第183話「夜叉丸と海弦(カイト)」

文字数 3,649文字





         《Caffe―ゑ來屡》

カランカランッ
っ!!!!
っ!!!
い、いろはさんっ?!

イカタル*さんっ!!


いろはさん!!大丈夫ですか?!

心配しましたぁっ!!

····ご無事で何よりッス
ご心配をお掛けしてすみません··
············
ハッ
····初めまして、桐生と申します
あっ!いらっしゃいませ!!

気付かずに申し訳ありませんっ

(イケメン?!)

·········っっ!!!
·······お、遅かったッスね
······?
廃炉さん、誰に話して――――
··········
···まさか、こんな素敵なカフェにまではびこっているとは――――
····えっ?!
····えっ
·····モファァ〜、ねむ··
この男性は人に化けているだけの鬼です。今すぐに祓う必要があります
はあぁっ?!
っっっ?!
ちょっ、ちょっと待って!!

覚えてないの?!

·············

さぁ?私の知り合いに鬼はおりませんが?

えっ?!

い、いろはさん!この方はどちら様なんですか?!

え、えっとぉ〜···
いくらお客様とは言え、廃炉さんを祓うなんて!!そんな事私が絶っっ対に許しません!!
っっ!!!!!
イカタル*さん······♡
···········
······そうですか
·············
····え
では、やめます
·······な··



なんなの?!

どういう事?!


···夜叉丸の記憶はどうなっているのだろう?

一度ちゃんと話さないと、何を覚えていて何を忘れているのかが分からない


それに····

結局修行僧モードに戻っちゃってるし―――――


ちょっと残念····



··········

(性格もイマイチ掴め無いわね··)

いろは···
は、はい!

どうしました?

やっぱりホシ猫は眠くて仕方が無いから、今日は此処に泊まっていく事にするよ
え·····

えぇっ?!

こ、ここはお店ですよホシ猫さん!?イカタル*さんにご迷惑が―――――
ああ!それなら大丈夫ですよ!

ここは古民家を改装しているお店なので客座敷もあるんです!

仕事で遅くなった時なんかはワタシ達も泊まったりしているッス
そ、そうでしたか····

何だかスミマセン

全然気にしないで下さい!なんなら今日は皆でお泊りにしましょうか!
えっ?!

そ、それはあまりにも申し訳が―――――

問題ありません!何ならいろはさんとの再会も兼ねて飲み会しましょ!
それはいいッスね!

そちらの修行僧さんもどうせ泊まる所なんて無いでしょうから

っ!!
·········

まさか鬼に情をかけられるとは···

···いちいち腹が立つのは変わってないッス!
や、夜叉丸···

確かに彼は鬼だけど、人を喰らわない優しい方なんだよ···

··········
いろは―――――
····え?
·····私は貴方が心配で仕方がありません
····え

な、何で?

貴方は昔から人を簡単に信用する節がある―――――
···そのせいで友人に腹を刺されたり、鬼に喰われたりした事を思い出してください
っ!!!!
··········
·····そ、それは―――――

そうなんだけど····

····ましてや鬼族に囚われ、人格まで消されそうになっていた――――
っ!!



···前世のことをここまで明確に覚えているなんて···!

なのに廃炉さんの事は、忘れているのね····


でも、さっきもそうだった――――

夜叉丸の幼少期の事まで鮮明に覚えているようだったし··

···でも何だろう、何処か他人事のようで違和感がある···


···いや、それは当たり前なんだ――――

夜叉丸は転生して、この現代にはちゃんとご両親がいる···

きっと厳しい躾も受けて僧侶としての修行を行って来ているなら、昔の記憶があったとしてもそれはきっと殆ど夜叉丸じゃないのかもしれない····



···········
·········
····そんな顔をしないで下さい
·····え
····やはり―――

あちらの方が良いのですね

っっ!!?
···私はこの記憶が戻る前から、誰かも分からない貴方への気持ちが只々強く――――
これまでずっと、まともな恋愛が出来ずにいました
っっ!!!
だから···、それが誰なのか思い出した時···私は居ても立っても居られなかった――――
····早く会いたい――――
早く見つけ出して、彼女を守らなければいけない···と···
···········!!!
··········
···でも、貴方はガッカリしたでしょうか···?こんな私が『鬼狩りの鬼』だったと知って――――
··········
そ、そんな事――――――
あるわけ無いじゃない·····!!
っ!!
私だってずっと待ってたんだよ!

