第71話「不死者?」

文字数 1,545文字







       ーAM12時10分ー   

   

        《鷺山渓谷麓》

テメェの能力が何だろうと、この俺が負ける訳ねぇだろうが!
········
···ふん、まぁいい
あぁ?
本来ならば貴様の様な面倒な存在を、相手にするのも鬱陶しいのだがな
カッチーーーン
今ならば少しだけ相手をしてやっても構わぬ
クンクン
(この鬼の匂い、他の鬼と対峙した時にも嗅いだことがある···)
いま丁度ヒマを持て余していた所でな
・・・なんだか知らねえがな・・
逃げる気がねぇならさっさと片付けてやるよ!



夜叉丸は手のひらから自身の血を刀に成して出現させた


その血の刀は、あっという間に鋭い刃物となりカルラに向けられている




・・・全く気の早い奴だな
・・・そっちから来る気がねえならこっちからいくぜ?
覚悟しやがれ!!
・・・・・・・・・




その瞬間、ハッとしたのはホシ猫だった





待つんだ夜叉丸!!
っっっ!!!!!
んだよホシ猫テメェ邪魔する気・・・っ



言いかけて夜叉丸は、ふいに死臭と共に血生臭いニオイが辺り一面に漂い始めていた事に気づいた




・・・何だ・・?




暗闇の中、何かがグラグラと揺れ立っている



そしてソレは夜叉丸の方へ向かって歩き始めていた


雲間から月の光がソレを照らした時、ハッキリと姿を現して夜叉丸とホシ猫は驚愕した





っ!!!!

な····っ

っ!!!

···おいおい、どうなってんだ

·········




夜叉丸たちの前に姿を現したのは――――



原型を留めない程に顔面を喰われて目も鼻も無く、だらんと下った顎には舌がだらしなく垂れ下がっている··



頬にも殆ど肉が付いておらず、骨が剥き出しになっていた



当然の様に首から下もグチャグチャに喰われており、喰い損ねられたであろう内臓の残りは腹から飛び出していたが、そんな事は全くお構いなしに引き摺りながらグラグラと此方へ向かって歩いている




どうにもソレは、今しがた「隠形鬼」に喰われて無惨な骸となったあの強欲な男の姿に相違無かった





まさか、これって不死者ってやつかな?
さぁな。分からねえなら取り敢えず斬ってみるのが俺流だ
········
どう考えたって今のコイツは人じゃねぇだろ。だったら俺の刀で斬れないはずがねぇからな



そして夜叉丸は、躊躇なく目の前のソレめがけて刀を振りきった




っ!!??
!!!




勿論、血の刀は目の前の男を完全に捉えていた


思い切り頭から斬り裂いたはずだったのだ





なっ、何ですり抜けるんだ?!
···有り得ないね

どうみても人じゃないのに夜叉丸の刀が通じないなんて

ふ···っ、クククッ
っ!!!!
夜叉丸、最初の勢いは何処へ行ったのだ?
テメェ····、一体何をしやがった?!
···だから、何度も言わせるな

この私が貴様にタネ明かしなんてするとでも思っているのか?

ムッカァ
その骸となった男は私を怒らせたのだ

この程度の報いを受けた所で文句など言わせぬ

···········
そいつは永遠に貴様の邪魔をするぞ夜叉丸。私に貴様の刃など届かぬのだ
······っ!!
分かったらさっさと去ね。所詮貴様如きがこの私に楯突くなど不毛も甚だしい
テッメェ·····っっ!!

姑息で汚え戦い方しやがって!!!

ふん、別にそいつに貴様の邪魔をさせたまま殺してやっても良いのだぞ?
···だったら、何で君は夜叉丸を殺さないんだい?目の上のたんこぶなんだろう?
···私から言わせれば、お前こそ何故そんな奴の側に憑いているのだ?
(質問を質問で返さないで欲しいんだけど)
色々と事情があるんだよ
·········
仙狸(せんり)は化け猫の類だが、生き残りなど殆どおらぬはずだ。お前はかなり貴重な存在だろう
(くっそ、取り敢えずコイツを殺せない限りは俺はいつまでたっても囚われたままだぜ!!)



そして、その時だった




カルラ様っ!!!
っ!!!?
····遅いぞタマネギ
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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