第166話「瑞禪寺」
文字数 2,871文字
····おお
ここがゲンユー縁の地、瑞禪寺(ずいぜんじ)か
仕事、結構溜まってたんだけど···
父さんのことも心配だったし、まぁいいか···
夜叉丸が輪廻転生してから一ヶ月が過ぎた頃、レイは櫻井家本家の長男として生まれた実家の瑞禪寺(ずいぜんじ)に、ホシ猫を案内する為にオーマを引き連れて帰省していた―――――――
まぁ、親父が留守にしているっつーから来たようなもんだけどな
いや····、仲が悪いわけじゃないんだけど、顔を合わせると色々と面倒なんだよ
それな!
ヤレ恋人作れだの、ヤレ結婚まだかだの、子供は男の子がどうとか―――――――
え?
何でホシ猫さんがレイさん如きの恋愛事情を気にするんですか?
···まぁ、取り敢えず本堂に向かいましょう。父さんと母さんのコトも気になりますし····
····父さんの体調がずっと良くなくて、半年前から瑞禪寺に母さんと二人で帰省しているんだけど····
ホシ猫、逢馬の父親のアスマ叔父さんは、若い頃に百鬼から受けた烙印のせいで相当ヒドい目に合ってきた特殊な苦労人でな···
とある人物と百鬼との間の契約によって生贄にされた経緯があるんだ
···ふむ、何者か(人)が自らの願いを叶える為に百鬼と契約交渉する話は昔ではよくある事だったけど――――
その為には人もまた····
等価交換と言う名の犠牲を差し出さなければならないね
·········
その百鬼に契約を持ちかけた人間はアスマにとってどんな人物なのかな?
···それは
――――父さんの父さん···、つまり俺の祖父って事になるそうだよ
ま、まぁ〜··でも今回の体調不良に烙印は関係なさそうだから、あまり心配もしていないんだけどね
····一応、気晴らしにと思って、今回の帰省にも誘ったんだけど···
暫くは陵さんの店を手伝いたいって言っていたから···大丈夫だとは思う
そう話をしながらレイ達が参道の長い階段を登っていた時、ようやく本堂が見えてきた
その本堂の門前には誰か女性らしき人物が立っている――――
それは····
····やあ、ホシ猫がホシ猫だよ
成る程、確かに君もゲンユーと同じ空気を纏っているようだね
···あら、アスマさんならすぐそこにいるじゃないの
····しかしどう見ても周りにはオーマ達以外の誰もいない
そう思った時、眼前の空間がモヤモヤと揺れている事にオーマはようやく気付いたのである
っ! これは····、始めまして!
···今は少しだけ体調が優れないので櫻井家で療養しているんです
体調不良の原因がイマイチ掴めないのですが、百鬼である可能性と呪術である可能性を考えて結界でお守りしているんですよ
まぁ···つもる話もあるとは思うけど、取り敢えずはちゃんと紹介させて貰っても良いですか?俺の家族を――――
では改めまして、ホシ猫とモウします。オーマの父と母、以後宜しく
ちょ、ちょっとレイさん!!ホシ猫さんが家族ってどう言う意味ですか?!
まさか、人との恋愛を諦めてあろうことかホシ猫さんに手を―――――
おい!逢馬!!
人聞きの悪いこと言ってんじゃねえぞ!
今お茶を淹れますから好きな所に座って待っていて下さいね
と、レイが言いかけた時、突如障子がガラッと開き―――――
コラッ!レイ!
アンタ自分の家なんだからアンタも手伝いなさい!
まぁ〜、可愛らしい猫さんだこと!レイがお世話になっていますっ
ふーむ、サスガは櫻井家だよね。誰もホシ猫に驚かないし警戒しない
···今日はホシ猫ちゃんを紹介する為にわざわざ遠い所を来てくれたのか?
はい。俺が植物状態で入院していた頃に出逢った大切な家族ですから―――
レイは、ホシ猫の命の恩人でホシ猫の大切なジジイなんだ
もはやワケワカランので後でちゃんと説明して下さいレイさん···
久々に集まった親戚一同が、談笑を交わしながら話に花が咲いた頃···
ホシ猫はオーマの父である遊馬(アスマ)の事を気にかけていた――――
アスマ、君の体調不良についてなのだけれどもね···
···君達、櫻井家はもう少しだけ現実を見たほうが良いと思うんだ
···先ずは一つ言わせてもらえるなれば、百鬼とか呪術とか···そんな非現実的なモノにばかり囚われすぎていると言う事だよ
で、ですが····、ちゃんと病院には行って検査もして貰ったんです
それは新種のウイルスでまだ世に出ていないからであって、殆ど風邪の症状だと思うよ
そんな事よりも、ホシ猫はアスマに聞きたいことがあるんだ
君は―――――――
不老不死の研究をしていた一族の末裔だよね?
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