でも···今はまだ昔の夜叉丸と今の夜叉丸のギャップが激しくて·····っ

····ちょっと困惑しているって言うか―――――
···········
······夜叉丸
···········
···君はまた猫を被ったのかい?それとも修行僧だからって猫被りが癖になっているのかな
·····そうですね

私は僧侶ですから、言葉遣いは特に厳しくされていますので····

···なるほどね

ならば仕方が無いだろう。いろはに対して感情的になった時には戻りそうだけども

私に対して感情的にって····

(お、怒られる時とか···?!)

(それは嫌だなぁ····)
····って言うか、あれだけ記憶が戻っておいてワタシだけ忘れてるとか失礼過ぎるッス!!!
まぁまぁ····

私は生まれ変わっても絶対に廃炉さんの事は忘れませんよ?

イカタル*さん愛してます♡
っ!!

知ってます!

······取り敢えず、宴会するならしてサッサと寝るといいよ
ホシ猫は先にフワフワの毛布の上で寝てるから起こさないでね
は、はい!

お休みなさいホシ猫さん···

よし!じゃあチャチャっと宴会用のおツマミ作って来ますので、お二人は囲炉裏の前に座っていて下さい!
ちょっ、客間の準備はまだしてないッスよ!料理はイカタル*さんにお任せするッス!
い、色々とお世話かけてしまって本当にすみません···
なんのなんの!

全然大丈夫!お二人で少しお話なさっていて下さいね!



そう言うと、イカタル*さんも廃炉さんもホシ猫さんも居なくなり····

夜叉丸と二人···取り残されてしまった―――――



···········
··········
···········



やっぱり何だか気不味い·····



あ、あの···

本当に廃炉さんの事を覚えていないの?

·······廃炉···?
····ああ、あの黒鬼の事ですか?
お、覚えてるじゃない····
鬼の姿しか思い出せませんね···
もしかして、彼がその廃炉なんですか?
う、うん···そうだよ
なるほど·····
··········
あ、あのさ····夜叉丸····
·········
······何ですか?
えっと······
····何か言い難い事でもありますか?
そ、その····

二人だけの時くらいは···、敬語やめない?

っ!
さ、さっきは···本当に昔の夜叉丸みたいに話してくれたから···その··
····いろはは、夜叉丸が大好きなんですね
·······いや、それはそうだけど―――――
あなたも夜叉丸なんだよ?
ええ、勿論分かっています···
···ではこうしましょう

私といろは、二人だけの時は私は僧侶である事を封印し『鬼狩りの鬼』に戻ります―――――

っ!!
そして、いろはは『鬼狩りの鬼』に戻った私の事を「海弦(カイト)」と呼ぶ事
それでも良いですか?
っ!!!!
わ、分かった

それでいいよ!

··········
····因みに、これは「契約」だ
····えっ
破ることは許されない
や、破らないよ!

絶対に!!

···········
·····いろは、お前はまだ分かっていないようだけど――――――

――――え?

ドキッ



夜叉丸···、いや、カイトはそう言いながら少しづつ私に迫って来た···


はたから見たら今にも押し倒されそうな状況だろう―――――

私は徐々に仰け反りながら、とうとう畳に肘を付く状態になってしまった



二人の時に俺が僧侶である事を封印したら····、どうなるかくらい想像つくよな?
っっ!!!!!?
···でも、いろはは既に俺と契約を交わした――――
嫌とは言わせない
············
··········
···ほら、だから言っただろ?

お前はすぐに人を信用する節が―――――

別に····っ
っ!
····全然嫌じゃないよ?
···········
··········
······っ!!



あ······

もしかして、照れた···?



···そ····、そうか――――――
····うん
なら―――――
俺は今でもいいけど····

どうする?

·····えっ?!



い、今は無理じゃない?!普通に!

て言うか、皆戻ってくるから!



···········
·····い、今は····

遠慮しておきます···

···フッ

まぁ、そんな機会は此れからいくらでも作れる

········
覚悟してろよ?



···や、やっぱり夜叉丸感が全面に出ているカイトは破壊力がヤバい――――――


選択を間違えてしまったかも···





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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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