第96話「四年後」

文字数 1,252文字








         ー四年後ー


        《町外れの家》




あれから四年の月日が経っていた。

夜叉丸が再びこの町へ来ていたのには理由があった。


とある村で鬼狩りをするために夜の徘徊をしていた時のことである。





ヒソヒソヒソ―――
なんと!本当かそれは?!
ヒヒヒ――、本当だとも



村の家屋の影で百鬼と呼ばれる人外がヒソヒソと話をしていた。




···あぁ?何だ?



その時なぜか夜叉丸は、百鬼の話す内容が気になって仕方がなかった




ヒヒヒ――、絶滅したはずの妖猫、仙狸(せんり)の生き残りがおったそうな――
(仙狸だと···?)
あの一族はあらゆる生命体から精気を吸収しながら生きとる事で忌み嫌われておったな
そうじゃ。

精気を吸われたモノは何者であってもジワジワと干からびて死に至る

恐ろしや恐ろしや

まるで疫病のような一族じゃのう

それ故に一族全て絶滅させられたと聞いておったのじゃ
と、なると――

絶滅寸前に赤子が何処かへ匿われた事になるのう

ヒヒヒ―――

中々やるのぅ仙狸ものぅ―――··

(仙狸···、まさか····、あいつじゃねえよな?!)
(もしあいつがそうなら、犠牲になるのは······っ)




嫌な予感がした夜叉丸は、こんな予感は宛が外れれば良いと願いながらホシ猫とジジイが住む場所へと急いだ












        《町外れの家》

····ホシ猫!




夜叉丸は、町外れの家に近付いた時にその違和感を感じていた。




まるで人気がない···


あんなにキレイにしていた畑は荒れ果て、薪割りの斧は切り株に突き刺さったまま暫く使われていないようだった。



大根や魚を干していたであろう場所には縄だけが寂しく風に揺れている





·········




夜叉丸は家の裏側に回ってみた。


家の裏には何かが土に埋められたような、墓のようなものがひっそりと佇んでいる





ホシ猫····っ




夜叉丸は急いで家の扉を開けた。


その扉は既に建付けが悪く夜叉丸が勢いよく開けたせいで外れてしまった。




家の中も当然蜘蛛の巣だらけの廃墟のようになっている。


見覚えのある囲炉裏も板場の上もホコリと土まみれだった。




そして、そのホコリだらけの板場の上にはボロボロの状態のホシ猫が横たわっていた···





ホシ猫っっっ!!!!
·············
おい!!まだ生きてんだろ?!

しっかりしろよ!!

············

·····う、うぅ·····

いま川から水を汲んできてやるから!

少し我慢しとけ!!

···や、夜叉丸····?
ああ!!俺だ!!

それ以上喋るなよ!?

····や、しゃまる···

いいんだ···、放って置いてくれ···

はあっ?!

ほっとけるかっつーの!!

··ホシ猫が悪いんだ
っ!!!
ホシ猫は···、自分が何者かも知らずに···ジジイを死に追いやった··
·········
····ジジイ··
···ジジイは····、ホシ猫の正体を知っていたんだ··· そ、それでも···ホシ猫を家族だと····
ホシ猫、もういい
···知らない事は···罪なんだね···
·····っ!!!
もう···黙れ····っ
黙ってろよ···っ!
·············
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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