第153話「番外編∶想定外」

文字数 1,892文字






       《高架下―屋台村》

今日は――――――
か、か、覚悟を決めて来たッス!!
し、しかし·····
来る時間帯を間違えたッス····


この屋台村―――――

実は先日、TV番組で特集をされた事で信じられない程の混み具合となっていた


それもなんと、「美人店主」としてメインで撮影されたのがまさかのイカタル*ちゃんだったのである


其れにより「イカ焼きタルタル*」の屋台の混み具合ときたら尋常ではなく、廃炉如きがアッサリ会えるような人物ではもはや無くなっていた



こんな行列タイムに行っても、ただただ迷惑なだけッス····
·········

で、でも―――――

出来るだけ早く伝えなければことごとく邪魔が入りますよ――――――
······ック!!
や、やっぱり行くッス!!!
チラッと覗くだけでも······

廃炉の覚悟なんざその程度である


っっっ!!!!

いちいちうるさいッス!!


一応覚悟を決めた廃炉は、屋台村の入口からイカタル*ちゃんが経営する「イカ焼きタルタル*」の暖簾を目指し進んでいった


その間も、この狭いガード下にギッシリと密集する人集りの凄さは言うまでもない



屋台が連なっているこのガード下は、一軒一軒が建物で囲われていないリアカー経営が多く、飲み食いするカウンターは暖簾の下で外になっていた



ゼェゼェ――――

ホンットに凄い混み具合いッス···!


と、その時――――


見たことのある可愛らしい暖簾が目に入った



っっ!!!

や、やっと見えた――――!

いらっしゃいませー!

お好きな席にどうぞ!

っっ!!


と、その時――――

元気いっぱいの聞き慣れた可愛らしい声が廃炉の耳まで届いてきた



っ!!!

イ、イカタル*さん····!何とも可愛い声ッスか!!!


人集りの一番奥側でイカタル*ちゃんの姿を見つけた廃炉は、もはやそれだけでトキメく乙女と化していた―――――



いらっしゃま――――――
っっ!!!!
えっ?!
は、廃炉さんっ!!
ドッキ―――――ン!!!


まさかこんな人混みの中で、それも一番奥の端にいた廃炉をいとも簡単に見つけてしまったイカタル*ちゃんに、廃炉は心臓を貫かれたような感覚に陥っていた



廃炉さん!廃炉さんっ!!

ちょっと――――

ドキドキドキドキ―――――

(何だろうか、ワタシハ夢でも見ているのか?イカタル*さんがワタシの名前を連呼してくれている····ッス!!)

廃炉さんってばぁっ!

ちょっとこっちに来てください!!

·····へ?!


一瞬で夢から現実へと引き戻された廃炉は人混みを掻き分けながらイカタル*ちゃんの側へ向かった



どっ、どどどうしたッスか?!
廃炉さん!!

はい!これ!着けて下さい!

·········え?


廃炉がイカタル*ちゃんから渡されたモノ――――――それは····



た、タスキ······?
ここは暑くなりますので、羽織はコチラに掛けて下さいね!
さあ、どうぞお入りください!!!


イカタル*ちゃんに案内されて入った先―――それは、屋台のカウンターの中だった······



ちょっ、ちょっと待って下さいッス!!!ワワッ、ワタシは料理など――――――


そう言っている矢先にも客からの注文はどんどん入る一方である


サスガに一人で切り盛り出来なくなってきたイカタル*ちゃんはトニカク助けが欲しくて堪らない状態の時に丁度廃炉を見つけたのであった



大丈夫です!!カンですけど廃炉さんって秘書とかやってないですか?!
えっ?!

ひ、秘書ではありませんが似たような事は―――――

やっぱり!きっと給仕に向いていると思うんです!!お客さんからの注文を取って私に教えて下さい!
な――――――っ
お願いします廃炉さん····っ!
ズッキュ―――――ン!!!
お任せ下さい···ッス!!!


イカタル*ちゃんの珍しく甘えた声色に一瞬で落ちた廃炉はチョロいもんであった










        ―AM0時30分―

ゼェゼェ――――···っ!
はぁ〜····

何とか捌くことが出来ましたね··

廃炉さん···、本当にスミマセンでした···。まさかこんな事になるとは想定外だったもので····
あ···、イヤ··

むしろ足を引っ張っていたような気がして―――――

そんな事はありません!!

とても、とても助かりました!!

···それなら良かったです
········
····廃炉さん
は、はい···
お店に来てくださり有難う御座います
っ!!
でも···、きょうのお料理は殆ど無くなってしまって···
せっかく来て頂いたので、食べて貰いたかったのですが―――····
だ、大丈夫ッス!!!
···勿論、イカタル*さんの手料理はとても食べたいッスが···、今日は違う理由で会いに来た――――ッス··
·····え?








続く

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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