第174話「真那と逢馬」

文字数 3,486文字






         《住宅街》

·····ハァ···
···何故、私はこうも伊吹くんの前だと素直になれないのだろう···
····きっと心配してくれてる··んだよね?····違うのかな?
····でも
···ひとつ屋根の下で暮らして7年···

結局私なんて他人には変わりない

きっかけはどうあれ、私達は婚約をしている····はず···なのに――――
···その先の話はまるで出ず
····イラッ
···ハッ

もしかしてタダの居候としか思われていないのでは―――――



真那が一人でブツブツ良いながら夜の住宅街を歩いていたその時――――



真那さんっっ!!
あ·····っ!

いろはさん―――――

良かった···追い付いた···っ
···ごめんなさい

勝手に出て来てしまって―――――

いえ···、真那さんと伊吹さんはいつも仲が良い印象でしたので少し驚きましたが···
きっと、真那さんにしか分からないわだかまりがあるのかなって···
············
私は伊吹くんにとって··ただの居候でしか無いのかもしれません··
っ?!
まぁ··今回の鬼狩りの件については、私の意思でいろはさんと鬼狩りに行こうと思っていたので、気にしないで下さいね!
何なら今から参りますか?
ええっ?!

今日は駄目です!!

···えっ?

何故です?

何故って!

伊吹さんは真那さんのために今日急いで帰ってきたんですよ?!

っ!!
お二人が仲直りするまでは鬼狩りはしません!
·········

分かりました。では黒猫マートまでお送り致しますね












         《住宅街》

♫···

♪♬〜〜♫♪〜···

っっ!!
····真那――――――···
···じゃねぇな···

黒鉄か····

ピッ
もしもし···
オーマ····

お前は何をしておるのだ

····え?
わしが言いたかった事をはき違えるな。マナの意思を無視しろと言った覚えはない
っっ!!?
まったく···、お前はいつになったら青二才から成長するのだ、もう少しマナの事をしっかり考えろ
···黒鉄、あんま覗き見しないでくれる?
フン、お前はヘナチョコだからな。ボケッとしとると他の男に取られるぞ
·············

真那はそんなに軽い女じゃない

···ほう?

随分余裕だのう···。仕方がない、ワシが本気を出すしかなさそうだ

·············
黒鉄はモテるだろ···、女に困らないのに何で昔から真那に――――
···マナは良い女だぞオーマ
···そんな事は黒鉄に言われるまでもなく俺が一番良く分かってんの
····まぁ、無いとは思うけど

真那に手を出したら黒鉄でもマジで許さねえからな

フンッ、その思いの丈をさっさとマナ本人に伝えたらどうだ?
·············
あのさ、俺と真那はもう既に付き合ってるし婚約もしてんだよ。なんで今更――――
····ならば何故結婚せんのだ
その慢心さが不幸を呼ぶぞ
っ!!!
せいぜい嫌われんよう努力を怠らない事だ
ピッ
··········
············

だったら何で真那が鬼狩りに行く事を連絡して来たんだよ

···履き違えるって何を···?

俺はただ―――――

真那に危ない事をさせたくないだけだ
············
···でもそれだと、いろはさんが一人で危ない事をする事になるッス
うぉっ?!
どうも···、今晩はッス
は、廃炉さん····

アナタは闇に溶け込みやすい黒鬼なんだから急に後ろから現れないで下さい

····マナさんは、いろはさんが鬼狩りに慣れるまでの間、付き合うと言っているッス
っ!
アンタがマナさんを心配する気持ちはよく分かるッスが、いろはさんの事を考えているマナさんの気持ちもちゃんと分かってあげないとッス
···はは

まさか廃炉さんに言われるとは思ってもいなかったなぁ··

···失礼ッスね

ワタシの方が遥かに年上ッスよ?

···········
···真那は幸せだな
こんなに沢山の人達から信頼されているなんて···
············

マナさんだけでは無いでしょ

廃炉さんっ
っ!!!
イカタル*さん···、迎えに来てくれたッスか?
はい!一緒に帰りましょう
喜んで一緒に帰るッス!!
··········
···仲睦まじいんですね
えっ?!
当然ッス!羨ましいのならアンタもマナさんを溺愛してみる事ッスね!
···········

(で、溺愛···!!確かにされてます)

溺愛·····?!
·············
ふーむ···

ま、アンタには無理そうッスね

······ムッ
そ、そんな事はありませんよ!
···ならば、今日!これから!

