第218話「黒曜石」

文字数 3,239文字





            ―PM8時50分―


        《古民家cafe-ゑ來屡(エクリュ)》

♪〜♬♪〜♪♪♪〜

廃炉さん―――――

····良かったですね!
·····え?

何がッスか?

ヨアケくんの事ですよ!
·······?



イカタル*さんが、本日最後のお客様の食器をせっせと片しつつ、ニヤニヤしながら話しかけて来た



ヨアケくんッスか?

···これと言って何か良かった事も無かったと思うッスが――――

あら、そうなんですか?
あんなに懐かれてて、顔が緩みまくってたようにお見受けしましたけど
っっ?!
そ、そんな事はないと思うッス!



····イカタル*さんは自分の事をあまり見ていないようでいて実はめちゃくちゃ見ているのかもしれない――――



今日の昼間、突然の嵐のようにヨアケくんが来店し、とんでもない勢いでヨアケくんのペースに乗せられてしまった


今すぐ体術を習いたいと言われた時は流石に忙しい時間帯のお店をイカタル*さん一人に任せてしまうのは忍びないと思ったのだが、わざわざ遠い所から一人で来たのだからとイカタル*さんに促されてしまい、結果的に一人でお店を任せてしまったのである····



····それよりも、今日は本当に申し訳なかったッス···
っ?
何がですか?
ランチタイムの事ッス!!

イカタル*さんをお一人にしてしまった事を今更に後悔してるッス····

·····ポッ
っ?!
ふふ

···そんな事を気にしていたんですか?いつまで経っても優しいんですね廃炉さんは――――

っっ!!!!?
·····そ
···それでも結局、お一人にしてしまった事には変わりないッスから····
·····今まで

私はずっと一人で屋台を切り盛りしていたんですよ?

あの程度の人数なんて大した事はありませんから!
······ッポ
····それに、最悪の場合私には奥の手があるんです!その様な心配は無用ですよ!
お、奥の手····?!
·····恥ずかしくてまだ廃炉さんにはお見せした事はありませんが···
わっ、私達の間にもう何も恥ずかしがる事など微塵もない筈ッス!!



····愛するイカタル*さんに隠し事をされている様な気持ちに勝手になってしまい、少しだけ強い口調になってしまった――――――



っ!!!
····あっ!

も、申し訳ないッス····、怒ったわけでは―――――――

え···っと、まぁ···はぃ···

そ、そうですね····

···········
····イ、イカタル*さん?
····ごめんなさい廃炉さん
えっ?!

あ、あああ謝ることなど何も―――――――――っっ

わ、私はまだちょっと····その··

今だに慣れないと言うかその···

·········?
は、恥ずかしくて堪りません!
··············
·····一体何の話をしてるッスか?
····?

そんなの一つしか無いじゃないですか

夜は完全に鬼化しちゃう廃炉さんの――――――――
ちょっっっっ!!

少し黙っていて欲しいッス!!読者の皆さんに聞かせるような話では無いッス!!!!

っ!!
···········
真っ赤↑
ズキュンッッ♡
······いや、あの―――――



····結局、奥の手って何だったのよイカタル*さん―――――――














        

             ―数日後―


        《瑞禪寺(ずいぜんじ)―櫻井家》

さて――――――

こんなもんかなぁ

玄宥様―――――――
っ!
ああ、琉唏(るき)····
····探しましたよ

何をしているのですか?

今日は俺の大切な客人が、遠路はるばる足を運んでくれる予定でな―――
あ、もしかして桐生家の方ですか?
そうだよ
俺は桐生家の方と会うのは始めてなので楽しみです!
····そうか



····昔から確執のあった櫻井家と桐生家は、カイトといろはのお陰で良好な関係を保ち続けている――――


実は近年、櫻井家の霊力が弱まりつつある事もあり、二ツ神の件については本当の意味で二人には救われた


まさかカイトが闇淤加美神(クラオカミ)まで使役しているとは到底想像もしていなかっただけに、彼の底しれない能力には驚かされてばかりである


そして今日は、そんなカイトといろはの長男である夜朱(ヨアケ)が櫻井家を訪れる予定になっている―――――

二人の息子であるヨアケは全くもって夜叉丸にそっくりな悪ガキだ


幼い頃からヤンチャで口は減らないが、底しれない能力を秘めている所はサスガはカイトと夜叉丸の子孫だと感じざるを得ない



···俺も久々に会うから楽しみだな
····あ、いたいた

ゲンユー

っっ!!!
ホシ猫!!!
やぁ、久しいね

元気にしてた?

