えてあげても良いのではないでしょうか
っ!!!
っ!!!!

(イカタル*さんはやはり女神のような方だ――――!)

············

はい··

そう···ですね···
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色