第64話「嘗試」
文字数 1,378文字
―サワサワ――·· サワ――··
その時、咲き誇る桜の木の下に佇んでいたその人は
優しい風に白銀の髪をなびかせながら此方を振り向いた···
普段から男性に対して何の感情も湧かない私は――――
何故か彼を見た瞬間、一瞬だけ微かに心臓が大きく動いたのを確かに感じた
カルラ様···、この方の物静かで低い声色は
何故こんなにも私に安心感を与えてくれるのだろう
こんな風に誰かの声に聞き入る事も、安心感を感じることも始めてだった
その時、咲き誇る桜が一気に散る程の風が吹き抜けた―――
この人達は鬼···なの?
そして鬼の主食は人の肉··?
··私は実際に鬼がこの世に存在していることなど知るよしもないのだ
突然の事に頭が追い付かない···
··だが、これだけは言える
私はきっと「また」騙されたのだ
···騙されてこんな所まで連れて来られた。
本当に料理されるのは···私?
な、何が面白かったの?
今の私の最悪な人生話を聞いて笑う所なんてあったかしら?
鬼の思考が全く理解出来ないわ····