第63話「ナズナの選択」

文字数 1,607文字











··サワサワ―――  サワ―··

····で··
··お前はただただそのムスメの店で月見蕎麦を食べ、おめおめ戻って来たと··?
あ···っ、いやっ

そ、それはそうなんですけど···っ

しっ、しかし、あのムスメの料理の腕は確かでした!
それに····
··口説かれ慣れていると言うか、男をあしらうのが上手いと言うか~···兎に角一筋縄では行かないのです
···戯れ言はいらぬ

消滅したくなければ2日以内に私の元へ連れてこい

えぇっ!?

ちょ、ちょっとそれは~···

(無理だわ)

········

お前、女の一人も口説き落とせないのか?

っっ!!!

(ガーーーン)

····そうだな

お前が人に化けた時の姿を見せろ

·····わ、分かりました

それでは失礼致します





ボワンッ





···こんな感じで御座います

カルラ様

···なるほど

お前に問題があるとしたら、全てはその性格の悪さ1つだな

グフッッ
(カルラ様には言われたくないっ!)
ギロ――··
ヒ···ッ
分かったらさっさと行け。

人間の女の感情は複雑だ、お前がどのように口説き落とすのか楽しみだ

············

(自信の欠片もなぃ····)















        -PM7時45分-

····こんな時間にすまんが

まだやっているか?

いらっしゃいませ~····あっ
(先日のいい男がまた来た)
いらっしゃい!

まだ大丈夫ですよ!

ああ、良かった

悪いが今日は天婦羅蕎麦をもらおうか

いらっしゃいませ。

毎度有り難う御座います。やっぱりお蕎麦が好きなんですね?

···まぁ、嫌いではないな
········
···こんな事を言っては商売上がったりですが、お蕎麦ならもっと美味しい専門店が御座いますよ?
······そうか、

だがワタシはお前の蕎麦が好きなのだ

っ!!
お前の作る天婦羅蕎麦をくれるか?
あ、は、はいっ
(いい男、ナズナさん口説き作戦を少し変えてきた様子)



















コトンッ

お待たせしました









···旨そうだな
時間は気にせずに、ごゆっくりお召し上がり下さい
····蕎麦をゆっくり食べると

食感が悪くなるんじゃなかったのか?

···あ、
ふふっ、そう言う意味では無かったのですが···
········
····では、頂こう
はい





カタン―― ガタガタッ





女将さん、暖簾しまっちゃいますよ?
ああ、お鈴

それじゃあそろそろ片付けるかね







うちのお店はいつも大体、宵五ツ(夜の8時頃)には閉めるため


お鈴ちゃんと女将さんは片付け始めている







····もう店仕舞いか
えぇ···、でも大丈夫ですよ

お客さんが食べ終わるまでは閉めませんから

········
····お前

名前を聞いても良いか?

え···、あ···はい
私の名前は、姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)と申します
ナズナか····
··········

お前に折り入って頼みたい事がある

····っえ
ワタシはとある御方に支えているのだが···、その御方が腕の良い女料理人を探しているのだ
っ!!
少しで構わぬ

ワタシに協力してはくれぬか

···········





····私はこのお客さんの事をよく知らないのだけれど···


何か事情があるのだろうと言う事は伺いしれた


しかし、私が居なければお店が成り行かなくなるのではないだろか···





そう思案していた時····







ナズナ、店の事は気にしなくても大丈夫だよ
···お、女将さん
私達だけでも何とかなるさ。それに、臨時の料理人だってきっと直ぐに見つかる。
いつかはあんたも嫁に行く日が来るだろ、そうなりゃいつまでもここで働いている訳にもいかないからね
よ、嫁には···行きませんけど···
戻って来たけりゃいつでも戻ってくればいいさ
っ!!
行ってやんな
···········
····寂しいし、ナズナさんの料理食べられなくなるし、きっと男性のお客さん減るかもですが、私も応援します
お鈴ちゃん····
····では、

決まりと言うことで良いか?

わ、分かりました····






そうして、私はひょんな事から


このお客さんが支えていると言う御主人の元へ向かう事となった







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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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