マナさんを捕まえて溺愛すると誓うっす!!

······

(最近廃炉さん、溺愛されました系の女子特有漫画読みまくってたから、ちょっと女子みたいになっているわ··)

·······え
な、何を寝言言ってんですか?
·····寝言言ってんのはアンタッス

ほら、さっさと行けッス

············

(急に面倒くさくなっただろ··)

分かりましたよ――――――
真那とはちゃんと話してみます

····助言、有難う御座いました

今度はお食事をしにいらしてくださいね
はい









        《近所の街路樹》

·······ハァ
···今帰っても伊吹くん居るだろうし

帰るに帰れないなぁ····



いろはを黒猫マートまで送り届けた後、真那は帰る場所を失っていた――――



明日はお休みだからいいけど··、朝まで此処にいるのはちょっと··
最近は、伊吹くんのお仕事も手伝っているから神の御加護を外して頂いているし、このままだと絶対に鬼に見つかるよね···
↑一人で鬼と対峙するのもちょっと怖い



真那はイタコである為、神の強力な加護に依って悪鬼に姿を見られない特殊な存在だ


だが、逢馬の仕事を手伝う為には百鬼を視界にいれる必要があるため、現在では神の加護を外して貰っているのである



うーん····

まぁ、いっか

何がまぁいっか···だ!
ひゃっ!!
な、なななな何でっっ

ここに―――――っ

···通り道だし··な
········

(先に帰っていると思って油断した··)

コンビニ寄って飯買ってきた帰りに通ったら真那がいたんだ
····べ、別に伊吹くん来てくれないかなぁとか思って此処にいた訳ではありませんよ?!
·········
って、言うか!

ご飯なら私が作りますよ?!コンビニだなんて―――――

···心配してくれてんの?
そっ、それは····その···っ
····最近仕事がハードだったし、遅くなってたから真那とこうしてちゃんと話すのは久しぶりだな··
お仕事なら私も多少は手伝っているです
だな。でもそれは簡単な浄霊の時だけだから。真那には真那の本業があるだろ?
····え、簡単なら一人でも良くないですか?大変な仕事を一人でこなして簡単な仕事を手伝わされていたとは
意味がわからないです
···········
···危ない仕事は手伝わせたくなかったんだ···
っ!!
···でも、出来るだけ一緒に居る時間を増やしたかったから簡単な仕事を手伝ってもらってたんだよ
········
って言っても、そこは仕事だしイチャつくわけにも行かないんだけどな··
···む、昔は―――――

そんな感じじゃ無かった···のに···

·····ん?
昔は···、むしろ私に危ない仕事を散々させていました。囮にしたり、悪霊を口寄せさせたり―――――
············

いや···、うん、本当にすまなかったと思ってる

お陰様で取り憑かれた時もありましたよね?
あっ、あの時は···、まさか真那が体調を崩してるとは思いもよらなくて―――――
····なのに、どうして今はこんなに優しくするのです?
っ!!?
な、何でって····当然だろ?
·····?
あ―――···、何か····

ゴメンな···

えっ?!
これは完全に俺が悪いわ···
·····??

何故伊吹くんが謝るので――――

····好きだから
············
····えぇっ?!
え···って何だよ――――
好きでもない女とこんなにずっと居られるわけ無いだろ···
···ま、まぁそれは確かにそうなんですが···、私は伊吹くんにとってタダの居候なんだと思っていました
···なんでそうなるんだ
·········う〜ん
いや、でもそれっておかしくない?
何がですか?
俺···、今までも散々お前に手を出してるし―――――
っ!!!!!
···············
さすがにそれは····居候にはしない···かな
···そ、それは··光栄です···
············
実はさ···、色々と考えてたんだ
····何を、です?
今後の事―――

まだ決まっていないことが多すぎて、言うつもりは無かったんだけど··

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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