第171話「あの日の廃炉とイカタル*ちゃん③ーイカタル*ちゃんの秘密ー」

文字数 3,699文字






        《高架下前―公園》

···イカタル*さん、イカタル*さんもご存知のようにワタシの本当の姿は鬼ッス――――――
····は、はい
先ほど晒した姿―――――、怖かったっスか?
っっ!!
···········

いいえ···、怖いだなんて――――むしろ、素敵でした··

·····え゛っ?!
···とても強くて··男らしくて――――髪型も少し違かったのでキュンッてしましたし、何よりも瞳がとても美し······
···········っ!!!!
ハッ
すっ、すみません····っっ!!

私なに言って――――

いっ、いえっ!!!

すんっごい嬉しいッス!!!!

っ!!!
········
····本当にドキドキしました
····でも、今の姿もとても素敵です
廃炉さんなら···

どんな姿でも好きですから

っっっ!!!!
こ····、このままではワタシがイカタル*さんにメロメロすぎで話が進まない――ッス···
っ!!!
····スミマセン
··········
····貴方ほどの可愛らしい女性に、その様に想ってもらえる喜びは一際なのデスが―――――
···········
···ワタシとイカタル*さんでは····きっと··お互いが幸せになるのは難しいのでは··と思っています―――――
···········っ!?
····何よりも···、ワタシなんかでは貴方を幸せにする事が出来ません···
····え、  え··?
なんで····、そんな事を言うんですか――――?
さっき、仰って下さった言葉は···う、ウソなんですか···?
いいえ!

嘘ではありません!

だったらどうして――――――



今にも泣き出しそうなイカタル*ちゃんを、廃炉は心臓が締め付けられるような思いで見つめていた―――――



·············
イカタル*さん····、ワタシは鬼です··

鬼には寿命がありません···

っ!!!
寿命が無いと言う事は···、体が老いることもありません―――――
··········
それが···どういう意味か分かりますか?
··········
·····私が人間である以上は私だけが老いて行き、私だけが死ぬ――――
···そう言う意味ですよね
···········
·····その通りです
···········

だから何ですか?

···········
え?!
私が老いて行く姿を見るのがそんなに苦痛ですか?
えっ?!いやっ!!!

そう言う意味では―――――――

今の姿だけしか見てくださらないのなら、そんなものは本当の愛ではありませんよ!!
っっ!!!!!
い、イカタル*さん···、貴方という人は――――――
···私は、これから先もずっと廃炉さんに惚れて恋焦がれながら生きていくんだと思います
!!!!!
·············
――――――なんて
そんな事を私が言うのは···、とてもおこがましいですね――――
············
·····え?
····ごめんなさい···廃炉さん
·····??

ど、どうしたんですか??

····何を謝る事が―――――
·········
····私なんて、廃炉さんが思って下さっているような人間なんかじゃ無いんです··
··········
·····廃炉さんが鬼であることを、私はずっと前から知っていたのですから
(廃炉さんは覚えていないかもしれないけれど····)
·········え?
·········
·····私がこれからお話する事で、廃炉さんが私を嫌いになる可能性もあるかもしれません··
····もし、そうだったとしても···私が今も隠している全ての事実を聞いてくださいますか?
···········っ?!
イカタル*さん····、貴方は一体――――――
·············
私が···廃炉さんに出会ったのはもうずっと前なんです
·····え?!
····あの日、私は海でダイビングをしていました―――――
ダッ、ダイビング?!









       ―今から15年前―

          《並川町―蒼玉海岸》

ふ〜·····
うん!今日もソウギョク海岸の皆は美しく元気に泳いでいたわ!
···私には、この青く美しい海を守る義務がある――――
生態系が崩れない様に今後も監視して行かないと···



――――私の実家は並川町の蒼玉海岸の奥にある


あの頃は、美しい海を守る為にとにかく海と陸を行き来していた



そう····、あの日も――――



カルラ様―――――

コチラです

っ!?
あら···

誰か海水浴にでも来たのかしら?

····と、言っても··もう夕方なのよねぇ、今から泳ぐのはちょっと危険かもしれないわ··



その時、海岸に来ていたのは―――――



カルラ様···、この近辺で確認致しました
ああ···

確かに感じるぞ――――――

っ!!!
····え?