ああ!

俺は仏様だからな!常に元気だ!

····しかし、何故ホシ猫が―――――――
うーッス
ゲンユー様、お久しぶりッスー
おお!ヨアケ!

待ってたぞ!デカくなったらますます夜叉丸にそっくりになったな!

···それ、廃炉さんにも同じ事を言われたッスね〜
···そして喋り方はまるで廃炉だな
まぁ、俺は廃炉さんをリスペクトしてるッスからね!
なるほど、確かに廃炉は鬼族の中でもカルラに次ぐ強さを持っているな
そうッス!!

俺は廃炉さんの様になりたいッス!

目標を得ることは良いことだ
おっ、俺は!!

···俺は絶対に玄宥様のようになりたいです!!



ヨアケとの会話に突如として参戦して来たのは琉唏(るき)だった



······?
·····アンタは仏様が好きなんだな
ほっ、仏様だからじゃない!

玄宥様は陰陽師の中でも位の高い陰陽頭(おんようのかみ)だ!

鬼族との因縁すらも寛容な御心で受け止める事が出来る素晴らしい方なんだぞ!!
····ふーん
その全く興味の無い感じ、割と悲しくなっちゃうなぁヨアケ
えっ!

べ、別に興味が無い訳じゃないッス!

·····俺は、神仏様よりも百鬼達の方が好きなだけだから―――――
ほう···

それは何故か聞いても良いか?

そんなの!

俺の産まれた環境がそうだっただけッス!櫻井家だって似たようなもんじゃん!

まぁ、確かにそうだな―――――

ヨーコに付喪神に式神に十二天将は全て百鬼だからなぁ

そうッス!

俺の傍にはいつも父さんと母さんが居て、父さんの仲間には「縊鬼(イキ)」や「三屍蠱(さんしこ)」、「闇淤加美神」がいる――――――

···········

ホシ猫も居るけども?

勿論!!

ホシ猫も黒鉄も大好きっす!

ふふん
俺の周りにいる百鬼達は俺を裏切らない―――――――
なるほど―――――

理解したよ、ヨアケ

でもな、俺もお前達を裏切らないし、いつも見守っているよ
····分かってるッス!
と、いう事でだな―――――
ほら、コレをやる
っ!!!
これは―――――?
·····これは黒曜石を勾玉に加工したものだよ
黒曜石?
黒曜石は火山岩の一種だが、実のところ霊力を貯めておくには最高な代物だ
そして、この石の中にはお前の母であるいろはが膨大な量の生命を吹き込んでいる―――――
·····母さんが?

生命ってなに?

···········
····ヨアケ、お前はまだ知らないとは思うが、いろはは不老不死だ
············
なにそれ

ツッコミどころもないッス

······では、お前は「三屍蠱」が何者なのか理解していないと言う事になるな―――――
っ!!!!!!
····そ、そんな、事ってある?
············
だって母さん、普通の人間でしょ?

父さんが桐生家の中でも霊力が半端ないのは知ってるけど―――――

············
ヨアケ、ならばお前は普通の人間が、カルラの能力「復元」を簡単に習得出来ると思っているという事か?
っ!!!!
····廃炉さんが言おうとしていた事ってそこに繋がるわけ···?
····ヨアケ、本来お前は賢い子だ
·····本来?
難しい事や、ややこしい事を面倒だと考えることを止めてはいけない
っ!!
桐生家の···、カイトといろはの子なら尚更だ―――――
···········
····俺の言っている事――――

分かるな?

········

うっす

····うん、いい子だ

では、黒曜石についてもう少し説明しようか――――――

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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