第118話「無慈悲」

文字数 2,002文字






         《城下町》

目覚めよ·····
付喪神
っ!!

付喪神?!

?!






ドーン



(  ΦωΦ)・∵. ぶほっっ

ナニあれキモいんだけども

··マジか


··マジか
·····マジかっっ!!!



おはよう付喪神。

だがその花束はいらん

そもそも、菊と牡丹は基本的にババアに贈る花束だ。わしをナメとるのか?



そんな事より、時間がないのじゃ

見てわからんか?もうすぐ死ぬぞ

っ!!!!
さっさとその短刀から抜けて、あいつらの中へ入れ
あ〜、ハイハイハイ

分かります分かります

さっさと行け
はぁ〜ぃ



ちょっとイラッとした太陰は付喪神?のようなモノに命令を下した



すると付喪神?のようなモノは瞬時に短刀から姿を消すと、廃炉が解き放った大量の武器の中へと移動したのだった



なぁっ?!

ちょっっ、と 待···っっ



廃炉が驚愕したのも当然だった


付喪神?のようなモノが取り憑いた大量の武器は急に減速し、まるでやる気が無くなったかの様にバタバタと下へ落ち始めている



よく見ると大量の武器すべてに付喪神?のようなモノの顔がくっついていた


全くやる気のなさそうな表情で



はぁ〜、やる気ない

疲れた ダルい〜

眠い〜 面倒い〜 動きたくな〜い
明日仕事サボろうかな〜 休もうかな〜 行くのやめようかな〜



まさに怠惰の付喪神、その名も「メンドウ」は取り憑いた武器のやる気を削ぐ事を生業(なりわい)としている最低な付喪神だった



·······ま、マジか
武器達のやる気が完全に失せてしまったッス···



ついでに廃炉のやる気も失せかけていた



うむ

全ての武器のやる気を削いだようじゃ

付喪神、戻ってよいぞ
太陰さま〜っ
チッ 

キモいな··

酷っっ!!!!
ああ、そうだ

一つ言い訳をしておこうか。やる気のある方の付喪神はイケメンじゃ

っっどうでも良い·····っス!!!
ふぅ、助かったよ太陰―――

(まさかあんなキモいやつを懐に入れてるとは思わなかったが)

うむ、またいつでも呼ぶが良い。

懐かしい話でもしながら金箔入りの羊羹を食すのも良かろう



そう言いながら、太陰は霧の様にユラユラと少しづつ雲散霧消していった



·····金箔だと?
っっく····!!
今回は完全に敗北したッス··!しかしそれは年増に負けただけでゲンユーに負けた訳じゃない··っ!

なんか言い訳がましい事いってんぞ
廃炉···、ここからが勝負所だよ?サシでやろうじゃないか
っ!!!!!
さーて、そんじゃあ俺様はあっちの鬼どもをぶった斬ってくるぜ
っ?!

そうはさせんぞ鬼狩りっ!!!

あぁ?

テメェの相手は玄宥だろうが

ふ――――っ  ハハハハハ!!

バカどもめ!!!コチラにはまだ奥の手が残っているのだ!!!

奥の手?
目一鬼!!!その棺桶から骸を(ムクロ)を出すのだ!
っ?!
?!
グゥオォォォ···――ッッ
クッソ!!この鎖いつまで私達を縛っておくつもりなんだ?!



目一鬼と菫鬼は縛られていて動くことが出来ない···ため、棺桶から骸を取り出すことも出来ない!



ガーーーーン!!!
そ、そう言えばそうだったッス···
コイツ―――

本当に鬼族の幹部なのか?

····廃炉

お前···、やる気あるようで無いだろ

·····そんな事は無い···ッス
ただ、何かもう付喪神のせいで面倒くさくなってきたダケッス!後はカルラ様に丸投げしようと思ったのに···!



と、その時、戦況を伺っていたホシ猫が建物の屋根の上から身軽に夜叉丸達の元へ降りてきた



さて、もう勝負はついたのかな?

しかし腑に落ちないんだけどもね

っ!
何がだ
ピンチだったなら何故君は途中で能力を変えなかったんだい?
···そんな事をいちいち敵のアンタラに言う理由も無いッスね!
ほお···?何かカチンと来たからアイツラぶった斬ってくら
はあ?!

ちょ······っ

大体な!!俺は鬼狩りの鬼だぞ!!

鬼が2体も縛られてんのに斬らねえはずもねえだろ!!!



実は夜叉丸は不完全燃焼していた···


目一鬼の不自然な動き(廃炉の仕業)のせいでイライラがMAXになっていたのだ


鬼を狩ることだけについては妥協を一切しない事もあり、血の刀を肩に担いだままドカドカと2鬼の前まで行き、立ち止まる



っ!!!!!
っ!!!!?

なっっ、何をする気だっっ

そんなん決まってんだろうが!!!

ぶった斬る以外に何があんだよ!

ちょっっ、止め――――――



イライラMAXの夜叉丸には、もはや誰の声も届かない


鬼に対しては慈悲の1つも持っていない夜叉丸は目一鬼と菫鬼めがけて血の刀を振りかざした



····ヒ···ッッ
グオォ····ッ
それでは鬼さんサヨウナラ
·······
·······っ



横薙ぎに払われた血の刀は、2鬼の首を見事に切り離し、首はそのまま勢いよく跳ね上がっていく



切り離された胴体からは、血は噴き出しておらず、首の切断面はドス黒くなり細胞が朽ち果てて行く様子が伺われる



っっ!!!!

何と言うことを····っ!!!



そして、無惨に斬られた目一鬼と菫鬼の首もまた、ドス黒く細胞が朽ち果てながら灰となり散亡していった



ふん!
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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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