そこで見かけた人達――――


その姿はどう見ても人間とは呼び難い風貌をしている···


····でも

二人とも背が高くて、その堂々とした様はとても格好良かった


もしかしたら、人間には無い何かを持っているのかもしれない―――

私はそんな魅力的な二人から、いつまでも目を離す事が出来ずにいた



そ、それにしても···

額に生えているあれは、「ツノ」だよね···?

···もしかして、鬼···族の人達?
と、特に―――――

あのヒト···

···········
カッコイイ〜っ!!!
マスクの下のお顔が気になり過ぎる!
····ん?
····どうしたタマネギ?
い、いえ···

少し視線を感じたような気がしただけです

····ッハ



その時、黒いマスクをした素敵な彼がコチラを振り向いた―――――


私は咄嗟に岩の影に身を隠し、見つからないように息を潜めた···んだけど、別に隠れる必要ってなかったかも?



イヤイヤイヤ!こんな私なんかがガン見してるのバレたら超恥ずかしいじゃない!!
·········?
····よし、次は集落の方に行くぞ
はい···!



····私が初めて廃炉さんに出会ったのはこの時で――――その日から、一目惚れをしてしまった彼を想い続ける日々が始まった


廃炉さんは私には気付いていなかったけれど、その時はそれでも良いって思っていた


だって、恥ずかしいし···



だけど、そんな恥ずかしさなんて束の間で···

この気持ちが勝手に大きく膨れ上がる頃には恥ずかしさよりも会いたい気持ちのほうが強くなっていく···



――のだけれど、それはまだ少し先の話










       《並川町―蒼玉海岸》

ザザザ―――――――
····ここの海は本当に美しい
···しかしココは海水浴場だよな、人の手が届く場所にある海が何故こんなにも美しいのか····謎だ―――



その日、廃炉は一人でこの集落を訪れていた····

先日送り込んだ鬼女を監視する為に―――――



と、言いつつ海に来ていたり



···もっと岩場の方にも行ってみるか



廃炉はここの海があまりにも美しすぎて魅了されていた


自然豊かで静かなこの場所は、廃炉にとってもお気に入りの場所となっていたのだ――――



おお、座るのに丁度良さそうな岩があるな――――



廃炉が海を眺めるのに丁度良い岩を見つけて腰を掛けようとしたその時だった――――



ザバァ――――――ッ
っっ!!!?



廃炉が見つめる目の前の海面から何者かが顔を出したのだ――――



っふぅ――――――ッ
―――今日も皆元気で何よりでした!
っっ!!!!!

に、人魚?!

····え?
············
············
··ぅわゎぁ·····っ

(あ、あのヒトだわ!!!)

あ、貴方は―――――――
ご、ごめんなさいーっ!!
へっ?!



本日の海のパトロール中、私はいつもと違う場所から陸へ上がろうと思っていた――――

何故なら、私の大好きな彼がたまに砂浜に来ていたからである··

鉢合わせしてしまうのが恥ずかしくて避けていたのだ


····私なんて、いつも潜っているものだから海水臭いだろうしきっと怪しまれるもの――――



そう思って別の場所から顔を出したのがそもそもの間違いだったみたい····


まさか目の前に彼が居るとは思いもよらなかった




私はあまりの恥ずかしさに、またすぐに海の中に潜り、その日は陸に上がるのを諦めた―――――



な、なんと美しい人魚姫か····



廃炉は今しがた出会った女性の美しさが尋常では無かったため(どストライク)完全に人魚だと勘違いしていた


だが拝見したのがほんの一瞬だったため、次にイカタル*ちゃんに出会う時には顔を覚えていなかったのである···



っって言うか!!!

生きてる人魚!!!??めっちゃくちゃレアッス!!!!

·····あんな美しい女性を捉えて喰らってまで不老不死になろうなんて···人間はなんて残酷な――――
··········
今日見た事はカルラ様には内緒にしておこう····








        《蒼玉海岸―海中》

····こ、言葉を交わしてしまったわ
恥ずかしいけど····嬉しかったな



そうして、私の廃炉さんへの想いはその日からどんどん膨れ上がって行き、私は完全に陸に上がることを決意する



そして、再び廃炉さんに出逢う為に得意な料理でお店を出し、廃炉さん行き付けの競馬場へ移動販売をしに行く事を目標として、新たな道を進むことを選択した―――――



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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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