第176話「覚悟」
文字数 2,905文字
今日は、真那さんから先日のお詫びがしたいとご連絡を頂き、再びイカタル*さんと廃炉さんのCafe「エクリュ」に来ていた―――――
あの日···私のせいで仲違いをしてしまったお二人の事が心配で仕方がなかったのだけれど、···聞くに聞けなくて真那さんからの連絡をひたすら待っている状況だった
···仲直りしてくれてたら良いなぁ
今日は先日のお詫びと、これからの事をちゃんとお話しようと思って来ていただいたのです
そんな訳にはいきません!
それに、ちょっと報告したい事もありまして―――――
···報告ってなんだろ
聞きたいような聞きたくないような··
···でも今日は伊吹さんも一緒に来ているし、きっと大丈夫だと―――思いたい
先ずは、これからの事を話しておきたいんだけど···いいかな?
あの日、あれから真那と話し合って決めたんだけど···
鬼狩りには、当初の予定通り真那に同行して貰う事にしたよ
でも···、真那さんはそれで良かったのでしょうか···
あー、それは大丈夫だよ
マナはむしろ楽できるしお願いしまーすって言っていたから
···最初からそうすれば良かったんだなって···冷静になって思った
いろはちゃんにも真那にも悪いことをしたよ···ごめんね
全然···、謝られるような事はありません···。私なんかの為に、こんなに悩んで下さる方がいる事がとても嬉しいですから
···オーマはまだまだ子供だからね。もう少し年を取ればもっと良い男になるんだろうけどなぁ
まるで自分の子供の様に、玄宥様が伊吹さんを嗜めていたその時―――――
とても良い香りが漂ってきた
この香りは····
イカタル*さんのお料理に違いない!
お待たせしたッス
「塩漬け豚と暴れイカのポトフ」ッス。シェア用のお皿は何枚――――――
やあ、廃炉!
元気そうで良かった。心配していたんだぞ?
あぁ、これからは「いろはの側には玄宥有り」みたいな感じになるから
·············
それって、ちょっとマズくないッスか?
····きっと近いうちに鬼狩りが復活すると思うッス
あ〜、コラコラダメだろ
廃炉の近いうちって何年以内だと思ってんの
いろはさん···スミマセン
廃炉さんは長生きし過ぎていて――――――
····ワタシの年齢ッスか?
うる覚えですが···1300歳くらいだったかな〜?
↑廃炉は自身の年齢をかなりサバ読んでイカタル*ちゃんに教えていた···事を忘れて自滅した
···それだけ生きていて、200歳サバ読んだ所でって感じだけどな〜
···因みに、廃炉の近い内って言うのは恐らく100年以内だと思うよ
いえ···!大丈夫ですよ!
私の使命は鬼化した人達を元に戻す事ですから···
夜は真那も仕事から帰ってるし、俺も少しは同行出来そうだから
そうと決まれば、明日に備えて今日はとにかく沢山食べてから帰るッスよ!
これから先、本来ならば私は一人で生きていく覚悟を決めて長い旅に出なければならない―――――
でも···、こんなにも優しくて頼れる人達が側にいてくれて、心配してくれて···こんなに良くしてもらって―――
いざ一人になった時···私は本当の意味で覚悟が出来るのかと更に不安になる
···いや、これは自分で決めた事だ
覚悟が出来るのか出来ないのかじゃなくて···
覚悟をする以外の選択肢などないのだ――――
(やるしかない···。喰われるのは覚悟の上よ···)
次の日
―PM11時30分―
《伊吹家―十全浄霊事務所》
よし!
ならば先に言っておく事があるから心して聞けよ?
先ずは、カルラの能力について少し詳細を説明するが―――――
カルラの能力の基本は「復元」させる事にあるが、そこは鬼族の長だけあって使い方に優しさなど一切無かった
鬼にとって人は喰い物でしかないのが普通だが、カルラは喰う事すら嫌悪していた···
そんなカルラは、鬼達が喰い荒らした人の遺体を少しだけ復元させては衛兵の様に使用していたんだ―――――
これは魂の抜けた遺体にだけ有効であると考えているが、復元された遺体をカルラは操ることが出来るらしい
だが、今回いろはが使うには全く意味を成さない―――――
···うーん
そうなると、結局の所「復元」そのものをどう使うかですよね
それはそうなんだがな····
いろはが自分を守るすべも無いと、一人になった時が苦しくなるだろ
あの····、「復元」は自分には使えないのでしょうか?
·····残念だがそれは無理だ
むしろ「復元」を使えば、微量だが寿命が削られる諸刃の剣にもなる
っっ?!
カルラは寿命は無いけど、不死身では無かった筈ですよね?!
ああ···。カルラは何事にも興味が無いヤツだったからな··、自らが死んだとしても何とも思わなかったのかもしれん
確かに···、昔のカルラ様はそうだったかもしれないけれど――――
ナズナさんに出会ってからは少しづつ変わって行った
少なくとも、最期は共に生きたいと願っていたはずよ··
取り敢えず、「復元」の使い方に慣れてから身を守る方法を考えましょう
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