第50話「運命の日」

文字数 1,459文字











        -PM1時50分-

         《比企家》
それでは父上、行って参りますね
ああ···。

義母上にくれぐれも宜しく言っておいてくれ

はい。少し遅くなるかもしれませんので、お夕飯は隣のおカルさんにお願いしてあります。
···そんな事は気にせずにゆっくりしてこい。次の機会には必ず俺も伺おう
ヒヅキちゃん、一人で大丈夫か?何なら俺が用心棒してやるぜ?
有り難う御座います白夜さん。

でも大丈夫です!今は戦も休戦中だし、そんなに遠くもありませんので。

そうか··、それじゃあ気を付けてな
はい!



今日は、私の母上が亡くなってから

満12年目の命日だ···。


私がまだ幼い頃に母上は病気で亡くなった


···当時、私はまだ8歳だったけど、その日初めて父上の泣いている姿を見て


あぁ··

母上はもう2度と戻っては来ないんだろう

と、認識したのを覚えている



13回忌かぁ···、早いものね

···お婆々様はお元気かしら

















        -PM4時15分-

         《竹崎家》
··ごめんくださーい
お婆々さま~···
····おや?

あらあらあら、氷月じゃないの!

お婆々様!!
よく来てくれたわねぇ

一人で来たのかい?

はい···。今日父は休戦中の戦の事で呼び出されており、私だけでお伺い致しました
そう···、貴方のお父上も大変なお立場であることは理解していますから、気にしなくて良いのよ
はい···

申し訳ありません

さあさ、そんな所に立っていないで、お上がりなさい。お夕飯くらいは食べて行くでしょう?
はい!

では、先にお位牌に読経して参りますね!

有り難う氷月。

椿も喜んでいる事でしょう






















        -PM10時25分-

ホーホー ホーホー











大変っっ、すっかり遅くなってしまったわ!帰ったらやる事が山積みね!
···でもお婆々様、お元気そうで何よりだったわ














         《比企家》
ふぅ···、ようやく着いた
············
·····あれ?
···なんだろう

何かが変だわ··

···········

(灯りが···、見えない···)

(誰も居ないのかしら···?)














ガラ――···     シーン··
············

(やっぱりおかしい··、こんな時間に誰一人居ないなんてことは···)

(父上····)







ガタンッッ









っっ!!!!!
(誰か居る···!)



こんなに人の気配がしない比企家なんて

初めてだった···


自分がこれまで育ってきた家が、これ程に恐ろしく感じる事があろうとは···


···でも、例え何かあったとしても、ここに住む人達は凄腕の剣客ばかりだ



そもそも何かが起こる事自体あり得ない··、返り討ちにされるのが関の山だわ




さっきの物音···、きっと父上がいるんだわ!···だって父上が殺られるはずがないもの!



そう思った瞬間、私は今すぐに父上の元へと行かずにはいられなかった


普段、皆が集まっている部屋へと急ぎ

扉を開けたその時だった――――




ガラッッッ
っっっ!!!!!!!
·····な、な··にっ··これ···っ



···いつも皆が楽しそうに集まり、明るかったその部屋は、もはや見る影もない



それはまるで地獄絵図そのもので···


現実とは思えない有り様に私はそれを受け入れる事が出来ず、ただただ眺めているしかなかった···










ギシ···ッ   ギッ

ズル――··· ズルズル··




っっ!!!!?
だっ、誰?!?!



その時、何かを引きずる音と共に何かがゆっくりとこちらへ向かって来ていた








それは····






ユラ―··ッ









!!!!!!!!!!!




人とは到底かけ離れた姿の――――


夜叉丸だった····






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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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