第171話「あの日の廃炉とイカタル*ちゃん③ーイカタル*ちゃんの秘密ー」
文字数 3,699文字
《高架下前―公園》
今にも泣き出しそうなイカタル*ちゃんを、廃炉は心臓が締め付けられるような思いで見つめていた―――――
―今から15年前―
《並川町―蒼玉海岸》
――――私の実家は並川町の蒼玉海岸の奥にある
あの頃は、美しい海を守る為にとにかく海と陸を行き来していた
そう····、あの日も――――
コチラです
その時、海岸に来ていたのは―――――
そこで見かけた人達――――
その姿はどう見ても人間とは呼び難い風貌をしている···
····でも
二人とも背が高くて、その堂々とした様はとても格好良かった
もしかしたら、人間には無い何かを持っているのかもしれない―――
私はそんな魅力的な二人から、いつまでも目を離す事が出来ずにいた
その時、黒いマスクをした素敵な彼がコチラを振り向いた―――――
私は咄嗟に岩の影に身を隠し、見つからないように息を潜めた···んだけど、別に隠れる必要ってなかったかも?
····私が初めて廃炉さんに出会ったのはこの時で――――その日から、一目惚れをしてしまった彼を想い続ける日々が始まった
廃炉さんは私には気付いていなかったけれど、その時はそれでも良いって思っていた
だって、恥ずかしいし···
だけど、そんな恥ずかしさなんて束の間で···
この気持ちが勝手に大きく膨れ上がる頃には恥ずかしさよりも会いたい気持ちのほうが強くなっていく···
――のだけれど、それはまだ少し先の話
《並川町―蒼玉海岸》
その日、廃炉は一人でこの集落を訪れていた····
先日送り込んだ鬼女を監視する為に―――――
と、言いつつ海に来ていたり
廃炉はここの海があまりにも美しすぎて魅了されていた
自然豊かで静かなこの場所は、廃炉にとってもお気に入りの場所となっていたのだ――――
廃炉が海を眺めるのに丁度良い岩を見つけて腰を掛けようとしたその時だった――――
廃炉が見つめる目の前の海面から何者かが顔を出したのだ――――
本日の海のパトロール中、私はいつもと違う場所から陸へ上がろうと思っていた――――
何故なら、私の大好きな彼がたまに砂浜に来ていたからである··
鉢合わせしてしまうのが恥ずかしくて避けていたのだ
····私なんて、いつも潜っているものだから海水臭いだろうしきっと怪しまれるもの――――
そう思って別の場所から顔を出したのがそもそもの間違いだったみたい····
まさか目の前に彼が居るとは思いもよらなかった
私はあまりの恥ずかしさに、またすぐに海の中に潜り、その日は陸に上がるのを諦めた―――――
廃炉は今しがた出会った女性の美しさが尋常では無かったため(どストライク)完全に人魚だと勘違いしていた
だが拝見したのがほんの一瞬だったため、次にイカタル*ちゃんに出会う時には顔を覚えていなかったのである···
《蒼玉海岸―海中》
そうして、私の廃炉さんへの想いはその日からどんどん膨れ上がって行き、私は完全に陸に上がることを決意する
そして、再び廃炉さんに出逢う為に得意な料理でお店を出し、廃炉さん行き付けの競馬場へ移動販売をしに行く事を目標として、新たな道を進むことを選択した―――――