第26話「掴み所の無い客」
文字数 1,501文字
－PM8時40分－
《祓い屋·十全浄霊－事務所》
ピーンポーン
···来たかな
ここの事務所は家と繋がっているが
専用の玄関を儲けているため、直接事務所に招き入れられる様になっている
ガチャ―――···
はい、いらっしゃいませ
····あ、えっと～
北条ですがぁ··
はい、お待ちしておりました。
どうぞ中へお入り下さい
はい～··
(男だったのか···)
お邪魔しまぁす··
··········
わぁ···、面白い事務所ですね
そうですか？
自分の趣味丸出しでして···
·············
···何をお飲みになりますか？
こちらのメニューからお選び下さい
·········ﾁﾗｯ
わ··、
お姉さん良く見たら美人ですねぇ
····え？
(良くみたら··？)
··········
そ、そうですか？
はい～、色も白くて着物が良く似合っていますよ··。腕も指も細くてキャシャな感じがたまりません
っ？！
え、えっと··、お飲み物は····
それじゃぁ···、アイスコーヒーで。
···かしこまりました。
····さて、それでは
早速お話を伺っても宜しいですか？
はい～···
ｶﾗｶﾗﾝ――··
····と、まぁ中学からの事なんで慣れてるっちゃあ慣れてるんですけどね～··、今回はそれはもう酷くうるさくて··
············
なるほど···、因みに
お住まいはご実家ですか？
いえ～··、俺は独り暮らしなのでアパートに住んでいるんです～
では、そのお住まいのどの辺からウメキ声がするのか分かりますか？
声は色んな場所から聞こえるんですよ···。クローゼットだったり、風呂場だったり冷蔵庫だったり···
··········
···冷蔵庫？
はい～··、って言っても夜中で俺は寝てますから正しくは冷蔵庫の辺りって事になりますけどぉ
····そうですか
ウメキ声の他には何か聞き取れるような声はしませんでしたか？
そうですねぇ、助けて··とか狭い、暗い、痛い、返せ···等々～、聞こえます～
返せ···ですか
きっと何か取られたんでしょうねぇ
······北条さん
はい～··
えっと···、こんな事言うのは大変失礼なんですが··
なんでしょう···
本当に困っていますか？
····何だか、あまり切羽詰まっているようには見えなくて··
あぁ··、すみません
俺って、普段からこうなんですよ··
周りや人の事にはあまり興味も沸かなくて··、でも寝るとき位は静かに寝たいものでしょう？
まぁ···、それはそうですね
··········
取り敢えず分かりました。
後日、ご自宅のアパートへお伺いしますので、その時に調査してみましょう
それはとても助かります～···
では、こちらの約定書にサインをお願いします。
あ···、そうだ
····どうかしましたか？
もし良かったら、そちらのお姉さんも一緒に来てもらえると俺、嬉しいんですけど
っ？！
·········
···北条さんに恋人はおられないのですか？
あ～··、俺って常にこんなですからねぇよくフラれるんですよ··
なるほど··
それでは一緒に連れて行きますので
っ！やった！
それじゃあ宜しくお願いします～
ガチャ―――― ﾊﾟﾀﾝ―··
そうして、彼は帰って行った···
············
···どういうつもりです？伊吹くん
···ん？
あぁ、一緒に連れてくって話？
そうです
ま、別にいんじゃね？
そもそも連れてくつもりだったし
····私は口寄せなどしませんよ？
···なんで？
嫌な予感しかしないからです。
···て言うか、そんな部屋行きたくないです
まぁそう言うなよ。
彼は真那の事、相当気に入ったみたいだし
だから余計に嫌なんですよ！
満更でもないくせに～
ｲｯﾗｧ～～ｯ！！
