第196話「カイトの本心」
文字数 3,590文字
··········!!
(絶対に怒ってる···!)
そろそろ鬼狩りに出掛けなきゃならないし、今日は私一人でも大丈夫だからカイトは凪さんの話し相手でもしてあげてて
·····桐生家に居て何か起きるとは思えないのだが―――――
····それに
いろはを一人で鬼狩りに行かせる方が、俺は生きた心地がしない
····いろは、どうしたんだ?
俺が何かしたのなら謝るから一人で行くなんて言うな
いろはの身体はもう不死じゃなくなっている筈だ―――――
※現在、三屍蠱がいろはの中で必死に不老不死の寿命を吸いまくっている
今までと同じ様に復元するならリスクしかない。そうだと分かっていて一人で行かせると思うのか?
····いろは、拗ねた顔も可愛いし、何やらヤキモチを妬いているような素振りも実はかなり嬉しいけど――――
だからって、危険だと分かっている場所に一人で行かせる気はないよ?
·····まぁ、いろはは昔から今に至るまで自分の気持ちを押し通した事ってなかったから――――
やっと甘えてくれてるのかなって、むしろ嬉しいくらいだけど
ず、ズルい――――――
何で···いつからこんなに大人な対応が出来るように····
····あ、そうか大人の対応――――
もしかして私のカイトに対する気持ちが大きくなりすぎて、嫉妬心に変わってしまったのかも···
あの時の、凪さんへのカイトの対応が大人の対応だったと考えると···
····私はいつまで経っても成長しない
こんなに長く生きているのに情けない
昔の記憶があるだけで、カイトは実質29年しか生きていないというのに――――――
そう考えたら急に恥ずかしくなってしまった
(···いろはが外に行っているタイミングで中に入れるのはマズいか···?)
あ···、いま少しだけ外の風に当たりに行っています
あっ、いえ····
いろは様···、すこし調子が悪そうだったので様子を伺いに――――
····ご心配頂き有難うございます。
ですが、いろはの事は私が見ているので大丈夫ですよ
····あっ
す、スミマセン!余計なお節介でしたね···!
凪さんと玄宥様は、桐生家へ何をしに来られたのですか?
···まぁ、確かに貴方がたの血筋には桐生家も含まれているので、遠い親戚に当たるとは思うのですが―――
以前、私の親しい友人のお祖父様が桐生家の方だったのを覚えております
やはり····、カイト様は本当に昔の記憶があるのですね
カイト様は、鬼狩りの鬼の時から···いろは様の事を――――?
なるほどなるほど!
そうなんですね〜!いいですね〜!
···当時の私はどうしようもないクズでしたので、己の気持ちを相手に伝える事など考えられませんでした
····それって、前世でのお二人は全くそんな関係では無かったと言う事ですか?!
······まぁ、700年以上も生きてしまうと···色んなモノを拗らせてしまうようでして―――
····最期の最期にやっと、ほんの少しだけ伝えた感じでしょうか?
···いや、私の所為でいろはが一人で鬼狩りをする羽目になり···
150年もの間····
身も心も傷付つかなければならなくなったあの日―――――
····孔雀明王様に、私が輪廻転生させて頂いた日です―――――
····まさかあんな結末になるなどとは想像もしていなかった―――――
私は····、いろはを巻き込んでしまったことを痛烈に後悔したのです
····いろは様の事が心配で仕方がなかったのですね
当然です!!
いろはが鬼と戦うなど···考えただけでもゾッとする―――
···しかし
いろはの意思は固く、絶対に引こうとはしませんでした
····私が輪廻転生をした後に、自分を見つけに来て欲しいと――――
······優しさが溢れ出ている、いろは様らしいですね
····しかし、私に前世の記憶が戻る保証など無く、いろはもそんな事は分かっていた筈です―――――
····本当に、いろは様はカイト様を信じているのだと思います
···今回お話を聞かせて頂いて、お二人は間違いなく運命の相手なのだと確信しました――――
今世での私は、あまりにもいろはに執着しています―――――
····とは言え、そんな自分の思いを抑える事すらままならず――――
····いつか愛想を尽かされ、嫌われてしまうのでは無いかと····不安で仕方がないのです
フフッ!
いらない心配でしょうけど、そう思って接されるのは良い事だと思います
····いろは様がお戻りになっていらっしゃいますが···
·····い、今の話―――――
もしかして聞いてた?
··········
(いろは様の前だと敬語じゃなくなるのですね〜!)
·····き、聞かなかった事にして欲しいのだが···
····もし、宜しければ――――
明日···桐生蒼羽の話を聞かせて頂けないでしょうか·····
····それではお休みなさい―――
と言って、凪さんは部屋から出て行った
···その後
この部屋には誰も居ないのではないかと言うほどの静寂が暫く続いていた――――――
·····気持ち良い風に当たって、すっかりと頭が冷えたからもう大丈夫だよ
····もう少し
いろはにヤキモチを妬いていて欲しかったそうな―――――
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