第120話「棺桶の中の骸」

文字数 1,411文字






        ーPM2時30分ー


         《宿屋―蔓の間》

···ん···あ?

もう昼過ぎか····?

···おや?

やっと起きたのかい夜叉丸?

ああ···

何だかすげぇ眠くてな

まぁ、昨夜は遅くまで戦っていたからね。仕方ないさ



夜叉丸はまだ眠い目をグイグイと擦りながら部屋の中を見渡した


··玄宥の姿が見当たらない

そう言えばヤトも居ないようだ



ホシ猫

···玄宥は何処行ったんだ?

ゲンユーは陰陽頭(おんようのかみ)だからね、昨夜の件で幕府に呼ばれてだいぶ前に出掛けて行ったよ
幕府だと?
そろそろ戻って来るんじゃないかな?



と、丁度その時だった






ガラ――――――ッ

···おっ、夜叉丸

起きたか?

ただいま戻りました
おかえり
幕府に呼ばれてたのか?
あぁ···まぁな
鬼族の討伐は難しいかもしれないね
っ!!
まぁ···、そうだな

幕府お抱えの陰陽頭も、あまり役に立てなかったみたいだしな

その事なんだけどもね··
昨夜、目一鬼(まひとつおに)が消滅した後に残されていたデカい棺桶があっただろう?
っっ!!!
っ!!?
その···、骸の事について幕府にも話しはしたのかい?
··········
···あぁ、話したよ
···彼らを埋葬しなければ、それこそ報われないからな



昨夜の戦いで、廃炉が去った後に残されていたモノ···それは目一鬼が背負っていたデカい棺桶だけだった


玄宥には、棺桶の中に詰め込まれている骸が何なのか分かっていた





✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣


江戸に着いてすぐ幕府へと赴いた玄宥とヤトに告げられた事実、それは陰陽頭の半数以上が行方不明のまま処理されたと言う趣旨の内容だった



目一鬼が江戸で大暴れし、大量の人間が喰われた事で幕府は鬼族討伐の下命を下す事になる


そして、陰陽頭と目一鬼との全面戦争が始まった


当初は優勢であったはずだったのだ


体のデカい鬼ではあったが、陰陽頭達が束で掛かれば一溜まりもないだろう



だが実際はそう甘くはない


影には仕方なく参戦していた廃炉がついていた事で、陰陽頭達に勝ち目など一切無かったのである



その時に戦っていた陰陽頭達の半数以上が目一鬼の餌食となり棺桶に詰め込まれてしまったのだった



···あの骸は玄宥の同志かよ
あぁ···、そうだな
ち、違う!
っ!?
玄宥様と、あいつらは同志なんかじゃないっ!!
····どういうことかな?
あいつらは――、優秀な玄宥様に嫉妬していたんだ!!
ヤト―――――
本来玄宥様は、この江戸幕府で陰陽頭となる予定だっ―――
いい加減にしろ!
っ!!
必死で戦い、無念にもこの世を去った者達に向ける言葉がそれか?
·······
···へぇ、だから地方に住んでんのか?
違うよ。

俺には産まれた土地を守る義務がある

それは元々、ご先祖である慶長様のお言葉でもあるからな
産まれた土地か···
俺の家は先祖代々から受継がれる陰陽師の家柄だ。それはこれからもずっと続く予定だよ
と、言うことは···

ゲンユーは妻子持ち?

ははっ、残念だけどまだかな。

絶賛募集中だけど

···生涯独身で貫き通せ
···え、何で?
俺がそうしているからだ!
いや、知ったこっちゃないんだが
何だと!
夜叉丸は寿命が尽きないから何とでも好きなように出来るだろ?俺は寿命短いから
だから生涯独身を貫いてんだよ!
うーん、じゃあ···

不老不死の女性でもお嫁さんに貰うしかないんじゃないかな?

···········

むしろ俺の方が先に地獄に行くかもしれねぇぜ··

鬼の殲滅諦めたのか?
まったく、滑稽だね
何がだよっっ!!!
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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