第146話「咫尺天涯(しせきてんがい)」
文字数 2,131文字
《春の闇》
玄宥に想い人の話をされてから廃炉は相当焦っていた――――
鬼族を裏切ることは出来ないが、今すぐにでも彼女の元へ駆け付けたい気持ちは増すばかりである
陰陽師とは本来占いが得意な分野である事を廃炉は知っているが故に信じざるを得なかったのだ
そうして暫くの間、廃炉の眼帝降(メテオ)は隕石を降らせ続けた――――が、玄宥を囲う騰蛇は平気そうに毛づくろいならぬ、羽づくろいをしている様子だった
召喚される十二天将の能力は、召喚師の霊力に影響されるため玄宥(仏)程の力の持ち主が召喚した場合、十二天将の能力も遥かに上昇するのである
オーマが廃炉と玄宥の戦いに気を取られているその時だった―――――
氷月は裸足のまま夜叉丸目掛けて飛び掛かり、父の形見でもある名刀「鬼丸」を振りかざした
その瞬間、夜叉丸は氷月との間合いをはかっていた
氷月が刀を振り下ろしたタイミングを見計らい、一歩後ろへ引いて氷月の攻撃をかわし、大勢を崩した氷月の首の後ろを掴むと勢いそのままに地面に押し付けたのだった
氷月は地面に突っ伏したまま夜叉丸に首根っこを押さえ付けられているが、ジタバタと抗おうと暴れていた
そうして、氷月はオーマの「張網防魔結界秘法」によって捕縛されたのだった